アメリカの大学のアドミッション(入学審査)は日本と異なり、審査方法も日々進化しています。特に2008年のリーマンショック以降は大学を取り巻く環境が変化し、アドミッションも影響を受けています。今回は、アドミッションの特徴と最近の動向をお話しします。
将来性重視の入学審査
日米の大学で入学審査が異なる最大の理由は、求める学生が異なるからです。日本の大学は「現在優秀な学生」を評価しますが、アメリカは「将来伸びる学生」を求めます。つまり、現時点の成績だけで判断するのではなく、将来のポテンシャルを見極めて評価するのがアメリカの大学です。学生の将来性を重視する理由は、卒業生が社会で活躍することが大学の長期的な繁栄につながると考えているからです。社会で活躍する卒業生が増えれば大学の名声は高まり、寄付金も増え、大学の経営基盤がより強固になります。そのため、各大学は学生のポテンシャルを的確に評価しようと工夫を凝らします。
点数評価から人物評価へ
将来性を重視するアメリカの大学では、学業以外の取り組みや人間性もアドミッションで評価されます。もちろん高校の成績が重要なのは言うまでもありませんが、成績以外もきちんと評価しようという傾向は年々高まっているように感じられます。特に難関大学ほどその傾向は強く、アイビーリーグの大学やスタンフォード大学のようないわゆるトップスクールは、どんなにアカデミックが優れていても、それだけで合格を勝ち取るのは困難です。
人物評価の方法として最重要なのは、アプリケーションの中のエッセイです。学生がどんなことを考えながら生きてきたのか、将来どのようなビジョンを持っているのかなど、大学はエッセイを通じて学生の人物像を読み取ろうとします。従って、受験生はエッセイを通じて自分の良い面をどう大学に伝えるかという戦略が重要です。
全米の主要私立大学と一部の州立大学は、”Common Application”という共通のアプリケーション・システムを採用しています。このシステムではエッセイのテーマが5つ与えられ、受験生はその内1つ選んでエッセイを書きます。ここで与えられるテーマは毎年同じでしたが、より的確な人物評価を目指す大学側の要望を受け、次年度(平成25年度)よりテーマが刷新されます。
私立大学人気の高まり
最近、私立大学のアプリケーションの数が急増しています。その原因に、州立大学の魅力の低下が挙げられます。州立大学は幅広い分野の教育が格安で受けられることが利点ですが、州の財政難で学費は高騰し、また一部の大学では教育の質の低下が深刻化するなど、州立大学の教育に不安を感じる学生が増えていると考えられます。
私立大学には教育の質や学生のサポート等で大きなメリットがありますが、学費の高さを理由に敬遠する人もいます。しかし、私立は州立と比べて奨学金制度がはるかに充実しているため、額面通り払っている学生は多くありません。自分に合った大学を選べれば、州立大学よりも質の高い教育を、州立大学以下の学費で受けることは十分可能です。
また、他州の大学に進学する学生が増えているのも最近の傾向です。特に西部は人口の増加が激しく、年々競争が激化しています。その上、人口に対して大学数が非常に少ないため、より有利な条件で進学しようと、マサチューセッツ大学やペンシルベニア大学など質の高い大学が多く集まる州に出願する学生が増えています。
アメリカの大学は全米規模で学生を集めたいと考えているため、アドミッションでは遠くの学生ほど優遇されます。つまり、遠方の大学ほど合格しやすかったり、より多くの奨学金がもらえる可能性が高くなるのです。自分に合った大学に、より安く進学するためには、地元だけでなく、遠くの大学もしっかり調べることが大切です。
(2013年3月16日号掲載)