アメリカには、従来の教育システムに縛られることなく、より革新的な教育に取り組む大学があります。今回は、アメリカの高等教育にパラダイムシフトを起こすユニークな大学をご紹介します。
自由に履修ができる大学
University of Rochester（私立総合大学Rochester, NY）
ロチェスターには、一般教養の必修科目はありません。 必ず履修しなければならないのは、 基礎ライティングの１コースのみ。学生は、自分の強みや興味に応じて独自のカリキュラムを作ることができます。「人は、 自分がやりたいことにのめり込む時に最高の力を発揮する」これがロチェスターの基本的な考え方です。必修科目の制約がないメリットは、ダブルメジャー（複数の主専攻）を目指しやすいことです。ロチェスターは、 明確な学習目的を持ち、 自主的に行動できる学生にとって理想的な大学と言えます。
Marlboro College（私立リベラルアーツ ・カレッジMarlboro, VT）マールボロの大学案内に、ありません。学部や学科についての説明はこの大学には、そもそも専攻という概念がないのです。 学生の興味は時間とともに変化し、 その興味は複数の分野にまたがる場合があるので、 特定の専攻という枠で学生を縛るべきではないと、この大学は考えています。一般の大学の専攻に当たるものが重点研究計画です。 全ての学生は、 指導教員の下で個別の学習コースを作成して取り組みます。 大学３年以降は、 重点研究計画に基づいて、学習や研究に取り組みます。マールボロは、EmersonCollegeと合併して2020年秋にボストンへ移転する予定です。 合併後もマールボロの独自性を貫けるかどうかが今後の課題です。
一科目を集中して学ぶ大学
Colorado College（私立リベラルアーツ ・カレッジColorado Springs, CO）
コロラドカレッジは、ブロックプランと呼ばれるシステムを採用し、 学生は常に１つのクラスだけを履修します。クラスは平日の午前9時から正午までで、３週間半続きます。第４水曜日のお昼にクラスが終了し、 その後学生は長い週末を過ごし、 次の月曜日に次のクラスが始まります。常に１クラスだけなので、同時に複数の課題提出や期末試験が重なることがありません。学生は、自分のペースで落ち着いて学習に取り組めます。授業は午前中で終わるので、午後は次の日の授業の準備をしたり、 課外活動に取り組んだりすることができます。
Cornell College（私立リベラルアーツ ・カレッジMount Vernon, IA）
コーネルカレッジも同様のブロックプランを採用しています。４週間ごとに新しいクラスが始まるので、 例えば１カ月間海外に短期留学したり、フルタイムのインターンシップに取り組んだりしても、１ブロック休むだけで済みます。同大学は、 既存の専攻から選ぶだけでなく、 独自の専攻で卒業を目指す学生のサポートも積極的に行っています。
ＡＦの成績がつかない大学
Brown University（私立総合大学Providence, RI）
アメリカでは小学校から大学まで、Ａ-̶Ｆで成績判定が行われ、ＧＰＡ（成績平均点）が示されます。しかしながらＧＰＡによるプレッシャーが学習の質の妨げとなっていることも指摘されています。ブラウンでは、 ＧＰＡに縛られなければ、 学生はより積極的にチャレンジができるはずだと考えて、 独自の方式を採用しています。ブラウンでは、Ａ-Ｆ判定と、S/NC（Satisfactory/No Credit）の２種類の成績判定方式があり、 学生はコース登録の際にどちらの方式で成績判定をされたいかを選べます。Ａ-Ｆ判定を選んでも、ＤとＦは成績表に記録されないので、 学生は失敗を恐れず難関コースを履修できます。
New College of Florida（州立リベラルアーツ ・カレッジSarasota, FL）
ニューカレッジには履修単位の制度がなく、 学生は大学のアドバイザーと共にコントラクトと呼ばれる学習計画を作成します。 各コントラクトには、３〜５の学習活動が含まれ、 ７つのコントラクトの修了が卒業の条件です。Ａ-Ｆ判定の代わりに、アドバイザーは文章で学生の学習活動を評価します。 Ａ-Ｆ判定がないとは、ＧＰＡが示せないということを意味しますが、就職活動や大学院進学に不利になることはありません。成績表には学習活動が文章で詳細に記されているため、 通常の判定よりも学生の成果を細かに示せます。 同大では卒業生の80％が大学院に進学し、Ph.D.の合格率は86％です。
(2019年12月16日号掲載)
