年間の所得が一定額を超えると、純投資所得税と追加医療保険税が課税される可能性があります。これら富裕層向けの税法に対して、どのような対処法があるかご紹介します。
新しい税法
2013年の税法改正の影響を大きく受けているのは、Sコーポレーションの株主と、有限責任会社(Limited Liability Company/LLC)の所有者「メンバー」かもしれません。これらの法人は導管実体(Pass-through Entity)と呼ばれ、連邦(IRS)に法人税を納める必要がない代わりに、株主やメンバーの個人所得を申告・納税する必要があります。法人の所得が個人に加わることや、自身への給与を上げることで、富裕層向けの新しい課税対象になる可能性が高くなります。
申告ステータスによって異なりますが、年間所得が20万ドルを超える場合、3.8%の純投資所得税(NIIT:Net Investment Income Tax)と0.9%の追加医療保険税(Additional Medicare Tax)の対象になります。加えて、40万ドル以上の高所得者に対しては39.6%の税率も新設され、納税者の負担はますます増えています。
純投資所得税
純投資所得税とは、利息や配当収入等、投資所得に対して課される税金です。申告ステータスが夫婦合算であれば25万ドル、独身は20万ドルを超える分に対して追加で3.8%課税されます。独身で、21万ドルの給与所得と2万ドルの配当収入がある場合、2万ドルに対し760ドル(2万ドル×3.8%)が課税されます。
追加医療保険税
追加医療保険税とは、給与所得や自営業所得に対して課される税金です。純投資所得税同様、申告ステータスが夫婦合算の場合は25万ドル、独身は20万ドルを超える分に対して0.9%追加課税されます。夫婦合算で30万ドルの給与所得があると、25万ドルに対しては固定1.45%の税が課され3625ドル(25万ドル×1.45%)、残りの5万ドルには1175ドル{5万ドル×(1.45%+0.9%)}の税がかかり、医療保険税は総額4800ドル(3625ドル+1175ドル)となります。
節税方法
このような状況下で何もしなければ税額は増すばかり。そこで節税対策として家族を雇用している方も多いのではないでしょうか。確定申告時の基礎控除額(2015年は6300ドル)を下回る金額であれば、就業年齢に達している子どもに給与を支払っても所得税は発生しません。それに付随する給与税は発生しますが、経費計上ができます。収入が変わらずに経費が増えると利益が少なくなりますが、以上の結果、家庭全体での課税所得を減らすことが可能となります。
例えば、Sコーポレーションの経営者が、学生の子ども2人にそれぞれ4000ドルの給与を支払ったとします。この方の税率区分が28%と仮定すると、2240ドル(8000ドル×28%)の節税効果があります。この給与は労働の対価である必要があるため、例えば一人は学校で専攻しているウェブ関係のデザイン、もう一人も学校で専攻している市場調査を行なってもらった、といった労働実態が必要です。
最後に、身内を雇用して給与を支払う場合、①支払い記録を付けることと、②給与額が適正であることの2点に気を付けましょう。あくまで、第三者から見て妥当な状況でなければなりません。給与は労働の対価として支払わなければならないので注意しましょう。
(2015年5月16日号掲載)
※本コラムは、税に関する一般的な知識を解説しています。個別のケースについては、専門家に相談することをおすすめします。ライトハウス編集部は、本コラムによるいかなる損害に対しても責任を負いません。