教育費負担を軽減する控除とは │ 中古エコカーの控除 │ 夫婦別申告のメリットデメリット │ アメリカでの相続のポイント │
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教育費負担を軽減する控除とは
子どもの教育費について、どのような控除や制度がありますか?
(CA版2025年2月号掲載)
教育税額控除の種類
高等教育を受ける学生やその家族のために、教育税額控除があります。教育税額控除は、大学や専門学校などの費用の一部を税金から差し引ける制度です。主に次の二つがあります。
①アメリカン・オポチュニティ税額控除(AOTC)
対象者:大学や専門学校の最初の4年間に在籍する学生。
控除額:最大2500ドル。収入によっては、さらに最大1000ドルが還付金として戻ることもあります。
適用される費用:授業料、教材費、必要な学用品。
②生涯学習税額控除(LLC)
対象者:資格取得やスキルアップを目指す学生(学位が不要な場合も可)。
控除額:最大2000ドル。
適用される費用:授業料や学習に必要な教材費。
この控除を受けるには対象者が適格教育機関(連邦学生援助プログラムに登録している学校や大学など)に在籍している必要があります。収入が一定額を超えると控除額が減る場合があり、AOTCとLLCの両方を同時に申請することはできません。
控除の対象費用
対象となる費用は以下の通りです。
①大学や専門学校、その他適格教育機関で支払った授業料。
②教科書や教材(学校から指定されたもの)。
③パソコンやソフトウェア(学校が要件として指定している場合)。
これらの費用を適格教育機関へ対して支払っていることが条件で、寮費や食費、交通費などは対象外です。
教育税額控除の手続き
AOTCとLLCの申請には、学校から送られてくる「Form 1098-T」(授業料報告書)が必要です。「Form 1098-T」は、教育機関が学生とIRS(内国歳入庁)に提供する税務関連の書類で、適格授業料および関連費用の支払い金額や奨学金や助成金の金額が記載されています。申請には、学生本人が「Form 1098-T」を受け取る必要があります。ただし、非居住外国人や、授業料が全額免除または奨学金で授業料全額をカバーされている学生などは例外で、発行されない人もいます。
「Form 1098-T」を受け取らないと、原則、控除の申請はできません。ただし、以下のような例外もあります。
①適格教育機関で支払った費用の記録(領収書や支払い証明書)があれば、控除の申請が可能な場合があります。
②非居住外国人や奨学金で全額カバーされた学生でも、必要書類がそろっていれば申請できる可能性があります。なお、発行対象外の学生でも、学校に直接依頼すれば「Form 1098-T」を発行してもらえる場合があります。
教育費の負担を軽減するため、教育税額控除をぜひご活用ください。
中古エコカーの控除
中古車でも、クリーン車両クレジットを受け取ることができますか?
(CA版2025年2月号掲載)
中古車でもクリーン車両クレジットを受け取れます。要件は、①購入者が個人である、②再販目的の購入ではない、③購入者は扶養家族として他者の税申告に含まれていない(つまり申告者本人か配偶者)、④過去3年以内に同クレジットを受けていないことです。また、修正調整総所得(AGI)が夫婦合算申告で15万ドル、世帯主で11万2500ドル、その他の申告者で7万5000ドルを超えない場合に限られます(購入年または前年のいずれかで条件を満たせば適用)。
対象車両は、販売価格が2万5000ドル以下、購入年の2年以上前のモデル(例:2024年に購入した場合は22年以前のモデル)、電気自動車(EV/バッテリー容量7kWh以上)または燃料電池車(FCV)であること、総重量が1万4000ポンド未満であり、主にアメリカ国内で使用されることが求められます。
また、車はディーラーで購入する必要があり、ディーラーは購入者とIRSに車両情報の報告義務があります。
夫婦別申告のメリットデメリット
確定申告を夫婦別で申告するメリットとデメリットを教えてください。
(CA版2025年1月号掲載)
通常、タックスリターン(確定申告)は夫婦合算で申告した方が税金面で有利ですが、状況によっては別々に申告する方が良い場合もあります。
夫婦別申告のメリット
①責任分担ができる
配偶者が収入を少なく申告したり、控除を多く申請して後で問題になる可能性がある場合、別々に申告するともう一方が責任を負わずに済みます。
②配偶者の借金の返済を避けられる
配偶者に結婚前の税金滞納や養育費、学生ローンの未払いがあると、夫婦合算申告ではその返済にあなたの還付金が使われる可能性があります。別々に申告すれば回避できます。
③高額所得者の州税を回避
カリフォルニア州やニューヨーク州などでは、高所得者に追加の州税が課されます。別々に申告すれば、収入が高い配偶者だけが対象になります。 他にも、例えば妻がアメリカの年金収入のみで、夫に給与所得がある場合、夫婦別々に申告をすることで節税につながった事例があります。
夫婦別申告のデメリット
夫婦別々の申告では、以下の税制優遇は受けられません。
勤労所得税控除(Earned incometax credit)や教育税額控除などの控除。学資ローン利子控除や社会保障給付の一部控除。控除の方法は、一方が項目別控除を選ぶと、配偶者も同じく項目別控除になります。また、賃貸不動産の損失控除や高齢者・障害者向け控除の適用も不可です。
どちらが有利かは、合算申告と別々の申告で比較することが大切です。
アメリカでの相続のポイント
子どもに資産を渡す場合、どんな点に気をつければいいでしょうか?
(CA版2025年1月号掲載)
アメリカの贈与税と遺産税は、生涯除外額や年間贈与の非課税枠を活用し、適切な計画を立てておくことが重要です。「Unified Exclusion(生涯除外額)」を利用すれば、一定額までの贈与や相続が非課税となり、資産の移転計画がスムーズです。Unified Exclusionはインフレに応じた調整があり、公平性が保たれています。
2025年の注意点
2025年の生涯除外額は、1人当たり1399万ドルまで、夫婦では最大2798万ドルで、この額まで資産を贈与税や遺産税なしで移転できます。さらに、 贈与先1人当たり1万9000ドル(夫婦で3万8000ドル)までは、生涯除外額を消費せずに贈与が可能です。また、贈与として教育費や医療費を直接機関へ支払う場合は非課税です。
相続計画が重要な理由
計画を立てない場合、以下のようなリスクが発生する可能性があります。
①資産が法定分割され、遺族間の争いが生じる。
②遺言執行者が不在の場合、裁判所の介入で手続きが遅れる。
③故人の希望通りの贈り物や寄付が実現しない。
早めに専門家へ相談し、計画を立てることが重要です。現在の除外額を利用した贈与は、将来の税負担軽減につながります。
アメリカを去る場合
将来、アメリカを離れ、市民権や永住権を放棄しても、子どもがアメリカに残るケースでは特別な注意が必要です。例えば、アメリカに残る子どもが将来的に資産を相続する場合、親は税法上の非居住者となるため、適用される税制が異なる可能性があります。また、複数国間での税務リスクを把握しておくことが必要です。
遺産計画やトラストを立てないと、死後、資産は州の法律に基づいて分配されます。つまり、裁判所が資産分配を行い、余分な時間と費用がかかったり、希望通りの贈与や寄付が実現しなかったりする可能性があり、遺族が経済的に困窮することもあります。さらに、遺族間で争いが生じるかもしれません。遺産計画やトラストを立てればリスクを回避し、資産の分配をスムーズに行うことができます。
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。