オバマケアと確定申告
2014年に施行開始され、トランプ大統領が就任直後に改定をほのめかし、その後、考えを改めたとの報道があったAffordable Care Act(通称オバマケア)。確定申告にも関係があるので、どのようなものなのか把握しておきましょう。
オバマケアの対象者は「アメリカの税法上の居住者」です。税法上の居住者とはアメリカ市民とグリーンカード所有者、就労ビザを所有していて一定の条件を満たした人を指します。学生ビザやインターンシップビザで渡米している人は非居住者となるので対象外です。
未加入のペナルティー
対象者は医療保険に入る義務があり、未加入の場合は確定申告時にペナルティー(Shared Responsibility Payment)が発生します。自分自身で保険料を支払っていなくても、会社や政府を通して加入していれば問題ありません。また、駐在員などが、日本で海外旅行者保険に加入し、その保険がアメリカの健康保険に相当するサービスを提供していると証明できれば、ペナルティーを払う必要はありません。
2017年のペナルティー額は、大人一人につき695ドル、17歳以下の子どもは347.5ドルで、一世帯最大2085ドル、または調整後総所得(Adjusted Gross Incomeに海外所得などの調整を入れたもの)の2.5%のどちらか大きい方で、年々、ペナルティー額は上がっていく予定です。
確定申告の準備
オバマケアによって、マーケットプレイスと呼ばれる連邦と州から認められた保険の斡旋機関が設立されました。この機関を通して健康保険に加入した場合は「Form1095-A」が発行されます。会社のグループプランなどで加入した人は「Form1095-C」、その他の健康保険は「Form1095-B」が発行されます。このフォームによって保険加入期間と支払い額が証明でき、確定申告書を作成する際に使用します。
保険料の税額控除(Premium Tax Credit)
以下5点の全てに当てはまる場合は税額控除を取れます。
① 所定の期日(17年は1月31日)までにマーケットプレイスで健康保険に加入した。
② 会社や連邦・州の健康保険に加入していない。
③ 調整後総所得が一定の金額より低い
④ 夫婦個別申告ではない。
⑤ 誰かの扶養者ではない。
控除の受け取り方法は以下の2通りです。
◎Get It Now
確定申告前に控除を受け取る方法です。確定申告で受け取る予定の控除額の一部または全額を、保険の支払額と相殺させます。これにより、支払う保険額を低く抑えられます。「Get ItNow」を選択した場合、前年度の確定申告書を参照して控除額を決めるので、当年度の金額とズレが生じることがあります。そのズレは確定申告で還付または納付として調整されます。
◎Get It Later
確定申告後に還付金を受け取る方法です。「Form 8962」を記入する必要があるのでひと手間かかりますが、還付金を保険以外で使いたい人にお勧めです。常識的に考えれば、年度の途中で準備期間もなく施行中のオバマケアが改定または失効ということはまずないでしょう。ですから、今後、仮にオバマケアが改定や失効となっても、最速で2018年1月1日からになると思われます。そのため、2018年に行う2017年度の確定申告では今回説明した通りの運用となるはずです。
(2017年5月1日号掲載)
医療保険未加入の罰金
2014年に施行された医療保険制度改革法は、誰もが適切な医療を受けられることを目的に、国民の医療保険加入を義務付けた制度です。加入を怠るとペナルティーが発生するかもしれません。
ACAの内容と罰金
医療保険制度改革法(AffordableCare Act、以下ACA)、通称オバマケアは全アメリカ国民が対象で「アメリカにおける税法上の居住者」という意味で、日本人駐在者も対象です。しかし、留学生や税務申告が必要でない人は、適用除外になる場合があります。
ACAには、
① 高齢者・障がい者向けのMedicare
② 低所得者向けのMedicaid
③ 雇用主が提供する保険
④ 連邦や州政府が設けたマーケットプレイスを通じて購入する保険
があり、これらに加入しなかった場合、確定申告時に罰金が科せられます。
2015年度は世帯の課税所得の2%、または一人当たり325ドル(18歳未満の子どもは162.5ドル)のいずれか高い方が罰金として科されました。この額は毎年上昇しており、16年度は世帯の課税所得の2.5%、または一人当たり695ドル(18歳未満の子どもは347.5ドル)のいずれか高い方、最大で2085ドルになります。
確定申告作成時に自己申告し、還付金が発生する場合はそこから天引き、支払いが発生していた場合は税金と共に支払います。自己申告をしなかった場合、IRSから通知が届き、電子送金、あるいは小切手で支払います。
Medicareの種類
Medicareは4つのパートに分かれていて、それぞれ内容が異なります。
・パートA:入院費用をカバー
・パートB:外来医療費をカバー
・パートC:上記A、Bを含めた医療保険を民間保険会社が提供
・パートD:処方箋をカバー。加入には民間医療保険会社を通す必要あり
このうちパートAは、ソーシャルセキュリティー受給資格者、もしくは政府機関で働いたことがあり、Medicare Taxを払った人は無料で加入できます。B~Dは有料ですが、このうちパートCに加入するにはA、Bの両方に加入しなければなりません。
またAは、入院期間が150日を超えると全額自己負担となります。Bは本人もしくは配偶者が勤務先のグループ医療保険に加入していれば通常は加入しなくてもよいことになっています。
Medicareの罰金
Medicareの加入資格があるのに加入していないと、後日加入した時に、罰金が科せられます。
パートA:未加入期間の2倍の期間、毎月の保険料に10%が罰金として科されます。例えば、加入資格発生時から3年遅れて加入した場合、罰金として6年間、保険料が10%多く科せられるのです(所得に応じて免除されることがあります)。
パートB:未加入年数に10%を乗じた額が毎月の保険料に罰金として加算されます。これはパートBに加入し続ける限り続き、例えば加入が3年遅れると、保険料は30%加算され続けます。
パートD:加入した年度の「全国平均保険料」の1%に未加入月数を乗じた金額が毎月の保険料に罰金として加算され、これも加入をする限り続きます。
罰金の免除
ACAの法律の下、医療保険への未加入期間が2カ月までであれば、罰金を免除されるShort Coverage Gap Exemptionというルールが設けられています。また、所得が連邦貧困レベルの138%を下回っている場合も免除されます。
(2016年4月16日号掲載)
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。