(2023年8月号掲載)
2023年3月、アイビー・リーグのColumbia Universityが、今後も永続的にテストオプショナルを続けると発表したことに注目が集まりました。アメリカの大学では、入学審査の際にACTまたはSATの成績の提出を求められる場合があり、これらのテストは、アドミッションテストと呼ばれています。アドミッションテストが出願要件の場合、ACTかSATどちらかのスコアを提出することになります。
一時対応から恒久対応へ
20-21年度のアドミッションでは、ほぼ全ての大学がSATやACTのスコアの提出を必須条件から外しました。テストオプショナルと呼ばれるこの方法は、2000年以降採用する大学が増え、パンデミックを機に全米に広まりました。当初は、パンデミックの影響でテストが受けられない受験生を救済する一時的措置でしたが、テストを義務付けないことで、低所得者層や、両親が四年制大学を卒業していないFirst-Generationの学生の受験が増えたことから、ほとんどの大学がテストオプショナルを続けています。23年7月現在、アドミッションテストの提出を要求する主要大学は、MITとGeorgetownを除けば、サービスアカデミーとアメリカ南部の一部の州立大学です。
テストオプショナルの背景
今世紀に入り、難関リベラルアーツカレッジを含む多くの大学がテストスコアの提出を受験要件から外しました。背景に、アドミッションで占めるテストの割合の低下が挙げられます。ACTやSATは学生の基礎学力を判断するツールとして、一定の利用価値はありました。とはいえ、学力評価の基本は高校の成績で、高校で十分な成績を収めている学生にとって、テストで示すべきものは、ほとんどありません。
他の難関研究系大学でも、アドミッションテストの要件を再検討する動きが出ると思われた矢先、パンデミックで全米にテストオプショナルが浸透することになりました。
テストブラインドとの相違点
テストオプショナルを一歩進めたのが、テストブラインド(SATやACTのスコアをアドミッションで一切考慮しない)です。Caltechをはじめ、UC(University of California)の9キャンパス、CSU(California State University)の23キャンパスなど、採用する大学が増えています。UCは、テストブラインドを採用した20-21年度に、受験者数が前年比16%増と過去最高を記録し、その後も増え続けています。
テストオプショナルの大学は「スコア提出は任意で、提出しない学生を不利に扱わない」と明言しています。提出されたスコアを実際はどのように評価しているのか、ある難関大学の担当者に話を聞いたところ、大半の学生については、提出されたスコアは一切見ないと話していました。成績において気になる点がある、ごく一部の学生に対してのみ、提出されたスコアを確認するそうです。つまり、テストオプショナルの大学でも、事実上はテストブラインドに近いアドミッションが行われている場合があるというわけです。
アドミッションテストへの対応
高校で十分な成績を収めている学生にとって、SATやACTの点数が合否に影響することはほとんどありません。以前は、奨学金額に影響する場合があるので、スコアアップが推奨されましたが、パンデミック以降、各大学はテストスコアを使わずに奨学金の算定をするようになったので、テストの重要性はほとんどなくなりました。
ただし、高校の成績に不安がある学生や、ホームスクールの学生、アスリートとして進学を目指す学生など、アドミッションテストを受けた方が良い場合もあるので、個別に判断することをお薦めします。
(2023年8月号掲載)
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