飲酒運転での逮捕とグリーンカード(永住権)申請への影響

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飲酒運転で捕まりました。H-1Bビザの更新にどう影響しますか?

瀧 恵之 弁護士

Q:現在私は、H-1BビザにてあるIT関連の会社でOPTの頃から働いています。今回アメリカ大使館にH-1Bビザの更新に行こうと思っていた矢先、飲酒運転で捕まってしまいました。私は今後どのようにすれば良いでしょうか? 日本の隔離も緩和されたこともあり、日本に一時帰国し、日本から戻った後はグリーンカード(永住権)の申請も予定していたのですが、とても心配です。

A:移民法における飲酒運転に関する判断は、トランプ前大統領の時に非常に厳しく位置付けられることになりました。まず、飲酒運転の移民法における分類から説明します。

一定期間に4回の飲酒運転で強制送還の対象に

犯罪には、強制送還の対象となる犯罪(Crime Subject to Deportation)と、強制送還の対象とならない犯罪があります。強制送還の対象となる犯罪は、全ての重犯罪(Felony)および一部の軽犯罪(Misdemeanor)がそれにあたります。軽犯罪の中で強制送還の対象となるものは、「Domestic Violence」と道徳に反する犯罪「Crime Involving Moral Turpitude」の2つです。「Domestic Violence」とは、夫婦間(離婚した後の前の夫・妻を含む)、あるいは恋人間の暴力行為を言います。また、道徳に反する犯罪「Crime Involving Moral Turpitude」には、麻薬に関する犯罪(Controlled Substances)、詐欺(Fraud)、窃盗(Theft)、および暴力に関する犯罪(Crime of Violence)などが含まれます。従って、飲酒運転自体は、強制送還の対象になる犯罪には含まれません。

ただしあなたの場合、まず飲酒運転で逮捕・有罪となったことが何度あるか、また、どのような状況下で捕まったかが問題となります。例えば、飲酒運転であっても、4回行うと重犯罪(Felony)となります。飲酒運転は、捕まってから10年以内に行うと回数が加算されます。ここで注意しなければならないのは、加算された時から10年以内に捕まると、前回の分も追加されるということです。例えば、1回目に飲酒運で捕まってから9年後に捕まると、それは2回目となり、その時から数えて9年後に捕まった場合は、1回目と3回目の間は18年間ありますが、3回目として計算されるということです。この計算方法により、合計4回の飲酒運転になると、強制送還の対象となります。

ビザへの規制は厳罰化の傾向 更新時期や申請場所の熟慮を

2015年11月5日に飲酒運転に対するビザの規制が施行され、その後トランプ政権の時にさらに厳しくなり、逮捕された時点(厳密には逮捕された際に指紋詐取が行われた時点)で、その後の裁判の結果にかかわらず、ビザがキャンセルされることになりました。極端な例ですが、飲酒運転の裁判において無罪の判決が出されたとしても、ビザはキャンセルされたままになるということです。

ただし、あなたのビザがキャンセルされたからと言って、ステータスまでキャンセルされたということではありません。言い換えると、あなたはアメリカ国内に滞在している限り、継続して合法的に滞在および就労することができますが、いったんアメリカ国外に出ると、現在のビザが無効であるため、新たにビザを取得しないといけないということです。また、注意が必要なのは、逮捕された時点から1年以内は、まずビザが発行されることはないということです。従って、あなたの場合は、日本のアメリカ大使館・領事館において、H-1Bビザを申請するのであれば、逮捕から1年以上経過した後に行うのが得策であると言えます。日本のアメリカ大使館・領事館において面接を受けた際に、医師の診断を受けるように指示されます。この診断では、アルコール中毒・依存症であるか否かの判断がされます。医師が許可を出した後、アメリカ大使館・領事館はビザを発行することになります。従ってあなたの場合は、通常よりも日本での滞在期間が長くなることを予定して、日本への渡航プランを立てる必要があります。

また、あなたのように、後にグリーンカード(永住権)の申請を考えているのであれば、日本にビザの申請に行くのではなく、アメリカに滞在したままグリーンカードの申請を行う方法が考えられます。実際、日本に行かなければならない特別な事由がない限り、この方法をお勧めします。特にあなたの飲酒運転歴が2回目の場合は、日本での医師の審査は非常に厳格であるため、リスクを負って日本に行くことは、まずお勧めしません。3回目の場合は、アメリカでの生活を諦めるのでなければ、ほぼやめた方が良いと言えます。一方、グリーンカードの申請においては、飲酒運転がある場合でも比較的取得の可能性は高いので、グリーンカードを取得された後、日本へ渡航するのが好ましいと言えます。

(2022年4月1日号掲載)

飲酒運転での逮捕回数によるアメリカグリーンカード(永住権)申請への影響

吉原 今日子 弁護士

Q:現在、永住権(グリーンカード)申請中ですが、飲酒運転で逮捕されてしまいました。今回で2度目で、1度目の飲酒運転で逮捕された後の保護観察期間中の出来事です。これによって、永住権申請が却下されることはありますか?また、他に申請を却下される犯罪要因には何がありますか?

A:飲酒運転で逮捕されたこと自体が直接的に永住権の却下につながるわけではありません。犯罪には、強制送還の対象となる犯罪(Crime Subject to Deportation)と、対象とならない犯罪があります。強制送還されてしまうと、再びアメリカには戻れません。その対象となる犯罪は、全ての重犯罪(Felony)、および一部の軽犯罪(Misdemeanor)です。
 
軽犯罪の中で、強制送還の対象となるものは家庭内暴力(Domestic Violence)と「道徳に反する犯罪」(Crime Involving Moral Turpitude)の2つです。家庭内暴力とは、夫婦(離婚後の前の夫・妻を含む)間か恋人間の暴力行為を指します。
 
後者の「道徳に反する犯罪」が何であるか、法律上全てが明確に示されているわけではありません。条例でこれまでに犯罪と判断されたものの中には、麻薬に関する犯罪(Controlled Substances)、詐欺(Fraud)、窃盗(Theft)、および暴力に関する犯罪(Crime of Violence)などがあります。

飲酒運転の逮捕数が10年以内に4回だと重犯罪

飲酒運転は、強制送還の対象になる犯罪には含まれませんが、4回行うと重犯罪です。飲酒運転は10年以内の再犯がどんどん加算されます。
 例えば、1回目に飲酒運転で捕まった後、9年後に捕まると、それは2回目となり、そのときから数えて9年後に捕まった場合は、1回目と3回目の間に18年間あっても3回目として計算されるということです。すなわち、捕まらない期間が連続して10年間無い限り、回数が加算され続けられるのです。従って、この計算方法により合計4回の飲酒運転になると、強制送還の対象となります。
 
3回目の飲酒運転の後、10年以内に4回目の飲酒運転をしてしまうと強制送還の対象になってしまいますので、注意が必要です。

過去の犯罪は隠せない 罪を償ったことの証明が必須

飲酒運転が強制送還の対象となる犯罪に含まれないからといって、全く問題にならないというわけではありません。永住権の手続きの中で最後の「I-485(Application to Register Permanent Resident Status)」の申請をアメリカにて行った場合は指紋を取られますので、逮捕記録は出てきます。
 
また、Consular Processing と呼ばれる日本での面接を選んだ場合であっても、在日アメリカ大使館での面接の際に記録は出てきます。この際、いかなる軽犯罪でも、それを問題とする場合がほとんどで、その犯罪がどの種のものであったかを証明するのは申請者側の責任です。
 
従って、その犯罪記録が飲酒運転であり、その他の犯罪ではないことを証明しなければいけません。ご自身でこれを立証する義務がありますので、飲酒運転を処理した裁判所からの書類や警察調書、告訴状、保護観察命令、訴訟事件一覧表などを入手しておくことを強くお勧めします。
 
罰則に従ってすでに罪を償ったという証明が特に大切で、訴訟事件一覧表は、最終判決の条件として与えられた内容(DUI プログラム、罰金の支払いなど)を全て遂行したことの証明となります。判決を受けた裁判所に行けば入手できますので、そこで訴訟事件一覧表の認証コピーの発行を依頼してください。これらの書類は、アメリカにて最後の「I-485」の申請を行う場合に一緒に提出します。
 
また、アメリカの移民局に面接に呼ばれた場合も、この認証コピーを持参してください。日本で面接を行うことを選んだ場合は、これらの書類を在日アメリカ大使館での面接の際に持参します。また、仮に飲酒運転以外、例えば前述の強制送還の対象となる犯罪を犯した場合であっても、犯罪の程度によってはWaiver(犯罪の帳消し)を申請することにより永住権を取得できる可能性もあります。この場合における最終的な判断は移民局か在日アメリカ大使館において担当した審査官が行うことになります。
 
あなたの場合は飲酒運転による逮捕が2回目であるからというだけで、永住権を却下されることはありませんが、審査の中で問題視されることは避けられません。後に立証できるように、課せられた刑罰に従って罪を償ってください。犯罪を犯してしまった事実を隠すことはできませんので、移民弁護士や移民局への報告を怠らないようにし、必要とされている承認された訴訟事件一覧表を「I-485」 申請時と面接の際に必ず持参してください。
 
(2014年4月16日号掲載)

飲酒運転で2回目の逮捕、申請中のグリーンカード(永住権)はどうなる?

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、H-1Bビザを持っており、現在働いている会社を通して永住権を申請中です。弁護士から、あと3年ほど待つ必要があると言われています。先日、飲酒運転で逮捕されました。実は、これで2回目です。永住権取得に影響は出るでしょうか?

A:重犯罪(Felony)、および一部の軽犯罪(Misdemeanor)が強制送還の対象となります。軽犯罪で強制送還の対象となるのは、「Domestic Violence」と「道徳に反する犯罪(Crime Involving Moral Turpitude)」の2つです。
 
Domestic Violence とは、夫婦(離婚後の前夫・前妻を含む)間、あるいは恋人間の暴力行為を言います。道徳に反する犯罪には、「麻薬犯罪(Controlled Substances)」「詐欺(Fraud)」「窃盗(Theft)」、および「暴力犯罪(Crime of Violence)」などが含まれます。
 
飲酒運転は、強制送還の対象になる犯罪には含まれませんが、4回行うと重犯罪となります。飲酒運転は、初犯から10年以内(以前は7年間でしたが、2005年1月1日より10年に変更)に再犯すると、記録が加算されます。注意しなければならないのは、加算された時点から10年以内にさらに再犯すると、以前の記録も追加されるということです。
 
例えば、初めて飲酒運転で捕まってから9年後に再度捕まると、記録上2回目となります。2回目に捕まった時点から9年後に再度捕まった場合、1回目と3回目の間は、18年間ありますが、記録は加算され、3回目になるということです。
 
すなわち、飲酒運転で捕まらない期間が10年間ない限り、記録は加算され続けていくのです。従って、この計算方法により4回の飲酒運転を犯すと、強制送還の対象となります。

裁判所からの書類の提出により重犯罪でないことを証明

2回目の飲酒運転が強制送還の対象となる犯罪に含まれないからといって、永住権の申請上、まったく問題にならないというわけではありません。
 
永住権申請手続きの中で、米国内で最終申請(I-485)を行った場合、指紋を取られます。従って、その逮捕記録が出てきます。また、日本でインタビューを受けることを選んだ場合(Consular Processing)でも、在日米国大使館でのインタビューの際に、記録が出てきます。
 
この際、いかなる軽犯罪であっても記録が出てきた場合は、ほとんどの場合、問題となります。そして、その犯罪がどの種のものであったかを証明するのは、申請者側の責任となります。ですから、犯罪記録が飲酒運転であり、その他の犯罪ではないことを証明しなければなりません。
 
これには、飲酒運転を処理した裁判所からの書類、Police Report、Complaint、Minutes(Probation)Order、Docket Reports 等を入手しておかれることを強くおすすめします。特に、Docket Reports は、最終判決の条件として与えられた内容(アルコールスクール、罰金の支払い等)をすべて遂行したことの証明となるので、特に大切です。判決を受けた裁判所に行けば入手できますので、Docket Reports のCertified Copyの発行を依頼してください。
 
これらの書類は、米国内で最後の申請を行う場合、I-485提出時に一緒に提出してください。日本でインタビューを受ける場合は、これらの書類を米国大使館でのインタビューに持参してください。
 
また、例えば前記の強制送還の対象となる犯罪を犯した場合でも、犯罪の程度によってはWaiver を申請することにより、永住権を取得できる可能性もあります。この場合の最終判断は、移民局、あるいは米国大使館において、あなたのケースを担当した審査官が行うことになります。
 
また、他に気を付けなければならないことは、現在保持しているH-1Bビザを更新するために、日本にある米国大使館・領事館に行く場合、飲酒運転の記録が問題になるということです。多くの場合、米国大使館指定医師のカウンセリングを受けることを要求されます。これにより、ビザの更新に数週間を要する場合があります。従って、この間、米国での仕事を休まなければならない可能性があるということです。
 
もし可能ならば、永住権の申請は米国内にて最後の申請(I-485)を行ってください。そして、その後、「一時渡航許可(Advance Parole)」が下りるまで、もしくは、永住権申請手続きの最終段階まで待ち、日本の米国大使館にてインタビューを受けるまで、出入国を控えることをおすすめします。これにより、H-1Bビザ更新の際、日本で長期の足止めを受ける事態が避けられるからです。
 
(2011年8月1日号掲載)

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