カリフォルニア州立大学のドロップアウト救済プログラム

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(2024年10月号掲載)

大学入学者の9割以上が卒業できる日本では考えにくいことですが、アメリカでは、大学をドロップアウトした学生が学位を取得できるようにする支援が課題となっています。NSC(National Student Clearinghouse)によると、大学入学から6年以内に卒業する学生は約6割です。今回は、ドロップアウトした学生を救済するために、2024年からCal State(カリフォルニア州立大学)グループが試験的に取り組むプログラム「セカンドスタート」を紹介します。

SCNC人口の現状

大学でクラスを履修した経験があるが、学位は取得していない人をSCNC(Some College, No Credential)と呼びます。NSCの調査では、22年7月現在、65歳未満のSCNC人口は全米で3680万人に達し、前年比で2.9%の増加です。カリフォルニア州のSCNC人口は約600万人です。

ドロップアウトの要因は、家庭の事情や学費、キャリアプランの見直し、健康上の理由など多岐にわたりますが、ACE(American Council on Education)の調査によると、成績不振を理由に挙げた人が最も多く、約6割を占めていました。成績不振で大学をドロップアウトした学生が、復学して卒業を目指すことは極めて困難です。低いGPAでは転学もままならず、結果的に、ドロップアウトした学生の多くは、2度と大学に戻れないと諦めています。

セカンドスタートの概要

学位の取得率の向上は各州の重要課題で、その実現にはSCNCへの支援が不可欠です。そこでCal Stateは一部のキャンパスで、成績不振でドロップアウトした学生が、大学に戻り学位を取得できる救済策を今年から試験的に実施しています。「セカンドスタート」という5年間のパイロットプログラムで、Cal Stateグループ23大学のうち、CalState Fullerton, Sacramento Stateなど、14大学で実施することになりました。

セカンドスタートを実施する大学は、参加資格のある学生をリストアップして連絡をとり、大学への復学を促します。学生は、次の基準を満たせば、セカンドスタートに参加することが可能です。

①ドロップアウトした大学に、復学する意思がある。
②履修していない期間が3年以上あり、その間に他の大学に通っていない。
③ドロップアウトした時点でのGPAが、2.00未満である。

復学から12カ月以内に12単位以上取得し、GPA2.5以上の成績を収めれば、正式にセカンドスタートの学生と認められ、復学前のGPAは消去されます。以前の成績は成績証明書に反映されますが、累積GPAは、最新の単位のみを含むようにリセットされます。

過去のGPAがリセットされ、フレッシュなスタートを切れることが、このプログラムの要です。負の遺産を引き継がずに済むため、進級や卒業の要件を満たしやすくなります。セカンドスタートに参加する学生は、元の専攻で学び続ける必要はありません。アドバイザーと相談しながら、自分に合う専攻を選び、学位取得の計画を立てられます。

ドロップアウト救済の意義

多くの高校生は、高校卒業後すぐに大学に進学して大学卒業を目指しますが、その選択が全ての学生にとってベストとは限りません。高校の学習で燃え尽きたり、将来への迷いからモチベーションが低下したりする学生は少なくなく、そのような学生が、大学の学習についていくのは容易ではありません。一つのクラスで失敗すると学習意欲が下がり、それがさらなる失敗を招く負のスパイラルから、あっという間に成績不振に陥ります。成績不振は学力不足ではなく、学習意欲の低下が原因なのです。そのような学生には、ギャップイヤーが必要だったかもしれません。しばらく大学から離れ、アルバイトやボランティア活動に専念することで、大学で学ぶ意義を再認識し、大学に復帰してから見違えるような成果を挙げるケースは往々にしてあることです。

Cal Stateは、初年度に約400~500人の学生がセカンドスタートへの参加を目指すと予想しています。このプログラムが大きな成果を上げれば、同様の取り組みが他州にも広がり、全米のSCNCに学位取得を促すことが可能となるでしょう。セカンドスタートの成功を、ぜひとも期待したいです。

(2024年10月号掲載)

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