アメリカは世界で最も大学スポーツが盛んな地域であり、アスリートとして活躍することを目指す学生を経済的に支援する、世界でも珍しい「スポーツ奨学金」制度があります。今回は、スポーツ奨学金の獲得方法についてお話しします。
スポーツ奨学金の概要
NCAA(全米大学体育協会)(全米大学体育協会)に所属する大学は1千校以上あります。NCAA(全米大学体育協会)はⅠからⅢの3つのディビジョンに分かれていて、一般的には規模の大きい大学がディビジョンⅠ、小規模の大学はⅡやⅢに属しています。
ディビジョンⅠとⅡの大学ではアスリートのための奨学金制度(スポーツ奨学金)があります。ディビジョンⅢの大学にはスポーツ奨学金はありませんが、その代わりにメリット・スカラーシップの中でアスリートとしての評価が加えられます。なお、アイビーリーグの各大学(ハーバード、イェールなど)はディビジョンⅠに所属していますが、スポーツ奨学金制度はありません。
大学のチームのコーチから選抜(リクルート)され大学のアドミッション審査を通ると、進学が認められスポーツ奨学金が授与されます。各チームが授与できる奨学金の合計上限額は、競技の種類やチームが所属するディビジョンにより、NCAA(全米大学体育協会)で細かく決められています。
例えば、ディビジョンIの女子水泳・飛び込みチームは、14人分までの奨学金が授与できます。この場合の1人分とは、授業料および寮費、食費等を含む1年間の学費の総額です。この金額がチーム所属の学生に分配されるのですが、均等に分配されるわけでなく、チームにおける選手の重要度により受給額は大きく異なります。
ヘッドカウント競技の奨学金
選手への奨学金の配分方法は、原則としてコーチが自由に決められますが、例外もあります。男子のFBSフットボールや女子のテニスなど、ディビジョンⅠの一部の競技では奨学金数と授与学生数が同数になることが義務付けられています。
これらの競技は「ヘッドカウント競技」と呼ばれ、スポーツ奨学金の額は例外なくフルスカラーシップ(学費全額免除)となります。一切学費を負担せずに進学できるので経済的には大きなメリットがありますが、奨学金を授与できる学生数が限られているため、奨学金の獲得はかなりの狭き門です。
スポーツ奨学金の獲得方法
スポーツ奨学金の候補に選ばれるには、自分の存在をチームのコーチに知ってもらう必要があります。何もしなくても大学から誘いを受けるのは一部のトップアスリートだけで、多くの学生は自ら売り込みます。
まずは、自分が興味をもったチームのコーチ宛にメールを書きます。メールでは、簡単な自己紹介に加え、自分の得意な種目や記録などアスリートとしての成果を示します。自分がプレーしているビデオを動画サイトに載せて、そのリンクを示すのも良い方法です。
高校の成績やテストのスコアなど、学習面での成果も忘れずに伝えましょう。大学のコーチにとって、高校の成績はとても重要です。いくらアスリートとして優秀でも、学力面で大学が求める基準に達していなければ、コーチはリクルートできません。
高校で履修したクラスがNCAA(全米大学体育協会)の履修要件を満たしていることも重要です。要件を満たしているかどうかを確認するために、NCAA(全米大学体育協会) Eligibility Center(eligibilitycenter.org)への登録をお勧めします。登録により、履修要件を満たすために何が必要かなども知ることができます。また、大学に対して自分が履修要件を満たしていることを示すことも可能となります。
NCAA(全米大学体育協会)(ncaa.org)のウェブサイトでは、競技種目やディビジョンから、またカレッジボード(collegeboard.org)のウェブサイトでは、アカデミックとアスレチックの両面から大学を検索できます。スポーツ奨学金の獲得を目指すなら、あまり地域は絞らず、「自分を必要としてくれる大学なら全米どこにでも行く」くらいのつもりで、数多くの大学にコンタクトすることをお勧めします。
NCAA競技一覧
競技名 | 男子 | 女子 |
野球 | ○ | - |
バスケットボール | ◎ | ◎ |
ボーリング | - | ○ |
クロスカントリー | ○ | ○ |
フェンシング | ○ | ○ |
フットボール | ◎ | - |
フィールドホッケー | - | ○ |
ゴルフ | ○ | ○ |
体操 | ○ | ◎ |
アイスホッケー | ○ | ○ |
ラクロス | ○ | ○ |
ライフル | ○ | ○ |
ボート | - | ○ |
スキー | ○ | ○ |
サッカー | ○ | ○ |
ソフトボール | - | ○ |
水泳&飛び込み | ○ | ○ |
テニス | ○ | ◎ |
屋内陸上 | ○ | ○ |
屋外陸上 | ○ | ○ |
バレーボール | ○ | ◎ |
水球 | ○ | ○ |
レスリング | ○ | - |
◎ヘッドカウント競技(ディビジョンⅠ)
(2015年9月16日号掲載)