アメリカの大学を受験する際、成績以外に課外活動への参加が評価されることはよく知られていますが、具体的にどのように評価されるのかを正しく理解している人は少ないようです。今回は、課外活動と進学準備の関係について説明していきます。
積極的な課外活動が人間としての成長を促す
アメリカの大学の入学審査では、将来伸びる可能性のある学生が高く評価されます。将来性を見極めるために、アドミッションでは学力評価に加え、人物評価も重視します。その人物評価の一環として、クラス以外での取り組み、つまり課外活動が評価の対象となるのです。
アメリカの高校生は日々、多種多様な活動に励んでいます。スポーツや芸術活動に力を入れる生徒もいれば、ボランティアやコミュニティー活動に取り組む生徒もいます。自分の好きなこと、得意なことに力を注ぐことは、日々の生活に潤いを与えるだけでなく、心身の鍛錬と人格の形成、また社会活動に必要な自律や協調性の習得にも寄与します。
ただし、ここでしっかり認識すべき点は、大学進学を有利にすることを目的に課外活動にいそしむのでは意味がないということです。なぜ課外活動を積極的に行うべきかといえば、それが自分自身を高め、人間としての成長を促すからです。
「ボランティアは年間何時間以上すれば入学審査で評価されますか?」とか、「ボーイスカウトは何年以上続ければ進学に有利になりますか?」などの質問を受けることがよくありますが、そもそも大学は課外活動自体を評価するわけではありません。生徒が課外活動で習得したことが、大学に価値をもたらすと判断されたときに初めて評価の対象となるのです。ですから、さまざまな活動を通じて成長することが、結果的に大学進学を有利に進められると考えるべきです。
主題となるべきは大学に益を感じさせるかどうか
では、大学にとっての価値とは何でしょうか。さまざまな競技で活躍するアスリートや、音楽や美術で卓越した才能を持つアーティストは、その活動自体が大学に大きな利益をもたらすのは言うまでもありませんが、大学にとってのメリットはそれだけではありません。
例えば、福祉施設で年間100時間ボランティアをしたらどうでしょう。大学は福祉の仕事をさせるために学生を入学させるのではありません。ただ年間100時間の奉仕をしました、と言うだけでは、福祉専門の学校でない限り、大学からの評価は期待できません。
しかし、ボランティア活動に積極的に取り組んだ結果、規律や時間管理能力、リーダーシップなど、幅広い能力が自然と身に付き、ボランティアの経験を通じて人間として大きく成長したなら、大学進学後の学習やキャンパスでの活動に大いに貢献できることでしょう。その点をきちんと示すことができれば、入学審査で評価されます。
文化活動やスポーツ、ボランティアなどは、数多く取り組んだ方が大学に進学する際に高く評価されると考えている方もいますが、決してそうとは限りません。課外活動の数や時間数が重要なのではないことを忘れないでください。
自分を売り込む論文力で大学側の心をつかむ
では、具体的にどのようにアドミッションにアプローチすればよいのでしょうか。その一つが論文(エッセイ)です。各生徒がどのように日々の活動に取り組んできたのか、その活動を通じて何を学び、どう成長したのか、その経験が将来にどのような影響を及ぼすのかなど、アドミッション担当者は論文を通じて学生の人となりを読み取ろうとします。人物評価を重視するアメリカの大学入学で、学生の成長記録を書き表した論文の内容は至極重要なのです。
出願の時期が近付いてから、慌てて課外活動に奮闘する高校生を散見します。最近の傾向として、11年生が終わった夏に日本に一時帰国し、東北の被災地でボランティアをする生徒を数多く見受けます。活動自体は大変素晴らしく、ぜひ多くの生徒に取り組んでもらいたいことですが、アドミッションでの評価を期待してだとしたら、有名無実です。願書の見栄えを良くするためのその場しのぎは、評価されにくいでしょう。
日々の生活の中で長期的に取り組んできたことはおのずと結果として現れるものです。進学のための課外活動ではなく、自分自身を高めるための課外活動に積極的に取り組むことをお勧めします。
(2014年3月16日号掲載)