大学の合否先送り戦略(1)パンデミック後の現状

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(LA版2022年3月16日号掲載)

アメリカの大学のアドミッションは、常に変化し続けています。中でも、最近、受験生を悩ませているのが、各大学の合否先送り戦略です。

ウェイトリストの積極活用

一昔前まで、アプライした大学から学生が受け取る結果は合格か不合格だけでした。しかし、近年、各大学がウェイトリストを積極的に活用するようになりました。ウェイトリストとは、欠員補充のための補欠学生のリストです。多くの学生は複数の大学を受験するため、大学は定員より多くの学生に合格通知を送ります。大学は、過去のデータを元に歩留まり(入学率)を予想し、合格通知の数を決めます。

受験生は合格した大学の中から進学する大学を1校決め、5月1日までにデポジットを納め、大学の籍を確保します。各大学は5月1日の時点で入学する学生数が確定しますが、その時点で定員に達していない場合、ウェイトリストから学生を繰り上げます。繰り上げ合格者の数は、以前は微々たるものでした。ところが、ウェイトリストを積極的に活用する大学が徐々に増え、特にパンデミック以降は急増しています。

州外学生重視のアドミッション

州立大学は州内学生の高等教育が設立目的ですが、財政面を考えると、高額な授業料を払う他州の学生や外国人留学生を増やすことも重要です。UCはテスト・ブラインドで、他州の学生のアプリケーションが44%も増加し、合格者数も40%増えました。

そのあおりを食ったのが州内学生で、例えばUC SanDiegoは、州内学生のアプリケーションが前年比15.1%増にもかかわらず、合格者数は4.1%減っています。その分、他州の学生に振り分けられたのです。UWは合格者の内訳を細かく発表していませんが、公表データから、州外の学生を重視したアドミッションをしていることは明らかです。

ウェイトリストの対象となる学生

ウェイトリストに選ばれる学生は、合格圏内の学生です。優秀な学生が多く受験する難関大学では、合格圏の学生を全員を合格させるわけにはいかないので、取捨選択をするのです。ウェイトリストを積極的に活用する大学は、ボーダーライン上の学生を大量にウェイトリストに載せます。ウェイトリストに載せた学生にはその旨を連絡し、アドミッションの継続を希望するか否かを確認し、希望する学生には期間内に所定の手続きを取らせます。5月1日以降、入学者が定員に達した時点でウェイトリストは閉じられますが、その連絡をリストに載った学生が受けることは、ほとんどありません。ウェイトリストの大学が本命の学生は、いつまで待てばよいのか分からず、不安な日々を過ごすことになります。

Regular Deadlinesへの先送り

大学アプリケーションの締め切りには、Regular Deadlines(一般締切)とEarly Deadlines(早期締切)があります。最近は、Early Deadlinesで合否ボーダーライン上の学生をRegular Deadlinesに回して(Deferral)、合否を先送りする傾向が顕著です。例えば、MITの2020-21年度のアドミッションでは、1万5081人がEarly Deadlinesでアプライし、そのうち1万673人がRegular Deadlinesに先送りされました。そしてDeferralの学生のうち、Regular Deadlinesで合格通知を得たのは194人でした。

合否先送り戦略の狙い

大学が合否の判断を先送りする目的は2点考えられます。まず、歩留まりを高めること。合否を先送りしている間に、ウェイトリストに載せた学生の反応を見ながら、順位を決めていきます。入学しそうな学生を優先的に合格させれば、歩留まりが上がります。二つ目は、時間をかけて受験生の価値を見極めることです。各大学はパンデミック後にアプリケーションが急増し、優秀な学生を獲得する機会が増えました。「アプリケーションでの売り込みが上手くない魅力的な学生を見逃したくない」という大学の意図が合否先送り戦略に表れています。次回は、このような状況で学生ができる対策について解説します。(2022年3月16日号掲載)

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