アメリカの学校適応を促すには

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「バイリンガル子育ての秘訣」船津 徹(TLC for Kids代表)

学齢期の子どもを連れてアメリカに移り住むことになった場合、最初に配慮すべきが子どもの学校適応です。ある日突然、自分の意思とは無関係に、言葉も文化も異なるアメリカの学校に放り込まれ「英語で」授業を受けなければならない子どもは、両親が想像する以上につらい思いを経験します。
先生が何を言っているのか分からず、クラスメートとコミュニケーションがとれず、自分がどう行動すべきなのか分からず、右も左も分からないことだらけで、精神が疲れ果ててしまうのです。それでも何とか授業についていこうと必死で先生の言葉に集中しますが、早口の英語は頭の中をただ通り抜けていくだけです。
日本で優秀だった子ほど現地校で大きなギャップを経験します。「勉強ができるね、頭がいいね」と周囲から言われて育った子が、アメリカでは全く授業についていけないのです。急に自分が何もできない、ダメな人間になったような気持ちになり、がっくりと落ち込みます。日本では明るく元気だった子どもが現地校に入った途端、ふさぎ込んでしまうことはよくあります。

学習英語力と英会話力

子どもの学校適応を促すには「学習英語力」を集中的に指導する必要があります。学習英語力とは学校の主要教科で必要とされる英語力。簡単に言えば英語の「読み書きの力」です。英語の教科書が読めて、英語で文章が書けるようにならなければ、学校の授業についていくことも宿題をこなすこともできません。日本人両親の多くは「英語力=英語を話す力」だと思っています。しかし現地校に通う子どもにとって重要なのは「読み書きの力」です。アメリカの学校はリーディングとライティングを重視しますからなおさらです。小学校低学年では、毎日大量の本読みの宿題が出ます。小学校高学年からは、全教科において「作文/エッセイ」を書く技術が要求されます。
現地校で良い成績を取るには「読み書きの力」を向上させることが近道です。基本的な読み書きが身に付けば、教科書を頼りに授業内容の理解を深め、宿題や課題も自分の力でこなせるようになります。成績が上がれば「自分はアメリカでもやっていける!」と自信が回復し、学校適応が促進されるのです。
英会話は教えなくても現地校に通っていれば自然に身に付きます。一般的に現地校に通い始めて半年くらいは、発音や文法ミスを恐れるので、英語をあまり話したがらない傾向があります。どうしても会話力に不安がある場合は、日本人が少ない習い事に参加させて、学校以外でも英語に触れる機会を増やしてください。

サポートを与え安心させる

子どもの学校適応は学年が低いほどスムーズに進みます。しかし、年齢にかかわらず、どの子も大きなストレスを経験することを知ってください。どんなにつらくても両親に心配をかけないように、子どもなりに精一杯努力しているのです。両親はそんな健気な気持ちを受け入れると同時に、学習のサポートを与えて子どもを安心させてあげてください。
現地校に通い始めた子どもは、必ず初歩の英語力獲得で苦労します。問題を先延ばしにせず、速やかに英語のサポートを強化してください。両親が英語力に自信がない場合は、ESL(英語を第2言語で学ぶ人)指導に特化した塾やチューターで「読み書きの力」を重点指導してもらってください。
読み書きを身に付けるまでの期間が長くなるほど、子どもは「自信」を大きく喪失していきます。一般的に学習英語力を身につけるには5~7年必要と言われていますが、「読み書きの力」を集中指導することによって、そのプロセスを大きく短縮することができます。

学校任せにしてはいけない

子どもの英語力の発達を学校任せ(ELL任せ)にしてはいけません。必ず家庭でもサポートを与えてください。学校と家庭は車の両輪のような関係です。片輪だけをせっせと回しても、車はまっすぐに進むことができません。学校と家庭が協力して、同時に両輪を回転させることで、目標に向かって進むことができるのです。
英語が苦手という多くの両親にとって、アメリカ人の先生とコミュニケーションをとることは勇気がいります。でも子どものためだと思えば、できないことはないはずです。クラス担任およびELL担任とコミュニケーションを密にして、子どもが何を勉強していて、家庭でどのようなサポートを与えるべきなのかを、しっかりと把握してください。
 
(2015年9月1日号掲載)

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