将来のキャリアステップであるアメリカ大学進学について、
教育コンサルタントが解説します。
海外で学ぶ子供たちが日本を救う
これからライトハウス誌面で、アメリカで学ぶ子供たちの進学や進路に関わるさまざまな話題を取り上げていきたいと思います。
日本の若者の内向き姿勢が顕著になっているとよく言われます。実際に内向き姿勢を示す調査結果もあり、例えば、日本からアメリカに来る留学生の数はここ5年間で4割以上減っています。もちろんアメリカだけが留学先ではありませんが、同期間に韓国やインドからの留学生が3割以上増え、中国からの留学生は倍以上に増えていることと比較すると、国際化が進むアジアの潮流に逆行しているように感じられます。
少子高齢化が進み国内市場が飽和する中で、日本の企業が生き残るためにはグローバル化が不可欠です。しかし、そのグローバル化を支える人材が育たないことに、日本の産業界は危機感を持っています。2010年にノーベル化学賞を受賞した根岸栄一さんも、日本の若者に対して積極的な海外修業を呼びかけています。
アメリカで子育てをしている日本人家庭では、日本人の国内志向という問題があまりピンと来ないかもしれません。それもそのはずです。子供たちは、日米2つの言語を操り、2つの文化に接しています。第3の言語を学ぶ生徒も少なくありません。子供たちは、無意識のうちに国際感覚を身に付け、国際社会へ目を向けています。
私が海外で暮らす日本の子供たちと接して感じることは、皆日本に対する思いがとても強いということです。日頃日本に住んでいないからこそ、日本への憧れが増すのかもしれません。また、日本を外から見ることで、日本のために役に立ちたいという気持ちが強くなるのかもしれません。日本から来て間もない人や日本に住んだことのない人など、子供たちの日本とのつながりはさまざまですが、日本に住んでいる子供たち以上に日本を大切にしていることが、とても強く感じられます。
このように、国際感覚に富み、日本を愛する子供たちの中から、将来日本で活躍し、日本の社会や経済を支える人材が数多く生まれてくるはずです。グローバル化を目指す日本の産業界においては、海外から日本に学びに来る外国人留学生と共に、海外で学んだ後日本に戻って来る日本人学生の活躍の機会は限りなく広がっています。日本の若者の内向きな姿勢は、逆に海外で学ぶ日本の子供たちにチャンスをもたらしていると考えられるかもしれません。
将来日本を支える子供たちへの支援
海外で学ぶ日本の子供たちを支援するために、文部科学省では海外子女教育のための施策を行っていますが、将来の日本を支える子供たちを育てるという点において、十分な支援が行われているとは言えません。その理由のひとつとして、文科省の施策が主として海外に駐在する日本人家庭を対象としていることが挙げられます。つまり、海外に永住している家庭や日本国籍以外の子供たちは、基本的に支援の対象となっていないのです。
今年3月の東日本大震災後、アメリカ各地の現地校や補習授業校では、被災地の子供のために募金活動をしたり、千羽鶴を折ったり、励ましの手紙や絵を送ったりなど、さまざまな活動が行われました。震災で被害を受けた子供たちは自分の仲間であり、その仲間のために何かしてあげたいという気持ちが、生徒の自発的な行動となって表れました。
このような活動をした生徒には、当然ながら永住家庭の子供も数多く含まれています。日本のために貢献したいと考える子供たちにとって、滞在の形態や国籍の枠はまったく関係ないのです。
日本政府には「駐在家庭は日本に戻るから支援するが、永住家庭は日本とのつながりがなくなるので支援しない」という短絡的な発想ではなく、将来の日本を支える子供たちを育成するという視点での、戦略的な支援が望まれます。そのためには、私を含め海外で日本の子供たちの育成に関わる者が、日本政府に対して具体的にどのような支援が必要なのかきちんと伝えていくことが大切だと考えています。
(2011年10月16日掲載)