ニードブラインドとは
アメリカの高等教育には、「適切な教育を受ける権利は、家庭の経済状況によらず全ての学生に与えられるべきである」という理念があります。この理念を実体化した制度が、ニードベースの奨学金です。
ニードベースの奨学金は、家庭の所得が学生の学費を全額負担するのに十分ではないと判断された場合、ファイナンシャルニード(不足分)の一部または全部を大学が負担する制度です。この制度のおかげで、経済的に恵まれていない学生でも、高校での活動に積極的に取り組み成果を挙げれば、学費の心配をせずに大学進学が可能となります。
大学説明会などで、「ニードブラインド・アドミッション」(以下、ニードブラインド)という言葉を聞くことがあります。ニードブラインドを行う大学は、学生の経済状況を一切考慮せずに合否判定を行い、合格者にファイナンシャルニードがあれば経済的に支援をします。
ただし、ファイナンシャルニードのない学生や、外国人留学生など、ニードベースの奨学金の対象とならない学生にとって、ニードブラインドのメリットはありません。
一言でニードブラインドと言っても、その中身はさまざまで、必ずしもニードブラインドの大学を選んだ方が有利とは限りません。詳しく見てみましょう。
ニードブラインドの価値
ニードブラインドは、ニードベースの奨学金制度と合わせることで価値が生まれます。例えば、Boston College(BC)やUniversity of Southern California(USC)はニードブラインドでアドミッションを行い、合格者のファイナンシャルニードは大学が100%負担します。学費を全く払えない低所得家庭の学生でも、アドミッションで不利になりません。BCやUSCのニードベースの奨学金はアメリカ人および永住者が対象であり、外国人留学生は対象外です。
Amherst CollegeやPrinceton Universityは、外国人留学生も含めて全ての学生を対象にニードブラインドを行います。また、学生のファイナンシャルニードも、国籍を問わず100%カバーします。このようなアドミッションを行う大学は極めて少数派です。
Boston University(BU)やCarnegie Mellon University(CMU)もニードブラインドを採用していますが、その意味合いは前述の大学とは異なります。BUやCMUのニードベースの奨学金は、大学側が学生の評価や経済状況を加味して金額を決めるので、ニードブラインドの価値は限定的です。なお、BUも外国人留学生はニードベースの奨学金の対象外です。
ニードブラインドを採用しない大学
ニードブラインドを採用していない大学についても、そのアドミッションの方法はさまざまです。例えば、College of Holy Crossは、ファイナンシャルエイドの予算を使い切るまではニードブラインドでアドミッションを行い、国内学生のファイナンシャルニードは100%カバーします。2018〜19年のアドミッションでは2681名に合格通知を送り、ファイナンシャルニードを考慮して選んだのは、そのうちの約90名でした。
また、外国人留学生のファイナンシャルニードを100%カバーする大学の多くは、外国人留学生に対してニードブラインドではありません。
Smith CollegeやHaverford Collegeもニードブラインドは採用していませんが、ファイナンシャルニードは外国人留学生も含めて100%カバーします。非永住ビザで滞在する高校生にとっては、外国人留学生のファイナンシャルニードをサポートしないニードブラインドの大学よりも、SmithやHaverfordのような大学の方が、はるかに価値があると言えるでしょう。
評価してくれる大学を選ぶ
ファイナンシャルニードが大きくても、大学からの評価が高ければ問題ありません。合格者の上位4分の1に入るような学生は、ニードブラインドではない大学を受けても、アドミッションで不利になることはないでしょう。大学によっては、評価の高い学生のファイナンシャルニードは全てカバーする場合があります。
また、非永住学生のようにニードベースのファイナンシャルエイドが狙いにくい場合でも、自分を評価してくれそうな大学を選べば、メリットスカラシップの対象となり得ます。
アドミッションやファイナンシャルエイドの制度を理解した上で、高い評価を得られそうな大学を、数多く受けることをお勧めします。
(2019年6月16日号掲載)