アドミッション・テストのひとつであるSATが2016年3月に刷新されます。大学で学ぶのに必要な基礎学力を評価するのに適したテストとして、より高校の教育課程に沿った内容に生まれ変わります。今回は新SATの概要と準備の進め方についてお話しします。
卒業時期により異なる準備
現行SATを受けるのは、16年までに卒業する高校生です。16年秋に大学進学を目指す場合は15年中に出願することになるので、現行SATを受けます。これに対して、17年に卒業する高校生は原則として新SATを受けることになるので、現行SATの準備は不要です。
SATのリニューアルに伴い、SATの予備テストであるPSATも新しくなります。新PSATはひと足早く15年秋から実施されます。新テストは主催するCollege Boardが現在開発中ですが、サンプル問題はCollege Boardのウェブサイトで見ることができます。新SATのスタディーガイド等は15年5月時点でまだ出版されていないので、新テストの準備が始められるのはもう少し先になります。もし17年に卒業する方が今すぐテスト対策を始める場合は、ACTから取りかかることをお勧めします。
オプショナルのEssay
新テストになって最大の変化は、Essay(小論文)がテスト本体から外れてオプショナルとなったことです。これに伴い、採点方法も現行の3科目2400点満点から2科目1600点満点に変わります。オプショナルのEssayを受けた場合、Essayは別に採点されます。
Essayの時間は現行の25分から倍の50分に増えます。まず700文字程度の文章を読み、その内容をもとに与えられた課題についてEssayを書くため、作文力だけでなく、読解力と分析力も問われる内容となっています。従ってEssayの採点は、作文力、読解力、分析力それぞれの点数の合計となります。
EssayがオプショナルなのはACTと同じです。オプショナルとは言え、アドミッションでACTのEssayの受験を要求する大学が多いことを考慮すると、新SATについてもオプショナルのEssayのスコアを要求される可能性が高いと思われます。従って、新SATを受ける際はEssayも一緒に受けることをお勧めします。
SATが基礎学力を評価するテストになれば、入学審査におけるアドミッション・テストの使われ方も変わる可能性はあります。とは言え、「学力評価は高校の成績から」というのが入学審査での基本的な考え方であり、この基本が変わることはありません。
従来のSATでは高度な語彙力を要求され、また知能テスト的な側面があり、高得点を目指すためには独自の対策が必要でした。しかし新SATは、ACTと同様学校できちんと学んでいれば点が取れるようになるはずです。そこで、これから進学準備を始める方は、個々のテスト対策よりもまずは英・数の学力向上に努めてください。この2科目には全ての学習の基礎となる読解力、作文力、論理的思考力が含まれており、ここを強化することが学力向上とテスト対策の両面において最良の進学準備となります。
新旧SATの比較
現行SAT | 新SAT | |
実施時期 | 2016年1月まで | 2016年3月から |
年間の試験回数 | 7回(10、11、12、1、3、5、6月) | 変更なし |
試験科目(必須) | 3科目 Critical Reading(批判的読解) Mathematics(数学) Writing(小論文および文法) |
2科目 Evidence-based Reading and Writing (根拠に基づいた読解および筆記) Mathematics(数学) |
試験科目(任意) | なし | Essay(小論文) |
試験時間 | 3時間45分 | 3時間(Essay受験の場合は+50分) |
採点方法 | 2400点満点(800}3科目) 誤答は1/4点のペナルティー |
1600満点(800}2科目) 誤答によるペナルティーなし Essayは24点満点 |
計算機使用 (数学) |
全ての問題で使用可 | 使用可(37問)、使用不可(20問) |
PSAT | 毎月10月に実施 現行PSATは14年で終了 |
新PSATは15年10月から実施 試験時間は2時間45分 |
(2015年6月16日号掲載)