ソーシャルスキルを育てる

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「バイリンガル子育ての秘訣」船津 徹(TLC for Kids代表)

アメリカの子育てで留意すべき点に「ソーシャルスキル」があります。これは集団や社会で周りの人たちと良い人間関係を形成していく力のことです。バイリンガルの子どもが、学校に通い、さらに社会に出て行く過程で、ソーシャルスキルは、環境適応を促進し、アメリカの生活をより楽しく、快適にしてくれる役割を持ちます。
ソーシャルスキルには、礼儀作法、コミュニケーションスキル、シンキングスキル、問題解決スキル、自己表現スキルなど、対人関係に関わる全ての技術が含まれ、子どもの成長に応じて家庭や学校で指導されます。多様な文化と価値観が共存するアメリカでは、人間関係を円滑にするための技術として、誰もがソーシャルスキルを身に付けておくことが求められます。

対人関係の土台は親子関係

ソーシャルスキルは「技術」なのですが、それを支えているのは性格と人柄です。子どもが素直で、思いやりがあれば、ソーシャルスキルは簡単に身に付きます。一方、強情で、自分勝手だと、対人関係の技術を身に付け、良い人間関係を築いていくことは難しくなります。
子どもの性格や人柄の方向性を決めるのは親子関係です。中でも、一緒に過ごす時間が長いお母さんの影響が一番強いことを知りましょう。「自分はお母さんから愛され受け入れられている」と子どもが100%実感できると、母子の信頼関係が成立します。すると、その信頼感が心の土台となって、周囲の人にも思いやりと信頼感を持って接する人柄に育ちます。
反対に、お母さんがいつも不機嫌でガミガミ怒っていると「自分はお母さんに受け入れられていない」という不安感が潜在して、周囲の人にも不信感を持つようになります。この乳幼児期に成立する心の土台の違いが、外交的・内向的、明るい・暗い、素直・頑固、人懐こい・人見知り、という性格や人柄の違いへと発展していくのです。
もちろん、友だち作りや人付き合いが苦手なお母さんもいるでしょう。しかし、だからといって子どもも似ていて当たり前ということではありません。子どもの対人関係は、親から遺伝するものではなく、母子関係から育まれる「信頼感」や「安心感」によって方向性が作られることを忘れないでください。

ソーシャルスキルを高めるには

子どものソーシャルスキルを高める簡単な方法は、スキンシップを増やすことです。子どもが朝目覚めたとき「○○ちゃん、おはよう」と言って抱きしめ、ほおずりをします。簡単なお手伝いを頼み、できたら「ありがとう、○○ちゃんが手伝ってくれて助かったわ」と言って抱きしめます。お母さんが意識してスキンシップを増やすことによって、子どもの安心感と信頼感は大きくなり、家族以外の人とも積極的に関われるようになっていきます。
コツは言葉だけでなく、必ずスキンシップを加えること。欧米ではスキンシップは信頼感を確認するための常識的なマナーですが、日本人にはちょっと照れくさいですね。でも、愛される人柄作りのためですから、恥ずかしがらずにどんどん実践してください。スキンシップは子どもの年齢にかかわらず「親から愛され大切にされている実感」を高める効果があります。

人付き合いのルールを教える

友だちが作れない、極端な引っ込み思案、極端に攻撃的など、人付き合いが苦手な子どもを「持って生まれた性格だから」と放っておいてはいけません。繰り返しますが、子どもの対人関係は改善できるのです。まずは母子の信頼関係を大きくすることから始めましょう。
また、ソーシャルスキルの基本を教えてあげてください。笑顔で挨拶する、相手の目を見て話す、人の話をしっかり聞く、感謝の意を伝える、相手の気持ちになる、丁寧な言葉使いをする、自分の感情をコントロールする、どれも当たり前のルールですが、きちんとできない子どもが多いのです。人と関わる基本的なルールを学ぶだけで、子どもの対人関係は目に見えて良好になります。
町中で見知らぬ人と目が合ったときに無愛想だった子どもが、ニッコリ微笑んで挨拶できるようになれば、周囲の人の対応はガラリと変わります。人付き合いのルールを実践すると、何よりも自分自身が楽しく、明るい気持ちになることを理解させましょう。母子の信頼関係作りと対人関係のルール、これがソーシャルスキルを育てるポイントです。
 
(2014年9月1日号掲載)

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