アメリカの大学を受験する際にSATやACTなどのアドミッション・テストの点数を提出することが多いのは良く知られています。しかし、その目的や準備方法をきちんと理解している人は意外と少ないようです。今回は、アドミッション・テストについて解説します。
アドミッション・テストの有効性に対する疑問視
アメリカの大学が「将来伸びる学生を評価する」のはこれまでにも伝えてきました。各大学は将来伸びる学生を見極める手段として、アドミッション・テストの点数を利用します。現在全米の大学で採用されているアドミッション・テストはSATやACTと呼ばれるものです。これらの受験を義務付ける大学は、受験したテストのどちらか一方のスコアを要求します。
アドミッション・テストの中でも歴史の長いSATは、学生の潜在能力を評価するのに適しているとして長年利用されてきました。ところが近年、その価値を疑問視され、2000年頃からはその有効性についての研究が盛んになり、否定的な調査結果も発表されました。
これを受けて、数年前からアドミッション・テストのスコアを重視し過ぎると、学生を誤って評価する恐れがあるという危機感から、スコア提出を義務から任意に変更する大学が急増しました。この動きは、小規模のリベラルアーツ・カレッジだけでなく、NYU(New York University)やWake Forest Universityのようなトップレベルの総合大学でも見られます。また、テストスコアの提出を義務付けている大学でも、審査においてスコアを重視しないようにするなど、学生の評価方法が大きく変わり始めています。
アドミッション・テストの役割も見直されています。学生の将来性はエッセイ等による人物評価で見極め、テストでは小中高の教育過程の中で学力を付けてきたかどうかを評価すべきという考えが主流です。これに伴い、近年はSATよりも高校のカリキュラムに沿ったACTの人気が高まり、受験者数も増えています。
新しい評価基準となる新テストがもうすぐ完成
これらの変化を受け、現在新しいアドミッション・テストの開発が連邦政府(教育省)の支援のもとで進められています。それにより、PARCC(Partnership for Assessment of Readiness for College and Careers)とSmarter Balancedという2つのテストがまもなく完成予定です。どちらも、高校の教育課程に沿った内容で、学力を正確に評価することを目的に開発されています。近い将来、SATやACTの代わりにこれらが使用される可能性は高いでしょう。
SATやACTも手をこまねいているわけではありません。最も問題視されているSATは、15年にテスト内容を改良し、生まれ変わる予定です。新しいSATは、より高校の教育過程に沿った内容になるはずです。ACTはSATほど切羽詰まった状況ではありませんが、15年からテストをコンピューター化するなど、競争力を高めるための変更が予定されています。
これからの受験生が準備すべきことは?
では、これから大学を受験する学生は、どのような準備をすれば良いのでしょうか。最も大切なことは、日々の学習にしっかりと取り組むことです。アドミッション・テストが高校のカリキュラムに沿った内容に変わっていくわけですから、高校できちんと学習をしていれば、結果はおのずと付いてくるはずなのです。特に重要なのは、全ての学習の基礎となる英語と数学の力を付けることです。読む力、書く力、考える力をしっかり養うことが、最善の進学準備と言えるでしょう。
一方で、アドミッション・テスト対策に振り舞わされてはいけません。これからのテストは、小手先のテスト対策は通用しなくなりますし、周囲に影響されてSATの準備クラスに通ったとしても、その努力が全て無駄になる可能性もあります。アドミッション・テストがどのように変化しようとも、それに対応できるような日々の学習の積み重ねが大切なのです。
(2014年2月16日号掲載)