大学の基金と学費の関係

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大学経営を支えるのは授業料収入だけではありません。長年にわたって増やしてきた基金(Endowment)は、大学にとって重要な財務基盤となります。今回は大学の基金についてお話しします。

奨学金と基金

基金額の例
Source: NACUBO

基金額の例

大学の学費の高騰は、現在のアメリカにおける深刻な問題のひとつです。カレッジボードの調査によると、1988年から30年の間に、私立大学の授業料は2倍になり、州立大学の授業料は3倍に跳ね上がりました。私立大学の学費は平均で年間5万ドルを超え、一般の家庭で全額負担することは、もはや現実的ではなくなってきています。
 
本命の大学に合格できても、学費が払えずに進学を断念するケースは多々あり、いくらで進学できるのかは極めて重要です。大学の難易度や知名度と奨学金の額に、明確な相関関係はありません。では、ファイナンシャルエイドが得やすい大学を、どのように見極めれば良いのでしょう。
 
その目安のひとつが、大学の基金です。基金は、主に卒業生からの寄付金による資金で、大学の長期的な成長のために投資されます。そして、基金の数パーセントが年間の運営資金に組み込まれます。基金の運用益の一部が奨学金の原資となり、基金の規模が大きければ、その分、ファイナンシャルエイドの予算も大きくなります。
 
歴史のある大学は、長い年月をかけて基金を増やしてきました。また、大規模な州立大学群は、多くの卒業生を輩出し、多額の寄付を募ってきました。現在基金が10億ドルを超える大学は、全米で100校以上あります。

学生一人当たりの基金額

学生1人当たりの基金額(単位千ドル)

学生1人当たりの基金額(単位千ドル)

大学の財務基盤を比較する上でよく利用される指標が、「学生一人当たりの基金額」です。学生一人当たりの基金額が大きい大学は、授業料収入に頼らない大学経営ができるので、より多くのファイナンシャルエイドを提供できます。
 
例えば、リベラルアーツカレッジのポモナカレッジは、授業料などで得る収入が年間6354万1000ドルで、基金から運営資金に回される額は9345万9000ドルあります。授業料収入に頼らない学校運営ができるため、非永住学生や外国人留学生にも惜しみなくファイナンシャルエイドを提供できるのです。同校のCost of Attendance(学費や生活費など1年間に必要な費用)は7万7032ドルですが、学生が実際に払う額は平均で1万5840ドルです。同校の学生は、潤沢な基金のおかげで一人あたり5万ドル以上のファイナンシャルエイドを得ていることになります。
 
一方、大きな基金を有する州立大学は学生数も多いため、学生一人当たりの基金額は小さくなり、各学生に提供できるファイナンシャルエイドは限られます。また、規模の大きい大学は基金額も大きくなる傾向があるので、「基金額の大きい大学は奨学金が得やすい」とは言えません。

CSS Profileの活用

大学が、学生のファイナンシャルニード(学費の不足分)を算出する際に利用するサービスがFAFSAとCSS Profileです。豊富な基金を有し、ファイナンシャルエイドを積極的に提供する大学は、CSS Profileを利用します。CSS Profile利用校240校のうち、170校は非永住学生や外国人留学生にもCSS Profileの登録を求めます。つまり、これらの学生にも奨学金を提供する用意があることを意味します。
 
学費をサポートしてもらいたい学生は、学生一人当たりの基金額が大きく、CSS Profileを利用する大学を選べば良いことになります。

 

(2019年9月16日号掲載)

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