(2023年10月号掲載)
2023年8月から、Common App(コモン・アプリケーション)が新年度に切り替わりました。24年秋入学を目指す12年生が対象となります。
アメリカの大学では、出願をオンラインで受け付けるのが一般的です。近年は複数の大学で共通で利用できるアプリケーション・サービスを採用する大学が増え、最も多くの大学に採用されているサービスがCommon Appです。
Common Appの概要
Common Appは、非営利団体によって運営されている大学(学部)のアプリケーションのサービスです。22-23年度は、124万人の高校生が利用し、700万のアプリケーションが提出されました。これを利用すると、受験生が複数の大学にアプライする負担が大幅に軽減され、複数の大学を受けやすくなります。大学にとっても、Common Appの利用で受験者数の増加が見込めるため、年々採用する大学が増え、23-24年度は、1000校に達しました。
Common Appは、アイビー・リーグの各大学などの有名私大に加え、現在は250校以上の州立大学や、ヨーロッパやアジアなど18カ国50校以上でも採用されています。Common Appは、推薦状をオンラインで提出できるようになったり、スマホアプリで入力できるようになったり、年々進化しています。
Common App 2023-24の特徴
Common Appの今年のリニューアルは、新世代の幕開けと言っても過言ではないくらい、大きな変化を伴っています。アメリカ連邦最高裁判所は、23年6月28日に「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」が合衆国憲法に違反するとの判断を示しました。この判決を受けて、各大学は、アドミッションにおいて人種を考慮することが難しくなりました。
Common Appの共通フォームには、以下のような人種を問う質問があり、リニューアル以降も存在します。しかし、この情報は、Common Appが出願者を分析するために収集するもので、各大学には原則、提供されなくなります。
また、Common Appには、アプライする全ての大学に提出する共通フォームの他に、各大学ごとに提出する個別の「Questions」と呼ばれるフォームがあります。違憲判決を受けて、各大学が試行錯誤しているのが今年度の現状です。
「Questions」では、それぞれの大学が追加でエッセイを要求する場合がありますが、この扱いが大きく変わりました。昨年度まで、「Questions」内で、個別に長文エッセイを複数要求していた大学の中には、23-24年度から長文エッセイそのものを廃止した大学が数多く見受けられます。「出願者が人種的背景について書きやすそうなトピックにすると訴えられる」と大学が弱腰になっていると思われます。また、エッセイのトピックを、ダイバーシティーやインクルージョンについての見解を問うような内容に変えた大学もあります。
しかし、「アファーマティブ・アクション」は違憲との判断が示されると同時に、出願者がエッセイの中で自分の人種的または文化的背景に触れることは問題ないとの見解が示されています。
なお、共通アプリケーションで提出するエッセイのトピックは前年度から変更はありません。23-24年度のアドミッションでは、これまで以上に共通アプリケーションでのエッセイが重要視されるとの見方が主流となっています。
(2023年10月号掲載)
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