アメリカ就労ビザ(H-1Bビザ)の申請方法

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アメリカの特殊技能職ビザ(H-1Bビザ)とは

アメリカの特殊技能職ビザ(H-1Bビザ)の申請には、職務が求める特定分野での学位を4年制大学以上で取得しているか、短大卒業+最低6年間の専門職経験が必要。

  • 有効期間:3年(最長6年)
  • 更新の可否:可(3年毎で1回のみ)
  • 取得にかかる時間:約3カ月(現在は追加書類要請が多く4~5カ月)
  • 費用概算(弁護士費用含む):3700~5500ドル
  • 配偶者の扱い:「H-4ビザ」
  • 配偶者の労働可否:不可

 

アメリカ「H-1Bビザ」の最新状況

アメリカのH-1Bビザは高度な専門知識を要する職業に就くためのビザ(就労ビザ)で、学士以上の学位保持者が対象です。LビザやEビザとは異なり管理職以上という規制がないため、新卒者も取得可能。4年制大卒者6万5千人、大学院修了者2万人の申請者受け付け枠に対し、2022年は合計48万3927人の応募があり、例年通り無作為の抽選により申請者が選出されました。大学院卒者は、2万人枠で落選しても大卒枠で再抽選されるため、チャンスは2回。どちらにしても、落選した場合は翌年4月の新たな申請受け付けを待たなければなりません。
 
このH-1Bビザでの大きな変化と言えば、申請時に追加で1,225ドルを払えば申請受け付けから15日以内に第一次審査の結果が出る「プレミアム申請」が、2017年は実施されなかったことです。また近年では、通常5~6月に届く抽選結果が来なかったり、当選してもプロセスの進みが遅く、本来ビザが有効となる10月になって追加書類の請求が来たりする例も見受けられます。2021年の例で言えば、移民局の当選者数の調整のため、当選結果が3度にもわたって遅れて発表されました。
 
H-1Bビザは、移民局申請の前に労働局申請があります。これは、スポンサー企業の事業内容や運営地域、申請者の採用職務などを労働局に申告し、それに基づいて給与額を設定する過程で、その額を持って移民局申請に移ります。最近はこの設定額が上昇傾向にあり、アメリカの企業がスポンサーになることを躊躇したり、経済力のない企業は申請すらできなかったりするなどの懸念が出ています。吉原弁護士も、「トランプ大統領は給与設定額の引き上げを提案しており、もし額が上がればスポンサーに対する申請条件が難化するため、申請・取得が難しくなる可能性があります」と危惧しています。
 
通常、移民局に約2,000ドル、弁護士に約3,000ドルの申請料を払いますが、抽選に落ちたら移民局分は返金されますが、弁護士費用は事務所によって戻ってこない場合があります。こうした諸事情から、H-1Bビザは企業にとって負担とリスクが大きいビザと言えます。しかし、アメリカ市民あるいは永住権保持者が経営する会社はアメリカ企業とみなされてLビザ、Eビザの対象にならないため、H-1Bビザに頼らざるを得ません。

アメリカ「H-1Bビザ」年間発給枠の推移

H-1Bビザの年間発給数
1990~ 65,000(H1-Bカテゴリー開始)
1999~ 115,000
2000~ 115,000
2001~ 195,000
2003~ 195,000
2004~ 65,000+20,000(大学院枠開始)

 

アメリカのH-1Bビザ 締め切り日の推移

年度 受け付け締め切り 受付期間 抽選の有無 応募者数
2012 11/22/2011 235日
2013 6/11/2012 71日
2014 4/5/2013 5日 124,000
2015 4/7/2014 5日 172,500
2016 4/7/2015 5日 233,000
2017 4/7/2016 5日 236,000
2018 4/7/2017 5日 199,000
2019 4/6/2018 5日 199,098
2020 4/5/2019 5日 201,011
2021 3/20/2020 20日 275,000
2022 3/25/2021 15日 308,613
2023 3/18/2022 18日 483,927

 

アメリカの「H1-Bビザ」取得に必要な職務内容と大学専攻

大学で学んだ知識を会社で生かすことが前提のH-1Bビザ。吉原弁護士は、「以前は専攻と職務が何となく関連していればOKでしたが、最近は両者に明確な関係性がないと取得が困難です。また、各部門の違いが曖昧な中小企業よりも、部門が明確に分かれていて、関連付けが容易なある程度大きい企業の方が取得しやすいです」と最近の動向を語っています。
 
H-1Bビザは専攻によって取得難易度が異なるため、将来アメリカで働きたい人は、大学の専攻決定前に移民弁護士に相談するのが得策です。一般的に「General Education」「Anthropology」「Public Relations」「International Studies」などは関連する専門職が少なく、H1-Bビザ取得が難しい学部と言えます。
 

「H-1Bビザ」所有者が突然レイオフその時どうする?

H-1Bビザを持っている人が突然解雇された場合、解雇後10日以内にアメリカから出国しなければなりません。その10日以内に次のスポンサーが見つかったとしても、移民局に雇用主変更を申請している最中はアメリカ国外で結果を待たなければなりません。
 
(取材協力・監修:吉原今日子弁護士/ライトハウス・ロサンゼルス版2017年9月16日号掲載記事を元に2022年6月14日に加筆修正)


 

※以下、過去にライトハウス・ロサンゼルス版のコラム「移民法Q&A」に掲載された関連記事をご紹介します。

2023会計年度のH-1Bビザ申請の詳細について教えてください。

瀧 恵之 弁護士

Q:私はある日系の会社にて、OPTで働いています。2022年のH-1Bビザの申請をしたいのですが、H-1Bビザは毎年抽選が行われると聞きました。申請の詳細情報を教えてください。

A:まずH-1Bビザは、専門職ビザと言われるものです。申請を行うには、申請者が4年制大学を卒業しているか、それに相当する職務経験があること、当該の行われる職務内容が、4年制大学を卒業しているかそれに相当する職務経験がないとできないほど、複雑かつ専門的であること、および、4年制大学あるいはそれに相当する職務経験で学んだことを生かせる職務である必要があります。

移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、そして実質的な適用・応用が要求される職種です。例えば、建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野であり、またその職種に就くにはアメリカにおいて通常、学士号あるいはそれ以上の学歴、またはそれに値する経験が必要とされる職種を指すとされています。

具体的な職種としては、会計士、経営コンサルタント、コンピューター・エンジニア、建築家、翻訳家などがあります。これらの職種を遂行するにあたって必要とされる学歴あるいは職歴(コンピューター・エンジニアであればコンピューター・サイエンス)を保持し、スポンサーとなる会社でその職種を必要とされていれば、H-1Bビザ申請の条件を満たすことになります。

2022年3月1日よりH-1Bビザの応募受付 結果発表は遅れる可能性も

抽選による選抜方法では、2022年3月1日(アメリカ東海岸時間の正午12時)〜3月18日(アメリカ東海岸時間の正午12時)の間に、インターネット上でH-1Bビザの抽選応募申請が受け付けられることになります。抽選応募費用は10ドルです。申請者は、同じスポンサー会社を通して複数の応募申請を行うことはできませんが、スポンサー会社が異なっていれば複数の応募申請も可能です。

抽選結果は、移民局は2022年3月31日までに発表する予定とされていますが、発表が遅れる可能性もあります。2021年の例で言えば、移民局の当選者数の調整のため、当選結果が3度にもわたって遅れて発表されました。抽選を通過した申請者は、2022年4月1日から本申請(申請書式「I-129」の提出)ができるようになり、当選発表から90日以内に本申請を行えば良いことになっています。

この申請は、移民局の2023年会計年度枠(2022年10月~2023年9月の枠)の申請に当たるため、抽選を通過し、その後の本申請で認可を受けた場合は、2022年10月1日から就労を開始することができます。ただし前述のように昨年は結果が出るのが遅れ、2021年10月1日を超えても結果が出ないケースも見られたため、この場合も想定して予定を立てるのが得策かもしれません。

H-1Bビザの有効期限は最大3年で、延長を含め最大6年間の滞在・就労が可能になります。いったんH-1Bビザを取得した後でビザを更新する場合、および雇用主を変更する場合は、抽選のプロセスを経る必要はありません。雇用主を変更する場合は、ビザ申請時の雇用主の下で1カ月以上就労すれば、雇用主の変更が可能であるとされています。アメリカ国外でH-1Bビザを申請・取得した場合は、就労期間開始日(2022年10月1日)の30日前、2022年9月1日よりアメリカに入国可能になります。

H-1Bビザの抽選を通過しなかったケースも想定して準備を 

2023年会計年度枠のH-1Bビザの発給上限枠数は、学士号(4年制大学卒業)あるいはそれに相当する経験者の枠が6万5000、アメリカの大学で修士号以上の学位を取得している、および当該職務にその学位を必要とする場合の枠が2万です。また、過去にH-1Bビザにて就労し、6年間の有効期限を使い切っていない場合は抽選の対象になりません。例えば、過去にH-1Bビザにて3年間アメリカで就労し、その後日本に帰った場合、残りの(6−3=)3年間の就労に対するH-1Bビザの申請を行う場合は、抽選の対象になりません。

あなたの場合、前述の申請方法、特に申請期限に注意してH-1Bビザの申請を行うとともに、万一、H-1Bビザの抽選を通過しなかった場合にも備え、他の方法(日系の会社であれば、Eステータスへの変更の可能性など)も考慮し、前もって準備を進めておくのが得策だと言えます。

(筆者からのコメント)このコラムは2022年1月28日時点での情報をもとに執筆したもので、今後内容が変わる可能性もあります。特にH-1Bビザの場合、大幅な変更もありえるので、正確な最新の情報に基づいて申請を行ってください。(2022年2月16日号掲載)

2022会計年度のH-1Bビザの申請について教えてください。

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、ある日系の会社にてOPTで働いています。2022会計年度のH-1Bビザの申請をしたいのですが、「今年から制度が変わる」「変わらない」という情報が錯綜していて困惑しています。私はどのようにしてH-1Bビザを申請すればよいか、正確な情報を教えてください。

A:トランプ前政権は、給与額によって優先順位を設ける選択方法を示していましたが、バイデン大統領はこれを打ち消す方針を打ち出しました。このことを受けて移民局は2021年2月8日、トランプ前政権が発案したH-1Bビザに給与額によって優先順位を設ける選択方法の施行期日を2021年3月9日から2021年12月31日に延期し、再検討することを発表しました。これは、トランプ前政権の発案した選択方法をほぼ無効にする方針であるとも解釈できます。従って、本コラムで前回(2021年2月16日号)にご紹介した選択方法は今年は採用されなくなり、従来通りの抽選による選択方法が取られることになりました。本コラムの連載では、執筆から発行されるまでのタイムラグがあることをお詫びするとともに、この旨ご了承くださると幸いです。以下、今年の抽選によるH-1Bビザの申請に関して説明します。

2021年のアメリカ・H-1Bビザの基本的な申請方法

抽選による選択方法では、2021年3月9日〜3月25日の間にインターネット上でのH-1Bビザの抽選応募申請が受け付けられることになります。抽選応募費用は10ドルです。申請者は、同じスポンサー会社を通して複数の応募申請を行うことはできませんが、スポンサー会社が変われば、複数の応募申請も可能です。抽選結果は、2021年3月31日から発表を始める予定になっています。昨年の例で言えば、移民局による当選者数の調整のため、当選結果が遅れて出るケースもありました。抽選を通過した申請者は、2021年4月1日から本申請(申請書式「I-129」の提出)をすることができ、当選発表から90日以内に本申請を開始すれば良いことになっています。

この申請は、移民局の2022年会計年度枠(2021年10月~2022年9月)の申請にあたるため、前述の抽選を通過し、その後の本申請で認可を受けた場合は、2021年10月1日から就労を開始することができます。昨年は、2020年10月1日を過ぎても結果が出ないケースも見られたため、その場合も想定して予定を立てるのが得策かもしれません。H-1Bビザの有効期限は最大3年で、延長を含め最大6年間の滞在・就労が可能になります。

いったんH-1Bビザを取得した後、更新および雇用主を変更する場合は、抽選のプロセスを経る必要はありません。雇用主を変更する場合は、申請時の雇用主の下で1カ月以上就労すれば雇用主の変更が可能であるとされています。雇用主の変更申請では、当該変更申請を行った(申請書を移民局が受理した)時点で、結果を待たずして新しい雇用主の者での就労が可能になります(ただし、申請却下のリスクを考慮すると、時間が許す限り認可されたことを確認した後に雇用主を変更するのが賢明です)。

雇用主の変更は条件を満たす限り何度でも可能ですが、最大延長期間の6年間は変わりません。アメリカ国外にてH-1Bビザを申請・取得した場合は、就労期間が開始される日(2021年10月1日)の30日前(2021年9月1日)よりアメリカへの入国が可能になります。

2022会計年度の発行枠の上限とH-1Bビザ申請の際の注意点

2022会計年度枠のH-1Bビザの制限受付数は、学士号(4年制大学卒業)あるいはそれに相当する経験者の枠が6万5000、アメリカの大学で修士号以上の学位を取得していて、かつ当該職務にその学位を必要とする場合の枠が2万です。大学あるいはそれに関連する非営利団体、非営利研究機関、政府関係の研究機関としての認可受けている団体・機関が雇用主の場合は、この制限を受けることがないため、前述の期日に縛られることなく雇用開始時期に応じて申請を行うことができます。

また、過去にH-1Bビザにて就労していて、6年間の有効期限を使い切っていない場合は、抽選の対象になりません。例えば、過去にH-1Bビザにて3年間アメリカで就労し、その後日本に帰った場合、残りの3年間(6年−3年)の就労に対するH-1Bビザの申請を行う場合は、抽選の過程を経ずに申請ができます。あなたの場合は、前述の申請方法、特に申請期限に注意してH-1Bビザの申請を行うとともに、万が一H-1Bビザの抽選を通過しなかった場合にも備え、他の方法(日系の会社であればEステータスへの変更等の可能性も考えられます)も考慮し、前もって準備を進めておくのが得策でしょう。(2021年3月1日号掲載)

2022会計年度のH-1Bビザ申請が大きく変わるというのは本当ですか?

瀧 恵之 弁護士

Q:現在、私は日系のIT関連の会社にて、OPTで働いています。2022会計年度のH-1Bビザの申請をしたいのですが、2022会計年度から制度が変わるかも知れないと聞きました。どのように申請方法が変わるか教えてください。

A:移民局は、アメリカ人労働者を守ることを目的として、2020年まで行われていた、抽選で申請者を選択する方法を変更し、給与額により優先順位を設ける選択方法を取り入れ、高度な技術を保持する申請者を選択対象とする方針を発表しました。これは、雇用主が人件費削減のためH-1Bビザを利用してエントリーレベルの従業員を雇うことを防ぐため、また、抽選による選択方法では雇用主側が将来の雇用に関する計画を立てづらく、これを避けるためであるとされています。この方針は、2020年11月2日にガイドラインの発表を行っていましたが、その後、各所からの意見を集めた後、最終決定を行うに至りました。

職種を給与レベルで4段階に分類、優先順位が付けられる

 H-1Bビザは専門職ビザと呼ばれ、申請を行うには、申請者が4年制大学を卒業しているか、それに相当する職務経験があること、当該の職務内容が、4年制大学を卒業しているかそれに相当する職務経験がないとできないほど複雑かつ専門的であること、および4年制大学あるいはそれに相当する職務経験で学んだことを生かせる職務である必要があります。移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、そして実質的な適用・応用が要求される職種で、例えば建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野であり、またその職種に就くにはアメリカにおいて通常、学士号かそれ以上の学歴、あるいはそれに値する経験が必要とされる職種を指すとされています。

具体的には、会計士、経営コンサルタント、コンピューター・エンジニア、建築家、翻訳家などがあります。これらの職種を遂行するにあたって必要とされる学歴あるいは職歴(コンピューター・エンジニアであればコンピューター・サイエンス)を保持し、スポンサーとなる会社でその職種を必要とされていれば、H-1Bビザ申請の基本条件を満たすことになります。発行数は昨年同様、学士号の枠が6万5000、修士号の枠が2万です。

前述の、「給与額により優先される」とは、労働局が公表しているOES(Occupational Employment Statistics)上で、申請する役職の給与のレベル(4つのレベルに分類)の高い申請者が優遇されるということです。あなたの場合は、IT関係の会社に勤めているため、そもそも職種自体が比較的給与の高いカテゴリーに属していて、その中でレベルの高い給与だとするとさらに高くなります。例えば、コンピュータープログラマーで LA County ならば、レベル1で年間6万5499ドルですが、レベル2で8万662ドル、レベル3で9万5805ドル、レベル4だと年間11万968ドルになります。

従って、ここで注意しないといけないことは、労働局が規定している高いレベル(例えば上記のレベル4など)の給与(「Prevailing Wage」と呼ばれます)をあなたの雇用主が支払えるのかどうかを事前に確認しておく必要があるということです。もし、ビザ取得・雇用後に「Prevailing Wage」を支払っていなかった場合、「Site Inspection」のリスクが生じます。「Site Inspection」とは、移民局(あるいは移民局と契約している調査機関)の調査員が予告なしに職場を訪れ、申請書に記載された通りの職務内容を行っているかどうか、また既定の給与額の支払いが行われているかどうかの確認を行うことです。実際には、この時「Payroll Record」の提出が求められる場合が多いです。

トランプ前政権による決定のため、今後の動向に要注意

この変更は2021年3月9日に施行されるとされています。従って、この時までに詳細な申請方法が発表されることになると考えられますが、同時に大統領の政権交代により、(場合によっては大幅な)変更が加えられる可能性も十分にあります。この新しいH-1Bビザの選択方法は、トランプ政権によって発案されたものであり、トランプ政権は移民に対して規制的な態度を取っていたのはご存知の通りです。

一方、バイデン政権は、移民受け入れを緩和する方向性を打ち出しています。従って、あなたの場合、アップデートされた情報を入手するとともに、雇用主である会社と、給与額などの確認を行っておくことが重要です。また、読者の皆さんの中にはエントリーレベルでの申請を考えておられる方も多いかと思います。その場合でも今の時点で諦めるのではなく、アップデートされた情報を入手するよう努めるとともに、他のビザステータスの申請手段も考慮することが得策だと考えます。(2021年2月16日号掲載)

2018会計年度(2017年募集)のアメリカ就労ビザ(H-1Bビザ)申請状況は?

大橋 幸生 弁護士

Q:アメリカの大学でEngineeringの学士号を取得し、現在、OPTで働いています。今の会社で今年2017年に、H-1Bビザの申請をしました。抽選があると聞きましたが、その仕組みや今年の申請状況を教えてください。

A:H-1Bビザ(入国後に取得の場合はH-1Bステータス)とは通称、特殊技能職ビザのことを指し、他国籍の人がアメリカで働くのに最も一般的な方法(就労ビザ)です。申請者(Petitioner)であるアメリカの会社が、アメリカ人、もしくはグリーンカード保持者の従業員のみでは十分な特殊技能の労働力を得ることができないため、短期で特殊技能の資格を持つ他国籍の従業員の手を借りる必要性を、アメリカ労働省とアメリカ移民局に訴えることで申請が開始します。
あなたの場合ですと、ビザの受益者(Beneficiary)として求められる条件としては、
①該当職務が求める特定分野の学士、あるいはそれ以上の資格があること、
②その職務に適格であること、
です。ただ、これら2つの条件を満たしているだけでビザの申請が認可されるわけではありません

アメリカのH-1Bビザは今年も抽選が行われる

H-1Bビザは、アメリカ連邦政府の1会計年度(10月1日~翌年9月30日)内の発行数が6万5000に限られており、また、これ以外に、アメリカで修士号を取得した申請者向けに2万の大学院枠が設定されています。H-1Bビザ申請は会計年度枠が埋まり次第、受付終了となります。通常4月1日から申請可能ですが、2017年は4月1日と4月2日が休日だったため、申請は翌日の2017年4月3日(月)からでした。
その4日後、移民局は、4月7日に2018会計年度のH-1Bビザの申請数の状況を発表しました。その発表によると、4月7日までに合計8万5000以上の申請が移民局にされたとのことです。2017年の受付期間は4月3日から4月7日まででしたが、H-1Bビザ申請書類の受付は最低5日間と、移民局の規則によって定められています。もし、この5日間内に合計8万5000以上の申請書類が届いた場合は、全ての申請者の間で抽選が行われます。それは今年も例外ではありません。
H-1Bビザ申請受付の終了日時から1カ月ほどで、受理された申請書類の中から審査対象を選ぶ抽選がコンピューターによって行われます。抽選に当選したか否かは、レシートが届くかどうかで分かります。レシートが届けば、抽選に受かったことを意味します。レシートが届かず、申請書類(申請費用を含む)が返送(通常、法律事務所に送られてくる)された時点で、抽選に漏れたことが確定します。稀にレシートが届かなく、申請書類も返送されない場合があります。その場合は、抽選に当選した可能性がありますので、弁護士と相談しましょう。

今年はH-1Bビザ申請時に「Premium Processing」が実質的に使用できない

以前までは「Premium Processing」という形で申請をした場合、H-1Bビザ申請書類の受理から15日間ほどで認可の是非を知ることができました(あるいは追加書類要請)。しかし2017年の3月、移民局は、「2017年4月3日より6カ月間、『Premium Processing』を通しての申請を一切受け付けない」と発表しました(=実質上、使用不可)。理由としては、H-1Bビザの延長申請の審査が大幅に遅れていることにあります。これにより、新規H-1Bビザ審査の認可発表も通常より遅れることが予測されます。
ちなみに、申請受付開始後、1週間以内で申請受付が終了となるケースはここ数年続いています。2014会計年度、2015会計年度、2016会計年度、2017会計年度、そして今年の2018会計年度のH-1Bビザ申請はいずれも4月7日までに受付終了しました。比べて、2010会計年度は12月9日まで、2011会計年度は翌年1月26日まで、2012会計年度は翌年11月23日まで、2013会計年度は6月11日まで申請が受け付けられていました。現状、H-1Bビザ申請者は増える一方なのに対し、申請枠は変わらないままなので、ここ最近の抽選の当選確率は下がる一方です。
移民局がこの現状に対して、H-1Bビザ従業員に対しての仕事場での管理を厳しく査証する旨を2017年4月3日に発表しています。H-1Bビザの申請内容とそぐわない職務内容を会社に強制される場合、もしくは、申請した給与設定にそぐわない給与が支払われている場合は、移民局へその現状を通報することを勧めています。この査証方針に対して、結果的に2019会計年度のH-1Bビザ申請に影響を及ぼすかどうかは現状では断定できません。
アメリカでは一般的に難しいといわれるEngineeringの学士号ですが、H-1Bビザ取得に関しては他の申請者と同じく抽選に通らなければならず、落選のリスクは高いです。当選確率は20~25%と見て、今後の予定を立てていくことが懸命です。
 
(2017年5月16日号掲載)

2017年度・アメリカ就労(H-1B)ビザの募集枠数や申請方法が知りたい

吉原 今日子 弁護士

Q:2015年5月にアメリカの大学院でMBAを取得しました。その後OPTを取得し、会計士事務所で働いています。OPT期間が終了したら就労する会社も既に決まっており、その会社からの就労ビザ申請を考えています。ただ、2015年には多くのH-1Bビザ申請者が抽選漏れしたと聞きました。2016年もそうなりそうでしょうか?また、H-1Bビザ取得まで、OPTが延長されるというのは本当でしょうか?

A:アメリカの就労ビザ(H-1Bビザ)を取得するには、いくつかの条件を満たしている必要があります。
①ビザを申請する業種において、通常、学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上が要求されている
②その職務は、学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上を保持する者でないと遂行できないほど特殊である
③雇用主が、その役職に従事する者に対して、一般的に学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上を必要としている
④職務内容が専門的かつ複雑であり、その職務を行うにあたっては、通常その学士号(あるいはそれに匹敵する経験)以上の知識を必要とする
の4つです。これら条件を満たしていれば、H-1Bビザ取得の可能性は十分にあります。

2017年度のアメリカ就労ビザ(H-1Bビザ)への応募も早い時点で発行数上限に達しそう

2017年度の就労ビザ(H-1Bビザ)の募集開始日は、2016年4月1日。移民局が1年間(2016年10月1日~2017年9月30日)に発給できるH-1Bビザの数は、一般枠が6万5000です。また、修士号枠(アメリカで修士号、あるいはそれ以上の学位を取得した人に与えられる枠)は2万です。2016年度の募集では、募集開始から5日間で23万3000の応募がありました。
 
抽選は4~5月中に、コンピューターで無作為に行われます。抽選をパスした場合、移民局から受理書を受け取ります。抽選に漏れると、申請書類一式、申請費用が弁護士事務所に送り返され、それらを受け取った時点で抽選漏れが確定します。まれに移民局からの受理書が届かず、書類も送り返されてこないことがあります。その場合、申請書類が送り返されてこない限りは抽選をパスしている可能性が高いです。今年も早い時点で年間発行数上限に達成することが予想されるので、早目の申請準備をお勧めします。
 
弁護士への依頼は、就労ビザ申請の2カ月以上前から開始しましょう。なぜなら、申請のためにはさまざまな書類、情報の準備が必要だからです。また、就労ビザ申請には、アメリカの労働局から雇用条件の認定(Labor Condition Application)を受けなければいけません。認可には現在約2週間ほどかかります。さらに、申請する会社が今まで、または過去数年認可を受けたことがない場合は、会社のTax IDナンバーの確認のために追加書類を要請されます。書類の提出後1~2週間ほどでTax IDナンバーの確認が終わり、その後、再度労働局への雇用条件認可の申請をしなければなりません。それから、ようやく移民局申請の準備となるので、余裕を持って準備を始めた方が安全なのです。

OPTがH-1Bビザによる就労開始より先に終了してしまったら?

H-1Bビザの申請は2016年4月1日から開始されますが、申請が認可されてもH-1Bビザでの就労がスタートするのは、2016年10月1日からです。このため、OPT(Optional Practical Training)がその60日以上前に終了してしまう場合、H-1Bビザへの変更日までにギャップが生じてしまいます。そのギャップを失くすために、ギャップ解消法案「Cap Gap Extention」が設定されています。
 
H-1Bビザが抽選になる場合、H-1Bビザを申請したという証明(申請書類と移民局へ書類が郵送された証明)を学校に提出すれば、6月1日まで「I-20」を延長できます。それまでに抽選漏れが確定すれば、そこから60日のグレースピリオドが始まり、6月1日以降の「I-20」の延長などの手続きを行えます。抽選をパスした場合、OPT終了後も10月1日まで滞在と就労許可が自動的に延期されます。
 
就労ビザ(H-1Bビザ)が認可されれば、ビザの発効開始日前日である9月30日までOPTが延長されます。しかしH-1Bビザ申請が審査で却下されてしまった場合、OPTの有効期限がその時点で過ぎていれば、OPTは失効となります。また、H-1Bビザ申請がOPT終了後60日間のグレースピリオド中に提出された場合は、アメリカでの滞在資格は延長されるものの労働許可はすでに終了している状態ですので、OPTは延長されず、自宅待機となります。その場合、H-1Bビザの申請後、卒業校(OPT、「I-20」の発行元)のInternational Student Officeに行き、H-1Bビザの申請を行った事実を伝え、OPTの期間を延長してもらうよう要請してください。
 
いずれの場合でも、OPT中にH-1Bビザを申請する際は、レシートが届いたら必ず卒業校にコンタクトを取るようにしましょう。
 
(2016年1月16日号掲載)

就労ビザ(H-1Bビザ)を申請、どんなことに気を付けたらいい?

瀧 恵之 弁護士

Q:アメリカで就労ビザ(H-1Bビザ)の申請を考えています。今からでもまだ間に合うのでしょうか。また、仮に申請ができるとしたら、何か注意すべき点はありますか?

A:移民局は、2011月1日にアメリカ就労ビザ(H-1Bビザ)の申請状況を発表しました。H-1Bビザは、1会計年度(10月1日~9月30日)内の発行数が6万5000に限られており、アメリカで修士号を取得した申請者向けに、これ以外に2万の枠が設定されています。
 
6万5000の枠に対しては、申請数が4万9200、2万の枠は、既に上限に達しています(2011年11月7日時点)。なお、6万5000の枠に対して4万9200の申請があったからと言って、単純計算で1万5800 の枠が残っているというわけではありません。この中には、「チリおよびシンガポールの自由貿易条約」のための6800の枠が設置されているため、実際の残数枠は1万を切っていると考えた方が良いでしょう。ただし、H-1Bビザの延長、および雇用主の変更の申請、および過去にH-1Bビザを取得したことがあり、最長延長期間(6年)の残りの期間を使って申請する場合は、この枠の対象とはなりません。
 
ちなみに過去、2008会計年度、および2009会計年度は、就労ビザ申請者数がこの規定枠の数を遥かに超えてしまったため、抽選が行われました。しかし、2010会計年度以降は、経済不況や、また抽選になることを恐れた企業側が、H-1Bビザ対象者の雇用を控えた経緯もあり、申請数は減少しています。現在は、抽選によって審査を受けることなく申請が却下されるという事態はなくなりました。しかし、移民局の審査が厳しくなったため、相当数の申請が却下されています。
 
このため、学生のOPT(Optional Practical Training)期間中に企業が予算をかけてトレーニングを行ったにもかかわらず、就労(H-1B)ビザの申請が却下されたために雇用継続を中断せざるを得ないという事態が起こっています。また、移民局が予告なく申請者の職場に視察に来る、いわゆる「Site Visit」が頻繁に行われるようになり、企業のH-1Bビザ対象者離れに拍車を掛けました。

厳しい審査をパスするための注意点

しかし、前述したようにH-1Bビザの残数枠が1万を切っているという事実を鑑みると、遅くとも来年初旬あたりにはH-1Bビザの申請が締め切られ、次回の就労ビザ申請は2012年4月1日以降(この就労ビザが有効なのは2012年10月1日から)になると考えられます。
 
また、例年締め切り間際に申請したケースは、発給数を枠内に収めるために、審査がさらに厳しくなる傾向にあります。従って今すぐ申請を行うか、2012年4月以降まで待つことができるのなら、今年度枠の厳しい審査を避け、来年度枠まで申請を待つことを、考慮することをおすすめします。
 
もし今年度枠で申請する場合、厳しい審査による却下を回避するため、次のポイントに留意するようおすすめします。まず、アメリカでの就労(H-1B)ビザ取得には、大きく3つの条件があります。
①学士号以上、あるいはそれに匹敵する経験を保持している
②当該業種においては、通常、学士号以上の知識が要求され、その職務は学士号以上を保持する者でないと遂行できないほど、専門的、複雑かつ特殊である
③当該学士号、あるいは経験が、職務に活かされるものである
極めて単純に言えば、この条件のすべてを満たせば申請は認可され、1点でも欠けていれば、却下されるということになります。これは、H-1Bビザの申請に限ったことではないのですが、移民局が申請を却下する理由として用いられる内容には、時期により傾向があります。
 
今までのデータによると、移民局が申請を却下する主な理由は、前記の②の条件を満たしていないというのが極めて頻繁です(もちろん、すべてがそうだとは限りませんが)。仮に申請者が4年制大学を卒業していた(①)としても、従事する職務が一般的に4年制大学を出ていないとできない(②)ということの立証を、十分にできていないために却下されてしまっているということです。従って、前記の②の条件の充足に十分注意して申請を行ってください。なお、この条件充足のための立証方法は、ビザスポンサーとなる企業の業種、職務内容等によって大きく異なります。ですから、移民法専門の弁護士と、申請前に十分相談されるようおすすめします。
 
(2011年12月1日号掲載)

今年度の就労(H-1B)ビザ、これからでもまだ間に合う?

瀧 恵之 弁護士

Q:アメリカの大学を卒業後、OPT(Optional Practical Training)で就職活動を続けていました。この度、ようやくH-1Bビザのスポンサーをしてくれる就職先が決まりした。H-1Bビザ申請開始日の4月1日を過ぎてしまいましたが、まだ申請できるのでしょうか?

A:2010年4月8日付けで、移民局は今年度の就労(H-1B)ビザの受付状況について発表を行いました。この時点で6万5000 件の申請枠に対し、約1万3500 件の申請を受け付けています。また、アメリカの大学の修士号保持者向けの2万件の特別枠に対しては、5600 件の申請がなされました。
 
ちなみに2009年4月9日には、一般の申請枠に約4万2000 件、修士号の特別枠には約2万件の申請がありました。3年前の2007年は、4月1日に受け付けが始まり、2日間で締め切られ、約半数の申請者が抽選漏れするという事態が起きました。また、2年前の2008年も、最初の5営業日で受け付けが締め切られ、6割以上の申請者が抽選漏れしました。
 
ところが昨年は、最初の段階での抽選は行われず、さらに申請数が激減した今年は、申請枠の約22.5%に過ぎない数の申請しか行われていません。従って、移民局は引き続き申請を受け付けています。
 
ところで、H-1B とは「専門職ビザ」と呼ばれるビザです。移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、そして実質的な適用・応用を要求される職種です。それは例えば、建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野です。また、それらの職種に就くのに、アメリカにおいて学士号、あるいはそれ以上の学歴、またはそれに値する経験が必要とされています。
 
具体的な職種としては、会計士、経営コンサルタント、教師、コンピューター・エンジニア、建築家、翻訳家などがあります。これらの職を遂行するにあたって必要とされる学歴、あるいは職歴を申請者が保持し、スポンサーとなる会社でその職種が必要とされていれば、H-1Bビザの申請条件を満たします。
 
H-1Bビザは、有効期間内の期限延長、雇用主の変更が認められていますが、最長有効期限は6年です。

移民局での認可が得られても大使館で却下のケースも

今年度の申請数の激減は、アメリカ経済の不況や、一昨年までの抽選漏れの影響を大きく反映しています。また、昨年就労ビザの審査が非常に厳しく、却下となったケースが多発したため、今年度、企業がH-1Bビザ申請対象者の採用を控える傾向にあることも影響していると言えます。企業としては、OPT の期間中に投資をして従業員トレーニングを行ったにもかかわらず、H-1Bビザを取得できなかったために、せっかく訓練した従業員を手放さなければならない事態を避けたいという考えだと思います。また、昨年秋頃から始まった「Site Inspection(実地監査)」も、企業側のH-1Bビザ申請対象者の採用を控える原因になっていると言えます。
 
H-1Bビザの申請は、今からでもまだ間に合うと言えますが、現時点でH-1Bビザが取得できると決まったわけではなく、今後の移民局の審査によります。
 
アメリカの経済不況が厳しくなるにつれ、アメリカ人労働者の保護といった観点からも、移民局での審査が非常に厳しくなる傾向にあります。現時点では確かではありませんが、今年度のH-1Bビザ申請においても抽選は行われない(定数に達した日に受け付けた申請に関しては、当日受付分の中で抽選は行われます)ものの、申請書類の審査は、昨年同様厳しくなされることが十分に予想されます。
 
審査の過程ですが、不認可のケースでも移民局から最初から却下の通知が来ることは珍しく、RFE(Request for Additional Evidence)と呼ばれる追加書類の提出が求められることが一般的です。このRFEで十分な回答がなされないと、却下につながる可能性があります。従って、RFEを受け取った場合、十分な追加証拠書類の提出を行うことが、就労ビザ取得の重要な鍵であると言えます。
 
また、昨年から移民局の審査で仮に認可を得ることができても、その後、在日アメリカ大使館/領事館での面接で却下されるケースが多発しています。ですから、移民局で認可を得ても、面接に際して十分な準備を行うことです。そして、出入国の必要性がさほどなければ、アメリカ国内でグリーンカードの申請を行い、その過程で出入国許可が下りるまで、日本へは行かないようにするというのも得策かもしれません。
 
(2010年5月1日号掲載)

2010年度の就労(H-1B)ビザ申請、申請者数と却下数の実情

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、この春、アメリカの大学を卒業しました。OPT の申請も行っていますが、その後のことも考え、H-1Bビザの申請も考えています。今年はビザ発給数枠に達しなかったので、抽選が行われなかったと聞きました。今から申請しても、まだ間に合うのでしょうか? また、仮に申請できるとすれば、注意すべきことはありますか。

A:就労(H-1B)ビザは、移民局の会計年度(10月に始まり9月に終わります)の間の発行数が6万5000に限られており、アメリカで修士号を取得している申請者には、これ以外に2万の枠が設定されています。
 
2008年度(2007年10月~08年9月)、および09年度(2008年10月~2009年9月)には、申請者が発給規定枠を遥かに超えてしまったため、抽選が行われました。しかし、今年、2010年度(2009年10月~2010年9月)は、不況と抽選を恐れた企業側がH-1B 対象者の雇用を控えた経緯もあり、申請者数が激減し、抽選が行われませんでした。結果、今でも受け付けが行われています(2009年7月20日現在)。
 
具体的には、移民局の発表によると、6万5000 の枠に対して、
2009年4月17日 約4万3000
4月20日 約4万4000
4月27日 約4万5000
5月18日 約4万5500
5月22日 約4万5700
5月29日 約4万5800
6月5日 約4万4400
6月19日 約4万4500
6月26日 約4万4800
7月3日 約4万5000
7月10日 約4万4900
の申請を受け付けたとされています。
 
ここで不思議に思われる方も多いと思います。5月22日時点で4万5700であったのが、後の7月10日時点で4万4900 という具合に、受け付けられた数が減っているということです。これは、移民局が正確な数を把握することが困難であるということもありますが、審査過程で相当数の申請が却下されているということを示していると言えます。修士号保持者に関しては、4月当初から常に2万件の受け付けを行っているものの、すべての申請者が認可されるわけではないので、今でも受け付けを継続しています(2009年7月20日現在)。
 
これを簡単に分析すると、6万5000の枠に関しては、審査の結果が出始めた5月後半から7月にかけて、新たに申請を行う申請者数よりも、却下される申請者数が上回っており、また、2万の修士号の枠に関しては、新たに申請を行う申請者数と却下される申請者数がほぼ均衡していると言えます。すなわち、今年のH-1Bビザの申請においては、抽選によって審査を受けることなく却下される事態はなかったものの、審査の後、相当数の申請が却下されているという、今までになかった傾向を示しています。

移民局の申請却下に対する傾向と対策

では、この却下を回避するには、どのような方法が考えられるか、簡単に述べさせていただきます。
 
H-1Bビザを取得するには、大きく3つの条件があります。
 
①学士号以上、あるいは、それに匹敵する経験を保持している
②申請する業種において、通常、学士号以上の取得が要求されており、その職務は、学士号以上を保持する者でないと遂行できない程、専門的、複雑かつ特殊である
③当該学士号、あるいは経験が、職務において活かされるものである
 
極めて単純に言えば、この条件のすべてを満たせば申請は認可され、1つでも欠けていれば、却下されるということになります。
 
これは、H-1Bビザの申請に限ったことではないのですが、移民局が申請を却下する理由として用いられる内容には、その時期によりクセ(傾向)があります。今までのデータによると、今年、移民局が却下を行う主な理由(もちろん、すべてがそうだというわけではありません)は、前記の②の条件を満たしていないというのが、極めて頻繁だと思われます。仮に4年制大学を卒業していたとしても、従事する職務が一般的に4年制大学を卒業していないとできない職務であるという立証が十分にできないと、却下されてしまっているということです。
 
まだH-1Bビザの申請を行うチャンスはあると思いますが、却下されてしまっては、申請した意味を成さなくなってしまいます。従って、前記の②の条件の充足に十分注意して申請を行うことをおすすめします。この条件充足のための立証方法は、スポンサーとなる会社の業種、職務内容等によって大きく異なるため、専門の弁護士とよく相談することをおすすめします。
 
(2009年8月1日号掲載)

2009年の就労(H-1B)ビザ申請近況報告

瀧 恵之 弁護士

Q:私は、現在OPT(OptionalPractical Training)で仕事をしており、今年の4月1日にH-1Bビザの申請を行いました。今年は申請者が少なく、申請は抽選にならなかったと聞きました。ということは、私はH-1Bビザを取得できるということでしょうか?

A:2009年4月9日に移民局は、この時点で6万5000件の就労(H-1B)ビザ申請枠に対して、約4万2000 件の申請を受け付けたと発表しました。アメリカで修士号を持っている人に、2万の特別受付枠がありますが、これに対しては、同数の約2万件の申請受け付けが行われました。
 
従って、6万5000 の受付枠に対して、移民局は現在(4月14日現在)以降も申請を受理し続け、修士号の2万件の枠に対しても、過去の例から見て、すべての申請が認可されるわけではないので、申請の受理を移民局は続けることになります。また、「Premium Processing」(通常の申請料に加えて1000ドル余分に移民局に支払うことにより、審査結果を15日以内に受け取るシステム)にて申請した場合は、4月9日から数えて15日以内に結果が知らされることになります。
 
まず、H-1Bビザそのものの説明をします。
H-1Bビザは「専門職ビザ」と言われるものです。移民法上の解釈における「専門職」とは、高度で特別な知識の理論的、そして実質的な適用・応用を要求される職種です。それは例えば、建築、エンジニアリング、数学、物理学、社会学、医療関係、ビジネス関係、会計、法律、技術などの分野であり、またその職種に就くには、アメリカにおいて通常、学士号あるいはそれ以上の学歴、またはそれに値する経験が必要とされる職種を指します。
 
具体的な職種としては、会計士、経営コンサルタント、教師、コンピューター・エンジニア、建築家、翻訳家などがあります。これらの職の遂行にあたって必要とされる学歴、あるいは職歴(コンピューター・エンジニアであれば、コンピューター・サイエンス)を保持し、スポンサーとなる会社でその職種が必要とされていれば、H-1Bビザの申請条件を満たします。
 
H-1Bビザは、期間の延長だけでなく、雇用主の変更も認められていますが、有効期間は最高6年までに限られます。

アメリカ経済の不況の波がH-1Bビザ申請にも影響か?

2年前の2007年4月1日から受け付けが始まったH-1Bビザの申請では、最初の2日間で受け付けが締め切られ、約半数の申請者が抽選漏れするという事態が起こりました。昨年4月1日から受け付けが始まった申請でも、最初の5営業日で受け付けが締め切られ、約6割以上の申請者が抽選漏れしました。
 
ところが、2009年年の申請で、最初の5営業日を過ぎても定員に達していないのは、アメリカの不況が大きく反映していると言えます。興味深いのは、学士号(あるいはそれに相当する経験)保持者の枠で、約2万3000の余りが出たのに対し、修士号の2万の枠は(その後、申請を受け付けたものの)埋まってしまい、この枠に関しては、昨年とほぼ同様であるということです。つまり、会社において即戦力となりやすい修士号保持者の就職は、昨年同様であったにも関わらず、就職後も会社内においてトレーニングを必要としがちな学士号保持者の採用は、大きく狭まったと言えるのかも知れません。今年は幸いなことに、抽選漏れでH-1Bビザを取得できないということはありません。ただし、現時点でH-1Bビザが取得できると決まったわけではなく、今後の移民局の審査によります。昨年の後半から、アメリカ経済の不況が厳しくなるにつれ、アメリカ人労働者の保護といった観点もからみ、移民局での審査が厳しくなる傾向にあります。
 
今年のH-1Bビザの審査においても、もちろん現時点では確かでないかもしれませんが、抽選はない(定員に達した最終日に受け付けた申請に関しては、その日に受け付けた申請書の中での抽選は行われます)ものの、その後の審査において厳しく見られることも十分予想されます。
 
審査の手順として、認可されないケースに関しては、移民局から最初から却下の通知が来ることは珍しく、RFE(Request for Additional Evidence)と呼ばれる追加書類の提出が求められることが一般的です。このRFE で十分な回答がなされないと、却下につながる可能性があります。従って、RFEを受け取った場合には十分な証拠書類の提出を行うことが、H-1Bビザ取得の重要な鍵であると言えます。
 
(2009年5月1日号掲載)






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