いざビジネスを始めるとき、どのような事業形態を選択するかはとても重要です。なぜなら、それによって事業の会計年度や、どれだけ節税できるかなどが決まるからです。今回は個人事業と法人の違いを解説します。
個人事業(Sole Proprietorship)
個人事業は最も一般的で簡単に設立できる事業形態です。個人によって運営され、資金を自分自身で用意します。設立コストを低く抑えられ、経営方針を自分自身で決定できるなどの利点からアメリカにあるほとんどの小ビジネスはこの形態に属します。
しかし、債務に関しては個人財産も含めて補償しなければならず、高いリスクもあります。例えば、事業の敷地内で顧客が転倒して訴訟を起こし、100万ドルの支払い命令が下ったとします。法人は会社を閉鎖すればその債務から解放されますが(有限責任)、個人事業は100万ドル全てを自分で負担しなければなりません(無限責任)。
また、年間400ドル以上の利益が出た場合、13.5%の自営業者税(Self-Employed Tax)を払わなければなりません。会社員の場合、SocialSecurityとMedicareがこれに該当し、雇用主が半額負担してくれます。
以下は個人事業における税金面のメリットとデメリットです。
◎メリット
・法人税を支払わなくてよい
・事業と個人間の資産移動の際に税金が発生しない
・事業外の収益を事業の損益と相殺できる
◎デメリット
・債務などに対して投資額以上の責任が発生する(無限責任)
・社会保障税を全て自分で支払わなければならない
・法人は給料を経費として計上できるが、個人事業には給料がない
・決算日は年末で、法人のように自由に決められない
法人(Corporation)
多くの企業はこの事業形態です。株式を売却することで資本金を集められ、しっかりしたビジネスプランと経営手腕があれば比較的資金を集めやすいと言えるでしょう。しかし、株主が法人の所有者と考えられるので、個人事業と比べ、自由な運営は難しくなります。法人は株主の利益を最優先しなければならないことも多いからです。
それに加え、法人と株主は別々に確定申告書を提出しなければなりません。その結果、企業は所得に対し法人税を課され、株主は配当金に対し所得税を課され、二重課税されることになります。
下記は法人における税金面のメリットとデメリットです。
◎メリット
・債務などに対して投資額以上の責任が発生しない(有限責任)
・個人事業より資本金を集めやすい
・社会保障税の支払いを軽減できる可能性がある
◎デメリット
・二重課税される
・株主が会社から受け取る配当金は課税対象である
・営業損失や資産損失が出てもその年に他の利益と相殺できない
法人設立をサポートする団体は多数ありますが、全ての団体が税務に詳しいわけではありません。法人を設立した後に、自分に最も適した法人形態は何なのか?と、私どもに問い合わせをされるお客様もいます。一度法人を設立すると変更は難しく、できることに限りがあるので、法人設立の際はその分野に詳しい会計士や弁護士に相談をし、事業の目的と特徴をしっかり把握してからスタートしましょう。
(2017年4月16日号掲載)
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。