まずはじめに、日本とアメリカの教育制度の違いを理解する必要があります。アメリカの学校では学年のことをグレードと呼び、日本の小学校1年~高校3年にあたる12年間が、グレード1~12に相当します。一般的には、グレード9~12の4年間を高校(high school)とします。さらに各グレードには別称があり、グレード9を「フレッシュマン」、10を「ソフォモア」、11を「ジュニア」、12を「シニア」と呼びます。
関連:アメリカ生活大事典「アメリカの学校・教育制度」
関連:アメリカでの教育「アメリカでの高校生活の悩み」
日本と異なり、高校まで義務教育のアメリカでは「高校受験」というものはなく、居住している学校区の高校に通います。通学していれば自動的に卒業できるわけではなく、必須科目の取得、必要な取得単位数を満たす、卒業試験に合格するなどにより卒業資格が与えられます。以下、アメリカの高校での科目選択や取得単位、卒業試験や繰り上げ卒業などについて解説します。
- Q. アメリカの高校の科目選択、注意すべき点を教えてください
- Q. アメリカの高校の卒業単位取得に必要な成績を教えてください
- Q. アメリカにはインターネットの高校がある?海外子女にどんなメリットが?
- Q. 1年下げてアメリカの現地校に入学した娘。高校を繰り上げ卒業したい
- Q. アメリカの公立高校卒業に必要なハイスクール・イグジット・イグザムって?
Q. アメリカの高校の科目選択、注意すべき点を教えてください
アメリカの高校に通うお子さんを持つお母さんから、アメリカでは自分で選ぶ科目がとても多くて、科目登録の際は大変だと聞いています。実際の科目の内容と、科目選択の際、注意すべき点がありましたら教えてください。
A. 自由度も自己責任度も高いアメリカ。高校の科目選択は、大学出願条件を考慮して選んで
日本の高校制度
日本の高校は、普通・工業・農業・商業・漁業などの種類があります。その中で生徒数の最も多い普通高校は、入学試験で比較的アカデミックな能力のそろった生徒を集めています。一方、アメリカの高校は、義務教育の最終段階なので、当然入学試験もなく、地域の高校学齢期の若者を全員集めて教育を行っています。
この制度の違いによる、高校での教育のあり方は大きく異なります。多様性に富んだ生徒を集めたアメリカの高校では、生徒が選択可能な科目は英語・数学などのアカデミックな主要科目から、自動車整備・製図などの実務科目まで、さまざまな内容に分かれます。さらに主要科目は、ESL・レギュラー・オナーズ・APなどの習熟度別クラスに分けられており、生徒は自分の希望と習熟度に応じてクラスを選ばなければなりません。
アメリカの高校制度
アメリカの高校での科目選択を複雑にしている別の理由に、授業の形式があります。必修科目の単位や総取得単位数で高校卒業が決まる「単位制」を採用しているのはどちらも同じです。しかし、日本は「学年制」や「学級制」も取り入れたクラス編成を特徴としており、学年や学級単位でのクラスでの受講が中心です。最近は選択科目も増えてきていますが、学年ごとにクラスが分かれるのが普通で、自由に選べる科目はそんなに多くありません。また、普通高校は大学進学が主たる目的の学校ですから、主要科目の学習が中心で、実務的な科目はほとんどありません。
一方、アメリカの高校では、はっきりした「学年」や「学級」の壁はなく、クラスによっては9年生と12年生が隣に並んで授業を受けます。もちろん、学習内容を考慮した、主要科目における各学年での配当科目はありますが、必ずしも従う必要はありません。さらに、前に受講したクラスで不可になった場合は再履修の必要も出てきます。「高校在籍中に所定の科目の単位を取得すれば、高校卒業の資格が与えられる」という仕組みが、しっかり守られています。
「アメリカの高校は、科目選択が大変」と思われる最も大きな理由に、日米の高校の制度的な違いがあります。
アメリカの高校の受講科目の選択
実際の受講科目の選択にあたっては、「高校卒業要件」と「大学出願条件」を考える必要があります。
アメリカの高校卒業要件
各学校区(School District)では、高校卒業要件のひとつとして、「必修科目とその単位数」「合計単位数」を決めています。クラスを履修する順序や、どの学年で受講するかといった詳細は、学校が発行している「Student Hand Book」や学校のホームページで確認してください。
※アメリカの高校卒業の科目指定(例)は本ページ下表を参照ください
アメリカの大学の出願条件
さらに、アメリカの4年制大学に進学を希望するならば、希望する大学や大学システムの出願要件を満たす科目を受講し、単位を取得する必要があります。一般に、大学が要求する条件は、高校卒業の条件よりも、受講科目や単位数が厳しくなっているのが一般的です。また、カリフォルニア州の2つの州立大学システム、カリフォルニア州立大学(California State University、Cal StateまたはCSUと呼ばれる)とカリフォルニア大学(University of California、UCと呼ばれる)では、要件が少し異なります。詳細は卒業要件同様、資料をご覧ください。
また、州立や私立の有名大学に進学したい場合は、受講する科目や単位数だけではなく、オナーズやAPなどのクラスを何科目受講したか、それらの成績はどうだったかなど、よりレベルの高い学習を要求します。そのため、9年生からスケジュールを考えて、クラスを受講する必要があります。
高校の科目選択の問題も、ひと言で言うと、「日本の高校に比べ、アメリカの高校では科目の選択の自由が与えられている代わりに、生徒自身の自己責任が大きい」ということです。
(2006年3月1日号掲載)
Q. アメリカの高校の卒業単位取得に必要な成績を教えてください
現在11年生の息子がいます。もうすぐ、セメスターが終わりますが、2科目の成績が「F」になりそうです。このままでは、高校が卒業できるかどうか心配です。
A. 各教科で合格点以上の成績を取れば、各科目の単位が与えられます。
アメリカの高校卒業要件
まず、アメリカの高校を卒業するための一般的な条件を確認しましょう。
●高校卒業試験
カリフォルニア州では、2006年の卒業生から卒業試験合格が、卒業資格取得の条件になりました。試験は、英語(English Language Arts)と数学(Mathematics)に分かれ、各セクションで合否が決定します。受験は、10年生で1回、11年生で2回、12年生で3回のチャンスが与えられます。
●取得単位数
学校区(school district)により、卒業に必要な取得単位数が決められています。1科目を1学期(セメスター)間に受講し合格した場合に、5単位が与えられます。1年は、1学期(秋学期、9月~1月)、2学期(春学期、2月~6月)、サマースクールに分かれていて、各学期に単位の取得が可能です。8年生終了後のサマースクールから12年生の2学期の間に取得した単位が、高校卒業に必要な単位として認められます。
●科目指定
卒業に必要な受講科目(必修科目)と単位数が、学校区で決まっています。これらは必修なので、卒業のために必ず履修し合格しなければなりません。この必修科目に加えて、学校区で決められた取得単位数に達するまで、選択科目を受講・合格する必要があります。科目指定は、下の表にて確認ください。
アメリカの高校卒業の科目指定(例)
科目 | 単位 |
英語 | 40 |
数学 | 20 |
理科 | 20 |
生物 | 10 |
物理・化学 | 10 |
社会 | 30 |
世界史・地理 | 10 |
米国史 | 10 |
米国の政治 | 5 |
米国の経済 | 5 |
体育 | 20 |
美術/外国語 | 20 |
保健 | 5 |
合計単位数 | 225単位 |
ここで紹介した高校卒業要件は、卒業試験のように州で統一されたものもありますが、詳細は学校区によって異なります。例えば、トーランス学校区では220単位取得で卒業できますが、パロスバーデス学校区では225単位が必要です。学校区独自の条件を追加している場合もあります。詳細は、学校が発行する「Student Hand Book」やホームページで確認できます。
単位取得について
1. 単位制
アメリカの高校は「単位制」を採用しています。上に示した卒業要件を満たす単位が取れれば、高校の在籍期間が4年(9~12年生)より短くても、高校卒業資格が取得でき、卒業証書(diploma)がもらえます。日本人生徒によく見られる繰り上げ卒業(早卒)は、この制度をフルに活用したものです。
単位制の質問に「単位取得に必要な成績は?」というものがあります。各教科で合格点(passing grade)以上の成績を取れば、単位が与えられます。普通の科目では「D」、一部の科目では「Pass」が最低の成績です。学校区によっては、卒業に必要な最低の成績平均点(GPA: Grade Point Average)を決めています。
2. 再履修
悪い成績を取ってしまった科目をもう1度受けて、良い成績に書き換えたい」という再履修の希望については、学校区ごとに再受講できる「最初の成績」や科目が決められています。これは、大学出願時の成績に関連します。
アメリカの大学の場合は、GPAや受講科目の内容を詳細に評価しますので、再履修で大きな差が出る場合もあります。日本の大学の場合は面接試験で質問される程度なので、取得単位よりも卒業の方が重要になります。いずれにせよ、しっかり勉強して、良い成績を取るに越したことはありません。日本の学校制度とは異なるアメリカの高校の卒業要件については、さまざまな質問を多くお聞きします。ご質問をお持ちの方は、ご連絡ください。
※用語の訳
High School Graduation Requirements(高校卒業要件)
California High School Exit Examination(CHSEE)(卒業試験)
Subject Requirements(科目指定)
※学校区ホームページ
トーランス学校区(http://www.tusd.org/)
パロスバーデス学校区(http://www.pvpusd.k12.ca.us/)
(2008年1月16日号掲載)
Q. アメリカにはインターネットの高校がある?海外子女にどんなメリットが?
A. オンラインと通信制の高校は海外・帰国生の新たな選択肢です
オンライン・ハイスクール
アメリカで、オンラインのハイスクールで学ぶ高校生が急激に増えてきています。
インターネットの発達と通信環境の向上を背景に、動画や双方向の通信をフル活用した、インターネット上のオンライン形式授業が、容易に受けられるようになり、アメリカ全土で急激な広がりを見せるようになりました。
オンライン・ハイスクールでは、それぞれの学校が要求する受講科目で単位を習得し、要件を満たせば、高校卒業資格を取得し、大学へ進学することができます。
多くは私立(有料)ですが、最近、地域住民のために学校区やNPOが運営する公立校(無料)も増えています。
通信制高校
日本には、教育の多様化を目指した、文部科学省が近年設立を認めた新タイプの高校、通信制高校があります。
新入学だけでなく在学中の途中編入も可能で、入学資格は学校により異なります。資格の一つとして、一定の地域の生徒だけを受け入れる学校から、どこに住んでいても(外国でも)入学・卒業が可能な学校もあります。
通信制高校は、学校により形式、指導方法が大きく異なります。「通信制」では、その名前の通り、ほかのタイプの高校のように、全日制・定時制のような定期的な登校を前提としていません。しかし、「スクーリング」と呼ぶ、年1回1週間などと比較的短期間の通学を要求する学校もあります。その一方で、100%自宅学習で卒業できる学校もあります。
「通信」の方法も、郵便・放送・インターネットなどと、学校によってさまざまですが、最近は、通信環境の向上を活かして、動画での授業や、先生とのリアルタイムでの質疑応答など、その指導方法も多様になっています。
海外・帰国生のメリット
ここで紹介した新しいタイプの高校は、現在アメリカで学んでいる高校生、また、日本に帰国後の高校生に、新たな選択肢を提供します。
●高校生で日本から渡米した場合
単位数不足で現地高校が卒業できない時、オンラインで受講した科目・単位を現地高校に認めてもらい、卒業することが可能になる。ただし、現地高校の事前の許可が必要。
●現地の高校在学中に日本に帰国
帰国と同時に、現地高校からオンライン・ハイスクールに転校し、残りの単位を取得して、「現地高校」を卒業する。この卒業資格で帰国子女大学入試を受験したい場合にも、この方法が可能?(まだ誰もトライしていない?)
●日本帰国後、英語での勉強を続けたい
日本の公立高校(授業料無料)で日本語で学び、オンライン・ハイスクールで好きなクラスだけを英語で受講する。こうして英語力を伸ばしておけば、アメリカの大学に進学することも可能になる。
●日本に帰国するが、アメリカの大学に進学希望
オンライン・ハイスクールで「アメリカの高校」の卒業資格を取得し、アメリカの大学に出願する。この場合、日本の高校卒業資格は必要ない。
●日本帰国後の高校編入が大変
無理に普通の高校に入学・編入しないで、学校選択の一つとして、通信制の高校で学ぶ。
(2012年4月1日号掲載)
Q. 1年下げてアメリカの現地校に入学した娘。高校を繰り上げ卒業したい
4年前に渡米、娘は1年下げて現地校に入学しました。現在8年生、日本の大学進学を目指しており、できれば繰り上げ卒業をして、同じ年の幼馴染みたちと一緒に進学させたいと考えています。早卒で気をつけるべきことはありますか?
A. 必修科目の受講は特に注意が必要。サマースクールを活用しましょう
普通4年をかけて卒業する高校を、在籍期間3年や3年半で卒業することを「繰り上げ卒業」「早卒」「early graduation」などと呼びます。
繰り上げ卒業の理由
「家族の日本帰国」と「学年の遅れを取り戻す」の2つが、繰り上げ卒業を希望する理由として一般的です。駐在員である父親の日本への帰任予定時期までに高校を卒業できない生徒は、繰り上げ卒業をすることにより、家族揃って日本へ帰国することができます。高校生の単独残留のためのビザの取得が困難なこと、経済的な問題、家庭事情などが、その背景にあります。
渡米直後の現地校への編入時に、生年月日などの理由により、日本での学年より現地校の学年を落として入学する生徒がいます。この場合、3月に日本の高校卒業の年齢に達していても、現地校ではまだ12年生で卒業は6月。ほとんどの帰国子女受け入れ大学の帰国子女入試は秋から春にかけて実施され、入学は翌年の4月になります。そのため、半年遅れの高校生は、大学入学が日本の同級生より1年遅れになります。ご相談のケースのように、この遅れを取り戻すために、繰り上げ卒業を希望する生徒がいます。
アメリカの高校卒業には何が必要?
アメリカの高校は、すべて単位制システムを採用しています。一般的に、学校区(school district)によって決められた次の条件を満たせば、「高校卒業資格」を取得できます。
●総単位数:
卒業までに取得しなければならない単位数。1授業時間の授業を1学期(約90回)受講し、必要な成績を修めれば5単位が与えられる。学校区により多少異なるが、卒業のためには220単位程度が必要
●必修科目:
受講科目の中に必ず含まれなければいけない科目と単位数の指定。例えば、4年間の英語、2年間の数学、2年間の体育、アメリカ史、アメリカ政治など
●学業成績:
受講した科目で得た成績の平均点(GPA)が2.0以上など、学業成績の最低点が定められている
●その他:
最近は、決められた時間数のボランティア活動などを、卒業の条件としている学校区もある
単位制では、年数に関係なく、これらの条件を満たせば卒業となります。例えば、3年間、早朝のクラスも受講して、1日7つの授業を受けると、合計で210単位取得できます。1回のサマースクール(10単位)を追加すれば、卒業のための総単位数を確保できることになります。
8年生修了後も含めて、サマースクール受講のチャンスも3回以上あります。必修科目の受講などの計画をしっかり立てれば、1年の繰り上げ卒業も、決して無理なことではありません。
普通、1学期ごとに単位が発行されますので、秋学期が終わる2月、春学期の終わる6月、サマースクールの7月と、年に3回卒業時期があります。繰り上げ卒業は1年間の繰り上げが一般的ですが、半年の繰り上げも可能です。
早卒は何が大変?
繰り上げ卒業のこれまでの例を振り返ると、必修科目の受講に注意が必要です。例えば、1年繰り上げすると、通常12年生で配当されている必修科目(英語や政治・経済)を、前倒しで受講する必要があります。通常4年間の英語が必修となっていますので、3年目と4年目に配当されている英語を11年生のうちに受講しなければなりません。さらに、政治・経済などの必修科目もあります。
これらが11年生に集中すると、成績も下がり、単位を取得できないこともあります。それを避けるために、サマースクールで事前に受講するなど、必修科目の負担が重ならないようにすることが必要です。
帰国子女大学入試
海外からの帰国生を対象とした大学入試は、単に「現地の高校卒業」を出願資格の1つとしていますので、繰り上げ卒業でも問題なく受験できます。現地校が半年早くて、かつ繰り上げ卒業をして大学に4月入学した場合、まだ17歳になります。日本国内の高校卒業では18歳が普通ですが、帰国子女に限り、国公立大学の一部を除いて、17歳で問題なく進学できます。
お子さんの在籍する学校や学校区のカウンセラーに、ここで紹介した卒業の条件や単位数の計算方法などのルール、また受講科目の選定や受講順序などを確認してください。その説明を聞き、繰り上げ卒業を決めたら、正式にカウンセラーへの届出が必要です。
繰り上げ卒業には、事前の計画と無理のない準備が重要です。
(2006年5月16日号掲載)
Q. アメリカの公立高校卒業に必要なハイスクール・イグジット・イグザムって?
2004年夏に渡米し、9月から公立高校の10年生に娘を入れた母親です。最近、「公立の高校は、ハイスクール・イグジット・イグザムがあるから卒業が大変よ」と言われて心配しています。この試験について教えてください。万一、卒業できない場合、どうしたらいいのでしょうか?
A. 卒業までに合格することが条件の英語と数学の試験
カリフォルニア州の高校卒業試験
この試験の正式名称は「California High School Exit Examination (CAHSEE)」です。日本語で「高校卒業試験」と呼びましょう。この試験はカリフォルニア州の法律で決められており、カリフォルニア州の公立高校の生徒全員に適用されているものです。公立高校の卒業資格を2006年6月以降に取得するためには、この試験に合格しなければならず、試験は英語(English-language Arts)と数学(Mathematics)に分かれ、それぞれ合格する必要があります。
英語のセクションは10年生までの学習内容をカバーし、読解(Reading and Decoding)と作文(Writing)に分かれ、選択問題と作文問題が課されます。数学セクションは、Algebra Iまでの数学のほとんどの分野から、選択形式の問題が出題されます。
10年生の春に1回目の試験が実施され、その後、12年生終了まで5回、受験の機会が与えられます。英語力の不十分な生徒(English learner)も他の生徒と同様に受験することになっています。
新たに加わった卒業の条件
これまで、カリフォルニア州の公立高校を卒業するためには、
①必要単位(必修・選択)の取得
②最低基準以上の成績(GPA)の取得
③決められた時間以上のボランティア活動(一部の学校区)
など、それぞれの学校区で決められた条件を満足すれば、卒業証書(Diploma)が発行されました。ところが、2006年6月以降に卒業する生徒(現在の11年生以下)には、高校卒業試験合格が新たな卒業条件として加えられることになります。
すでに2003年9月から、対象となる生徒(当時10年生)はこの試験を受験しています。150万人の高校生が受験した結果によれば、全体の約75%の生徒、English learnerの約40%が合格、アジア系生徒の85%が合格しています。
この結果は1回目だけのもので、不合格者は再受験の機会を与えられており、合格率はより高くなっていると思われますが、結果はまだ発表されていません。なお、この統計で言うEnglish learnerとは、法律上は「入学後1年以内」の生徒という定義になっています。
日本人生徒にとって、やはり難しい?
この試験の日本人生徒への影響に対する見方は、人によって大きく異なります。先述の試験結果を参考に、「2年位の高校在籍でも卒業できる」と判断する現地校の先生もいますし、「7年生以降ぐらいに渡米した場合、12年生終了までに合格するのは難しい」と話す、日本人生徒の実態に詳しい学校区の関係者もいます。ただ、どちらも「生徒の個人差」を強調します。生徒の能力と日々の努力で、合格に必要な年数が大きく異なるとのことです。
対策として私立への転校を考慮
公立の高校で卒業試験合格が困難ならば、卒業資格を取得する方法は「私立高校への転校」です。しかし、その私立学校も日本ほど学校数が多くありません。最近のアメリカ全体での私立校ブームでレベルの高い高校に入学すること自体が難しくなってきており、受験準備に最低2年くらいかかるのが現実です。英語力が不十分な日本人の高校生がいきなり編入することは、より困難です。
そんな日本人高校生にとって、現実的な選択肢は、日本語と英語のバイリンガル教育を行う私立高校です。東海岸には慶應義塾ニューヨーク学院(www.keio.edu)、西海岸にはロサンゼルス・インターナショナル・スクール(LAインター、www.LA-INTER.org)があります。
高校卒業試験の合格の可能性の判断は、お子さんの学習状況を把握することが前提となります。お子さんの学力、進路が心配な方は、どうぞご連絡、ご相談ください。
■出典: California Department of Education (http://www.cde.ca.gov/)
(2005年1月1日号掲載)