アメリカで学ぶ高校生が進学するのに適した大学が、アメリカの大学とは限りません。英語で学べる大学は世界中にあり、アメリカ国外で学ぶアメリカ人学生は年々増えています。今回は、質の高い教育とグローバルな学習環境に定評のあるオランダの大学をご紹介します。
オランダの大学の特徴
オランダには、University of Applied Sciences(HBO)とAcademic Universities(WO)の2種類の大学があります。このうち、日本やアメリカの4年制大学に相当するのがWOです。HBOは、基礎学力の向上や職業訓練を目的とした大学であり、アメリカのコミュニティーカレッジに近い教育機関と考えて良いでしょう。従って、ここではWOを大学として扱います。
オランダの大学の最大の特徴は、その立地による国際的な教育環境です。オランダの大学では、年間9万人以上の外国人留学生が学んでいます。アメリカの大学にも学生が世界中から集まりますが、オランダの大学のグローバル環境は、その比ではありません。アムステルダムから鉄道に乗れば3時間でパリやフランクフルトに行ける立地を生かし、国境を越えてリサーチやインターンシップに取り組む学生も少なくありません。
オランダの大学は、専門教育に特化した教育を行います。大学においても教養教育を重視するアメリカとは大きく異なります。卒業にかかる年数は3年です。専門分野に特化して深く学べるオランダの大学は、専攻する分野が明確に定まっている学生にとって、大変魅力的です。
非英語圏の大学の中でも、言葉の壁が低いのも、オランダの大学の特徴です。スイスやフランス、ドイツにも、英語で学べる大学は数多くあります。しかし、多くの大学では、フランス語やドイツ語など、ヨーロッパの言語を既に習得しているか、在学中に習得することが期待されています。これに対して、オランダの大学では英語で学べるプログラムが2000以上あり、あらゆる専攻を英語で学べます。オランダ人の95%は英語を話すので、日常生活でも言葉で困ることはありません。
学費の安さも、オランダの大学の魅力のひとつです。EU圏外からの外国人留学生の学費は高く設定されていますが、それでも年間の授業料は1万ドル強です。さらに、外国人留学生を対象とした奨学金制度もあります。3年で卒業できることを考慮すると、日本の大学と比べてもリーズナブルな学費だと言えるでしょう。
オランダの大学の受験方法
オランダの大学(WO)も、イギリスの大学と同様に、大学レベルの教養をある程度身に付けた学生を対象としているため、アメリカや日本の大学と比べると受験資格は厳しいです。例えば日本から受験する学生は、高校で国際バカロレア(IB)のディプロマを取得した学生など、一部の例外を除き、大学2年間の学習が受験要件となっています。これに対して、アメリカの高校生は、高校の成績が4段階評価で3.5以上あることや、AP(Advanced Placement)テストで5段階評価の3以上の成績の教科が3つ以上あるなど、一定の条件を満たすことで、オランダの大学の受験資格を得ることが可能です。入学審査では、高校の成績に加えて、SATやACTのスコアも考慮されます。
オランダの大学を受験する際には、Studielink(www.studielink.nl)というオンラインの出願システムを利用します。Studielinkでは、最大4大学(学部)に出願ができます。
また、日本の学生にとって、オランダで学ぶ意義は環境や学費だけではありません。オランダは、OECDの「より良い暮らし指標(BLI)」 の上位国です。BLIは、人々の暮らしを比較する上でGDP以上に価値があると言われている指標で、オランダの生活の満足度は、9.4です(最大10、日本は4.0)。さらにオランダの一人当たりのGDPは日本よりも34%も高く、経済的にも恵まれています。私たち日本人が、オランダ人の生活から学べることは多いのではないでしょうか。
(2018年3月16日号掲載)