コロナウイルスの影響による 永住権申請手続き停止について

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Q. 先日、トランプ大統領がグリーンカードの手続きを止めると発表しました。私は現在「H-1B」ビザでアメリカに滞在していますが、グリーンカードも申請しています。今後どのようになるか教えてください。

A. トランプ大統領が緊急事態宣言を行った2020年3月13日から同年4月11日の間に、アメリカ国内で失業手当の申請を行った人が2200万人を超えた事実などに鑑み、大統領は4月20日、アメリカ国民の雇用を守るため、グリーンカードの申請手続きに制限を加える発表を行いました。

「移民ビザ」の発給を60日間停止する措置

さらに4月22日、大統領はアフリカ系アメリカ人を含むマイノリティー、大学を卒業していない人、身体障害者などが歴史的に見て雇用されづらい中、今回の状況がそれをさらに悪化させることを懸念しつつ、一方で医療の領域では、現在の医療機関のシステム上、外国人労働者に頼る必要性があることも強調しました。そして60日間、アメリカ国外にいて移民ビザを所有していない人はビザ発給の制限を受けることとなりました。移民ビザとは、「H-1B」「L」「E」などの非移民ビザでなく、グリーンカードの申請を行い、日本のアメリカ大使館にて面接を受けた後に発行される、通常6カ月間有効なビザです。つまり厳密には、日本のアメリカ大使館で面接を受ける段階までいかず、移民ビザの発行を受けるに至っていない人が対象となります。

また、既にグリーンカードを保持している場合でも、渡航許可、再入国許可証などが必要で、それをまだ取得していない場合もこの制限の対象になります。これは実際には、グリーンカードを持っているものの、アメリカ国外に長期滞在していて、アメリカに戻ることを予定している人が、60日間その対象になるということです。一方、既に面接を受け、移民ビザの発行を受けている人は対象外となります。

また、以下の人もこの制限の対象外とするとされています。①既にグリーンカードを保持している人、②医療関係に従事することを目的として入国する人、③投資家グリーンカードを申請している人、④アメリカ市民の配偶者、⑤アメリカ市民の21歳未満の子ども⑥アメリカの公務に従事する目的で入国する人、⑦アメリカの軍事に従事する人とその家族、⑧その他、軍の特殊通訳やアメリカの国益のために重要と認められた人とその家族。

この60日間の制限は、状況により延長される可能性があり、その場合はこの60日間が終わる10日前までに発表されるとされています。現状、「H-1B」「L」「E」などの非移民ビザ保持者の制限は今回の発表には含まれていないものの、施行から30日以内に、国務省および移民局が大統領に制限に関する提案を行うとされています。

実際の制限対象者は非常に限定的

あなたが対象となるかは、グリーンカードの申請がどの段階にあるかによります。就労を通してグリーンカードを申請する場合は大きく次の4つの段階に分かれます。①募集広告、②労働局の審査、③「I-140」(主に会社の審査)、④「I-485」、あるいは「Consular Process」(主に申請者の審査)。④の「I-485」と「Consular Process」の違いは、簡単に言えば「I-485」はアメリカの移民局で面接を受ける申請方法、「Consular Process」は日本のアメリカ大使館で面接を受ける方法です。今回の制限の対象となるのは④で「Consular Process」を選んだ場合です。すなわち、あなたのグリーンカード申請が①~③の段階にある場合は影響を受けることはありません。そして既にあなたのケースが④の「Consular Process」の手続きを始めていた場合は、制限の適用中は、日本のアメリカ大使館での面接の通知が来ないことになります(新型コロナウイルスの影響で面接を停止して以降は、面接通知が来ていた場合でもキャンセルをされています)。ですから、その間アメリカで「H-1B」ビザにて滞在し、面接の通知が来るのを待てばよいのです。万が一、その間に「H-1B」ビザの有効期限が切れてしまう場合も、「H-1B」ビザ滞在資格(Status)の延長はアメリカ国内に滞在・就労しながら可能です。

また、既に「I-485」の申請を行っているケースでは、今回の発表とは別に、現在第三優先カテゴリーは「Priority Date」(待ち時間の順番)が遅くなっているため、グリーンカードの発行は遅れる可能性があります。その場合でも、その間は就労許可証にて就労を続けることができ、これも延長可能です(現在、アメリカの移民局も日本のアメリカ大使館も、面接はいずれにしてもストップされています)。あなたの場合、今後の発表により異なる状況が起こる可能性はありますが、今回の発表の範囲では大きな影響を受けることはないと考えてよいでしょう。
 
※このページは「2020年5月16日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載のコラム『移民法のツボ(瀧 恵之)』を基に作成しています(4月26日時点の情報)。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

◎ 瀧 恵之 / Yoshiyuki Taki Attorney at Law
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