子どもの英語力には「生活英語力」と「学習英語力」があります。「生活英語力」は社会生活で必要な英会話力。「学習英語力」は現地校の授業で要求される読解力・論理的思考力・ライティング力など高度の認知や思考を伴う英語力です。バイリンガル子育てではこの2つを区別し、それぞれの発達に必要な教育や環境を与えることが大切です。
「生活英語力」は日常生活の中で獲得していく力で、現地校(完全英語環境)に2、3年通えば誰でも身に付けることができます。生活英語力は社交的な子ほど短期間で身に付きますから、家庭ではソーシャルスキルの形成を重視した子育てを心がけましょう。また、スポーツや音楽などの課外活動に通わせることも生活英語力の発達を促してくれます。
一方、「学習英語力」はどれだけ英語環境に浸っても自然に身に付くことはありません。学校の指導、両親のサポート、そして子ども自身がコツコツと努力を重ねることで習得していく力です。子どもの学習英語力が学年相当レベルに達するには、母国語が育っている子で5〜7年、母国語が弱い子では7~10年かかると言われています。
英語の読み書きは難しい
「学習英語力」を支えているのは英語の「読み書きの力」です。アメリカでは小学校に上がる1年前、キンダーガーテンで英語の読み書きを習います。キンダーガーテンは小学校の教科学習に適応するための準備学年、言い換えれば学習英語力の土台を築く学年。現地校に通う子どもは、キンダーガーテンの1年間(正味9カ月間)で基本的な読み書き力を身に付けなければなりません。
もちろん、日本人の子も現地の子と同じように読み書きを習います。しかし、日本人の子どもが、たった9カ月間で十分な読み書き力を身に付けられるケースは稀です。というのも、英語の読み書き指導法として一般的な「フォニックス」はルールが複雑で例外が多く、4〜5歳の子どもが(理屈中心の授業で)習熟することは大変難しいのです。
フォニックスは英語ネイティブ向けの文字指導法であり、学習者が英語の音や文字に親しんでいることが前提です。例えば、フォニックスでは「cat」を「c/ク」「a/ア」「t/ト」と分解して教えますが、このルールを理解するには単語の最初の音(ク)と終わりの音(アット)を聞き分けられる英語力と、アルファベットに対する予備知識が必要です。
家庭でのサポートが重要
英語であれ日本語であれ、子どもが読み書き力を身に付けるときは、学校に加え、家庭でもできるだけ多くの文字に触れなければなりません。絵本を読み聞かせたり、文字カードや文字ブロックで遊んだり、言葉遊びをしたり、ワークブックに取り組んだりという両親のサポートによって子どもは読み書きの力を発達さることができるのです。
日本人父兄の多くは、英語の文字指導についての知識がないため、家庭で読み書きをサポートすることができません。また、多くの父兄が「自分が英語下手だから」と、英語を教えることをためらってしまいます。ただでさえフォニックスは難しいのです。その上、家庭でのサポートがなければ、子どもはいつまで経っても読み書きを定着させることができません。
子どもが現地校に通っているのであれば、両親が間違った発音で英語を教えても心配はいりません。子どもは毎日学校で正しい英語を聞いていますから、発音の違いを区別できます。ですから安心して家庭でも読み書きをサポートしてあげてください。
どの家庭でもできる文字教育
子どもの目に入る場所(トイレなど)にアルファベットチャートやフォニックスチャートを貼りましょう。子どもは無意識に目に入るものを反復学習します。また、市販のフォニックスワークブックを購入して毎日取り組むことを日課としてください。ワークブックをするときは、必ず両親が一緒についてあげること。分からない時は、すぐに答えを教えてあげてください。
最近は、スマートフォン、タブレット、コンピューターなどで使えるフォニックスソフトがたくさんあります。これらを活用しない手はありません。ゲームはダメと、頭ごなしに否定するのでなく、子どもの学習に役立つものはどんどん取り入れましょう。学習英語力の獲得プロセスは子どもの学校適応と学力を左右する極めて重要なポイントです。