ファイナンシャル・エイドの基礎(2)タレントベースの奨学金

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(LA版2022年8月16日号掲載)

アメリカの大学の学費は極めて高いですが、ファイナンシャル・エイドを得て、学費を下げて進学するのが一般的です。ファイナンシャル・エイドでは、ニードベースやメリットベースの奨学金を獲得する学生が多いですが、課外活動などにおける特別な能力が評価され、奨学金を獲得する学生もいます。このような奨学金を、タレントベースの奨学金といいます。

アメリカの大学は、一人一人の学生の潜在能力を引き出し、開花させる教育に注力しています。開花させる能力は、アカデミックに限りません。アカデミックと課外活動を両立させて頑張る学生は、規律や時間管理、チームワークなど、さまざまな能力が自然と身に付きます。そのような学生こそが、アメリカの大学が求める「将来伸びる学生」です。

タレントベースの奨学金の対象

タレントベースの奨学金の対象は、芸術とスポーツが広く知られています。また、発表が賞を取るとか、高校生のうちに起業するなど、ジャーナリズム、サイエンス、ビジネスなどの分野における活躍が評価される場合もあり、対象となり得る高校生は多いです。

自分の特技が大学の専攻と直結していなくても構いません。例えば、音楽で奨学金をもらう場合は、音楽専攻でなくても構わないのです。ただし、オーケストラやマーチングバンドなど、何らかの音楽活動を大学でも続けることを期待されています。スポーツ分野の奨学金も、大学の専攻は自分で選べます。そして、タレントベースの奨学金は、国籍や家庭の経済状況に左右されることはなく、学生本人の能力に応じて給与されます。

芸術分野における奨学金

美術、映画、演劇など、芸術分野を主専攻とする場合はアドミッションでオーディションや作品提出も求められます。主専攻でなくても、タレントベースの奨学金を目指す場合は、その分野における能力が評価され、例えば芸術分野のタレントベースの奨学金は、評価に応じて金額が決まります。他に代えがたい学生であればあるほど、奨学金の金額も上がります。

しかし、一律に奨学金を支給する大学もあります。例えば、ニューヨークのThe Cooper Unionは、ファインアーツや建築など芸術系の専攻を有し、学生全員に対して、原則、授業料の半分の奨学金を給与します。2022-23年度は2万2275ドルです。また、フィラデルフィアの名門音楽大学CurtisInstitute of Musicは、学生全員が原則Full-Tuition Scholarships( 授業料全額免除)で、22-23年度の支給は4万8557ドルとなります。これらの奨学金は、専攻と直結した奨学金なのでメリットベースの奨学金として扱われますが、芸術分野における能力評価が重視されるため、実質的にはタレントベースの奨学金と言えます。

スポーツ分野の奨学金

スポーツに取り組む学生を高く評価するのもアメリカの大学の特徴です。NCAA(全米大学体育協会)は、所属する大学をDivision IからIIIの3段階に分け、学生アスリートの支援を行っています。Division IとIIの大学はアスリートのためのスポーツ奨学金制度があります。Division IIIの大学にスポーツ奨学金はありませんが、その代わりにメリット・ベースの奨学金でアスリートとしての評価が加えられます。また、シンクロナイズドスイミングなど、NCAAがサポートしていない競技も、メリット・ベースの奨学金でアスリートとしての評価が加えられます。どの競技でもアスリートとして評価されれば、学費の軽減につながるのです。 スポーツ奨学金は、Divisionや競技に応じて上限が細かく定められ、獲得は狭き門ですが、IとIIのアスリートの半数以上はスポーツ奨学金を得て進学しています。またスポーツ奨学金制度の無いIIIでは、アスリートの8割以上がメリットベースまたはニードベースの奨学金を得ています。

タレントベースの奨学金を得られる学生は限られています。確実に奨学金を得るには、積極的に大学に自分を売り込むことが重要です。数多くの大学の先生やコーチとコミュニケーションを取りながら、自分を評価してくれそうな大学を探すことをお勧めします。(2022年8月16日号掲載)

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