日本とは反対に、アメリカでは理工系学生は年々増えています。今回は、アメリカの大学で理工系を専攻するメリットや注意点をお話しします。
メリットの少ない日本の大学
大学進学の際に日米で迷う学生がいますが、理工系の学生にとって日本の大学を選ぶメリットはあまりありません。日本の大学では、物理学科や機械工学科など希望学科を先に決めてから受験します。入学後に専攻を選べる大学でも、学科ごとに定員が設けられており、希望のコースを選べるとは限りません。大学在籍中に極めたい分野が見えてくることが多くあることを考えると、理工科系志望の学生にとって、コース選択に制限がある日本の大学は不向きと言えます。さらに、理工系分野を日本語で学ぶ必要性も決して高くありません。なぜなら、学会発表は英語で行われ、日本企業に就職しても、研究・開発の現場で英語が使われる場合が増えているからです。
一方、アメリカの大学は産業界と密接な「産学連携」を築き、実践的な研究が幅広く行われているため、国内外から優秀な学生が集まります。また、新たに生まれる境界領域の研究を扱う専攻を新設するなど、社会のニーズに迅速に対応する柔軟さも魅力です。さらに、女子学生の比率が高いのも特徴で、カリフォルニア工科大学(Caltech)は学部学生の40%が女子学生、マサチューセッツ工科大学(MIT)にいたっては45%です。これに対し、東京工業大学は11%に過ぎません。
本格的な専攻の学習は大学院で目指す
アメリカの大学は、専攻を決めずアプライしたり、入学後専攻を変えることが容易なのが魅力のひとつですが、すべての専攻が揃った"万能大学"は存在しないため、大学選びが重要であることに変わりはありません。ただし、細かい専攻にこだわり過ぎると必要以上に選択の幅を狭めてしまうことになりかねませんので注意してください。例えば、生化学(バイオケミストリー)を専攻として開講している大学は多くありませんが、生物学や化学まで視野を広げると、勉強できる大学は多くあります。理工系学生にとって、学びたい分野を極めるには学部レベルの教育では不十分で、大学院に進学するのが一般的ですから、もし本格的に生化学を学びたいのであれば、大学院で学べば良いのです。
しかし、理工系の専攻を目指す学生からは「バイオが強い大学はどこですか」「コンピューター・サイエンスを学ぶのに適した大学は?」などの質問をよく受けます。実は、評判や知名度は大学院や研究レベルの評価によるものであり、学部レベルの教育は各校それほど大差はありません。いくら有名大学に進学しても、成績が伴わなければ満足のいく大学院進学は望めませんし、逆に無名大学でも、きちんと成果を挙げれば大学院進学には大いに有利となります。むしろ、博士号課程がなく知名度の低い大学の方が、より質の高い教育を提供している場合があります。ですから学部では、まず自分に合った環境でしっかり基礎学力を高めることを念頭に、大学院進学への準備を行うことが重要となります。つまり、大学進学は"大学院進学の準備"であり、専門領域は大学院で勉強すれば十分ということなのです。
リベラルアーツ・カレッジは工学系学部を持たない大学が多く、理工系学生は研究系の総合大学や理工系に特化した工科大学に目を向けがちです。しかし、実は小規模大学の中にも理工系をしっかり学べる大学はあります。(表参照)小規模校ならではのきめ細かいサポートが自分の専門分野を決めるのに役立つことも多いはず。理工系の学生は、色々なタイプの大学を比較検討し、自分に最も合う大学を見つけてください。