スポーツに取り組む高校生の中には、大学でも活動の継続を希望する学生が数多くいます。アメリカの大学は、アスリート学生をアドミッションで高く評価し、進学後も競技活動を続けられるように、積極的に支援しています。
NCAAの仕組み
大学スポーツを運営管理する最大の団体が、NCAA(全米大学体育協会)です。約1100の大学が所属し、46万人以上の学生がアスリートとして活動しています。NCAA以外の団体に所属する大学もあり、4年制大学の大半は何らかのスポーツチームを有しています。
NCAAは、右の表の通り、計24競技をサポートしています。NCAAはIからⅢのディビジョンに分かれ、一般的に規模が大きくスポーツに力を入れている大学がディビジョンI、小規模でアカデミック重視の大学がディビジョンⅢ、その中間がディビジョンⅡに属しています。競技のレベルはディビジョンIが最も高いですが、ディビジョンⅡやⅢでも競技によっては強いチームを持つ大学もあります。
ディビジョンIとⅡの大学ではアスリートのための奨学金制度(スポーツ奨学金)があります。ディビジョンⅢの大学にスポーツ奨学金はありませんが、メリット・スカラシップの中でアスリートとしての評価が加えられます。従って、どのディビジョンでもアスリートとしての能力が評価されれば、学費の軽減につながります。
スポーツに取り組む意義
アメリカの大学は、スポーツを続ける学生を高く評価します。学業とスポーツを両立させようと努力する学生は、人間として大きく成長できるということが理由のひとつです。チーム競技やリーダーシップの経験、両立のために習得した自律や時間管理などの能力は、社会に出てからも大いに役立ちます。したがって、学業とスポーツを両立させて努力した学生は、就職活動でも高く評価されます。
学生がアスリートとして活躍することは、大学にとっても大いにメリットがあります。例えば、2018年に男子バスケットボールでFinal Fourに進出したシカゴのロヨラ大学は、受験者数が急増し、卒業生からの寄付金も前年と比べて数倍に増えるなど、大学の価値が一気に高まりました。
リクルーティング対策
全米の高校でアスリートとして活動している800万人のうちNCAAのアスリートになれるのはわずか6%です。その6%に入るには、大学のコーチからリクルートされる必要があり、そのためには、自ら売り込まなければなりません。何もしなくても声がかかるのは、ごく一部のトップアスリートだけで、大半の学生は自らコーチに連絡を取ります。
大学からリクルートされるには、自分に合うチームの見極めが重要です。競技のレベルはディビジョンやチームにより大きく異なります。高いレベルでのプレーが目標ならディビジョンIの総合大学、学業を優先しながらスポーツに取り組みたい学生はディビジョンⅢのリベラルアーツ・カレッジというように、自分に合った大学を選んでコンタクトします。
どの大学のチームが自分に合うかの判断は難しいので、なるべく多くの大学に連絡を取りましょう。100校を目標に大学チームのヘッドコーチ宛にメールを送ることをお勧めします。コーチ宛のメールでは、アスリートとしての成果、成績を示すとともに、自分がプレーしている動画のリンクも載せると良いでしょう。
高校の成績や、ACTやSATのスコア、大学で学びたい専攻など、学業についても伝えます。コーチにとってアスリートとしての能力はもちろん、学力面でリクルート可能な学生かどうかの判断も重要だからです。
大学のコーチからリクルートの対象者に選ばれると、アスリートとしての入学審査の対象となり、この入学審査を通過すると進学が認められます。つまり、大学のコーチのリクルートが、NCAAアスリートへの第一歩なのです。
(2019年5月16日号掲載)