駐在などで一時的にアメリカに滞在している学生にとって、こちらでの大学進学は不利になると考える人が多いですが、そうとは限りません。入学審査における現地の学生との差を理解して準備をすれば、満足のいく進学ができるはずです。今回は、ビザで滞在する学生の大学進学についてお話しします。
非永住の学生は入学審査で有利
アメリカの大学では、入学審査の際に受験生を数多くのカテゴリーに分けて、その枠ごとに学生を選びます。例えば、海外からの留学生は現地の学生とは異なるカテゴリーで審査が進みます。多様性を重視するアメリカの大学は、留学生を積極的に受け入れるので、一般的に留学生は現地の学生よりも入学審査で有利になります。
多くの大学で、非永住者は、アメリカ内の高校を卒業しても外国人留学生に準ずる枠で入学審査が行われます。非永住の学生は、外国人留学生と同様に大学卒業後に母国に帰る可能性があるため、大学側は卒業生のつながりを海外に広げる絶好の機会と考え、非永住の学生に対して有利な審査を行います。
日本から来て日が浅い学生は、英語力不足により、高校の成績やSATなどの進学適正テストの点数が低くなる場合もありますが、その点についても入学審査で考慮されます。学力と英語力は分けて評価されるので、日本の学校の成績も学力の評価として利用されます
非永住者も対象になるメリット・ベースの奨学金
非永住の学生が入学手続きで有利になるのは、合否の判定だけではありません。学生の評価は奨学金にも関わり、学費の面でも優遇されます。大学の奨学金には、学生の経済的な必要性に応じて給付される「ニーズ・ベース」と、学生の能力に基づく「メリット・ベース」に大別されます。後者は、国籍やビザの種類が問われず、非永住の学生でも獲得の機会があります。
メリット奨学金の金額は、大学がその学生をどれくらい欲しているかで決定されます。額は、1千ドル程度から学費全額免除までさまざま。家庭の経済的需要の有無にかかわらず給付されます。外国人学生を増やしたい大学では、非永住学生の評価は自動的に高まります。その評価が合格発表時に提示されるメリット奨学金の金額に反映されるのです。
非永住の学生が大学を選ぶ際に考慮すべき点は、メリット奨学金獲得の見込みがあるかどうかです。ニーズ・ベースの奨学金の対象は主にアメリカ市民および永住者であり、それ以外の学生への適用は限定的なので、学費を抑えるためにメリット奨学金の獲得が重要です。
アメリカの大学の多くは、メリット奨学金の制度を有し、評価の高い学生には積極的に給付しますが、中にはニーズ・ベースの奨学金のみという大学もあります。州立大学にもメリット奨学金の制度はあるものの、私立大学と比べて極少額です。従って、非永住の学生には、メリット奨学金制度の充実している私立大学をお薦めします。
非永住者にとって、州立大学に進学する価値は低いかもしれません。低額なメリット奨学金に加えて、入学審査においても、州立大学では州内の高校を卒業する非永住の学生が現地の学生と同等に評価される場合があるからです。州立大学よりも高い質の教育が受けられる私立大学に、州立大学と同等またはそれ以下の学費で進学することは、非永住の学生にも大いに可能です。
非永住の学生は、州内の州立大学に進学しても無期限で州内学生の学費を維持できるわけではありません。21歳になると家族のビザから外れて学生ビザに切り替わるので、その時点で州外学生となります。州立大学の州外学生の学費は非常に高いので、メリット奨学金を獲得し、私立大学に進学した方が結果的に学費を抑えられる場合も多いのです。
州立大学の1年間の学費例