2005年10月に発効された日米社会保障協定で、日米の年金の加入期間が合算できるようになりました。それにより、米国で受給資格があるのに、年金を受け取れると知らない方もいます。ご自身の年金を今一度確認してください。
日米社会保障協定で年金の問題を調整
従来、日本企業の会社員などが日本から米国へ派遣される場合、日米両国の年金や健康保険に加入が義務付けられ、二重払いを余儀なくされていました。また、そうした駐在員や永住者が、米国に社会保障税を納めても、米国での就労期間が短いために年金の加入期間が所定期間に満たず、年金を受給できない問題も生じていました。 そこで、両国の年金と保険の適用を調整し、二重払いを防ぐため、2005年10月に日米社会保障協定が発効し、二重払いの解消をはかるとともに、米国での就労期間が短く、年金の加入期間が不足している場合も年金が受給できるようになりました。
社会保障は就労国で加入
日米社会保障協定によれば、社会保障は原則として、就労している国のみで加入します。具体的には、米国で就労して収入を得れば、連邦社会保障法(Federal Insurance ContributionAct : FICA)の管轄となり、米国でソーシャルセキュリティー税(Social Security)、メディケア税(Medicare)の各税が給与所得に課せられます。ちなみに、ソーシャルセキュリティー税は従業員、雇用主それぞれが給与の6.2%、メディケア税は同1.45%となります。
駐在期間次第で米国分は免除
ただし、日本の企業から米国への派遣が5年未満の場合、日本の事業主を通じて、管轄の社会保険事務所に「適用証明書」を交付してもらえば、米国の年金、健康保険の加入が免除されます。その「適用証明書」の発行には、以下の要件が必要です。
1. 日本の年金・健康保険制度に加入
2. 日本の事業所との雇用関係が継続(自営業者は、米国で引き続き自営活動を行うこと)
3. 派遣期間が5年以内の見込み(自営業者は、就労期間が 5年以内と見込まれること)
4.米国赴任の直前、原則として6カ月以上継続して日本で雇用され、就労
派遣期間が5年以上なら、米国の年金、医療保険に加入しなければなりませんが、日本の企業を通じて社会保険事務所に、日本の年金保険や健康保険の「資格喪失届」を提出すれば、日本で年金や健康保険の支払いは不要です。派遣の予定が5年未満の予定で「適用証明書」を提出し、日本の年金制度のみに加入していた場合、派遣が5年を経過すると、本来は米国の社会保障への切り替えが必要になります。しかし、プロジェクトが遅れた場合など、業務上の事情や、子どもの就学などで、派遣期間が5年を超えてしまう場合は、期限付きの期間の延長が認められます。本来は米国の社会保障に切り替えが必要だったのに、延長申請の手続きを怠っていれば、源泉徴収義務違反や、支払遅延によるペナルティーが発生する可能性があるため注意が必要です。
通算25年以上で日本分を受給
日米社会保障協定により、米国での年金加入期間が1年半以上で、日米両国での社会保障税の支払いが合計10年以上なら、米国で年金を受給できるようになりました。また日米両国の年金の加入期間が通算25年以上なら、日本の年金を受給できます。米国の年金を受給するなら、Social Security Administrationで申請の手続きが行えます。
(2016年3月16日号掲載)
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。