アメリカでは、個人事業、賃貸・投資物件などさまざまな形態で収入を得ている人が多くいます。これらの収入は関連費用を差し引くと赤字になることも。その赤字の税務上の扱い方を解説します。
通常の損失
個人事業、Sコーポレーション、有限責任会社(Limited Liability Company)などで発生した利益は、個人の確定申告上で税務処理を行います。損失が出た場合、個人のその他の所得や利益と相殺することが可能です。なお、損失額は前年に繰り戻したり翌年に持ち越して、それぞれの年度の利益に対して相殺することも可能です。
キャピタルロス
株式、証券、不動産投資物件等を購入価格よりも高い値段で売却すると、その差額はキャピタルゲイン(Capital Gain)と呼ばれる利益となります。1年未満の保有期間であれば、短期と分類され通常税率となり、1年以上の保有期間であれば、長期と分類され通常税率よりも低い税率が適用されます。
購入価格よりも低い値段で売却すると、キャピタルロス(Capital Loss)と呼ばれる損失が出ます。ゲインと同様、売却までの保有期間が1年未満の場合は短期、それ以上の場合は長期と分類されます。これらの損失は、下記ルールにのっとり利益と相殺可能です。
①長期/短期のキャピタルゲイン/ロスをそれぞれ相殺
②①の後に損失が残ればその他のキャピタルゲインと相殺
③②の後に損失が残れば最大3000ドルまで他の収入と相殺
④③の後に損失が残れば翌年以降に持ち越し
例えば、2015年度に短期キャピタルゲインが4000ドル、長期キャピタルゲインが3000ドル、短期キャピタルロスが1000ドル、長期キャピタルロスが1万ドルあったとします。その場合、短期キャピタルゲインは3000ドル(4000ドル-1000ドル)、長期キャピタルロスは7000ドル(3000ドル-1万ドル)、合計のキャピタルロスは4000ドル(3000ドル-7000ドル)となります。このうち、3000ドルは2015年度の他の収入と相殺可能で、余剰の1000ドルは翌年以降に持ち越しとなります。
受動的活動からの損失
受動的活動(Passive Activities)とは、実質的に参加していない事業や不動産専門家以外の賃貸事業を指します。この活動から発生した利益は、通常税率で課税されます。一方、受動的活動の損失は他の所得や利益と相殺できません。その代わり、受動的活動からの利益と相殺でき、その余剰分は翌年に持ち越すことが可能です。
賃貸物件の場合
しかし、賃貸物件に対しては特別ルールが設けられています。物件の管理や運営方針を決めるような形で関わっていると能動的とみなされ、1年で2万5000ドルを上限に、他の所得や利益との相殺が可能です。この上限は、総所得から決められた所得控除を引いた、調整後総所得(Adjusted Gross Income)が10万ドルを超えてから徐々に削減され、15万ドルになった時点でゼロになります。言い換えると、調整後総所得が10万ドルを2ドル超えるごとに、2万5000ドルの上限が1ドルずつ減少していくということです。そして、余剰分は翌年以降に持ち越すことが可能です。
債権や株式からの利益は、一見すると受動的ですが、この定義には含まれないので相殺できません。
(2015年9月1日号掲載)
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。