全世界から毎年100万人を超える留学生が集まってくるアメリカの大学は、世界に類を見ない極めて特殊な学部教育制度を有します。そして、その特殊性こそが、アメリカの大学の最大の魅力です。今回は、英語で学べる大学が多くあるヨーロッパと比べながら、アメリカの大学教育制度についてお話しします。
一般教養の米欧での違い
アメリカの大学は、卒業まで4年かかるのが一般的です。これに対して、イギリスやオランダなど、ヨーロッパの多くの国では、大学は3年で卒業できます。この違いは一般教養教育にあります。アメリカの学部教育には、多くの一般教養科目が含まれています。一般教養科目の多くは、専攻とは直接的な関連はありませんが、ライティングやクリティカル・シンキングなど、あらゆる学習の基礎となる学習スキルの習得に役立ちます。
これに対して、ヨーロッパでは一般教養科目の多くは高校在学中に履修し、大学では専攻分野を中心に学びます。IB(国際バカロレア)のディプロマ・プログラムや、イギリスのAレベルなどを修了した学生は、3年で卒業できる大学への受験資格が得られます。ヨーロッパの大学は、自分が学びたい分野に特化して学べるので、卒業後のキャリアや大学院進学の準備に役立ちます。
フレキシブルな米国の専攻
ヨーロッパの大学では専門分野を中心に学ぶため、受験生は専攻を決めてから大学にアプライします。進学後の専攻の変更は基本的に不可能です。これに対して、アメリカの大学では進学後の専攻変更は原則自由です。また、専攻を決めずに大学を受験することも可能です。
アメリカの大学生は、在学中に平均2回以上専攻を変えると言われています。大学にアプライする17、8歳前後の時点で将来の目標が決まっている学生は多くありません。また、大学で学ぶ中で、自分のやりたいことが見えてくる学生は数多くいます。また、高校生の時から明確な目標がある学生でも、大学進学後に考えが変わったり、もっと興味のある分野が見つかることも少なくありません。そのような学生にとって、進学後に専攻が自由に変えられたり、専攻を決めずにアプライできたりするアメリカの制度は、とてもありがたいものです。
自分にぴったりの専攻がない場合は、新たに専攻を作ってくれる大学もあります。学生のニーズに合わせて柔軟に対応するのがアメリカの大学の強みです。このようなフレキシブルな教育システムは、世界中探してもアメリカ以外にはありません。
将来性重視の米国の大学
アメリカの大学教育制度が、ヨーロッパと大きく異なる背景には、大学教育における考え方の違いがあります。ヨーロッパの大学では、専門性を高めることに主眼を置いた教育が行われています。アメリカの大学では、学生一人一人のポテンシャルを最大限に発揮させることに注力した教育が行われています。
考え方の違いは、アドミッション(入学審査)にも表れています。ヨーロッパをはじめほとんどの国の大学は、受験時の学力で学生を評価しますが、アメリカは大学進学後に伸びそうな学生を高く評価します。つまり、現時点の成績だけで判断するのではなく、将来性を見極めて学生を選ぶのがアメリカの大学です。
将来性を重視した人材育成は、大学の経営戦略とも密接に関わっています。社会で活躍する卒業生が増えれば大学の名声は高まり、寄付金も増え、大学の経営基盤がより強固になります。つまり、学生のポテンシャルを引き出し、卒業生が社会で活躍することが、大学の長期的な繁栄につながるのです。
充実したキャンパスライフ
学内におけるアクティビティーが充実しているのも、アメリカの大学の特徴と言えるでしょう。大学スポーツは、多くの大学が力を入れている課外活動です。また、海外からの留学生が出身国別に所属できるクラブや、同じ興味を持つ学生が集まるクラブなど、さまざまな活動の場が提供されています。課外活動の場を学外に求める学生が多いヨーロッパの大学とは対照的です。
各国の大学の特徴
1つの出願システムで自分が受けたい大学全てをカバーできる場合は少ないので、多くの受験生は、複数の出願システムを併用することになります。また、複数の出願方法を用意している大学を受ける場合は、出願システムにより、提出する資料が異なる場合があるので、自分に最も有利な出願システムを選ぶことをお勧めします。
(2019年1月16日号掲載)
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