Q. 現地校から日本の高校へ編入。帰国子女枠での大学入試は?
中学2年の息子がいます。高校2年まで現地校に通った後帰国し、日本の高校に編入学の予定です。その後、帰国子女大学入試を受験させたいのですが、現地校(ハイスクール)を卒業しなくても、帰国子女枠は使えるのでしょうか。
A. 出願できない大学もある。現地校に残るという選択肢も。
帰国子女大学入試の現状
帰国子女大学入試は、「青少年期における異文化体験で身につけた個性、各国固有の教育制度下で培われた教養・知識など、国内の学習環境では修得し得ないさまざまな能力を評価」(上智大学)する、帰国子女受け入れのための特別選抜です。現在、日本の4年制大学の約6割にあたる400ほどの大学がこの特別試験を実施しています。
また少子化が進んでいる現在、優秀な学生を獲得するために、従来の推薦入試以外に、AO入試、自己推薦入試など、入試の多様化を進めています。海外子女入試を、そのような入試の中に取り込む大学も現れています。
日本の高校での在籍期間
基本的に帰国子女大学入試は、「海外の高校を卒業していること」を出願条件の条件とするものです。しかし、海外の中学・高校を通じて数年間在籍した後に、日本の高校に在籍しても、受験できる大学は相当数あります。
日本における高校在籍期間について、出願資格の例をまとめてみましょう。
・日本の高校に在籍したことがないことを条件とする
・現地の高校を卒業していることを条件とする
・帰国後の日本の高校での在籍期間を定める
・渡航前後の日本の高校での在籍期間を定める
・海外の学校での在籍期間(継続年数、通算年数)で定める
ここで挙げた受験資格の例からもわかるように、帰国後の在籍期間は、大学によってかなりの違いがあります。必ず各大学の、受験する年度の募集要項で確認してください。
帰国子女を受け入れている大学のうち、日本の高校での在籍を認めない大学は2割程度です。2年間在籍(高校2年の年度初めに編入)で4割程度、1年半在籍(高校2年の夏に編入)で1割弱の大学が、受験を認めています。3年以内、3年未満でも、受験可能な大学が20数校あります。
よって、「アメリカの学校での在籍年数が長ければ、日本の高校へ編入しても、帰国子女大学入試は受験できます」と、質問にはお答えできますが、以下の点には、注意が必要です。
[在籍期間の基準日]
日本の高校での在籍期間を決める際の「基準日」は、各大学でまちまちです。在籍期間の始まりは「本人が帰国した日」なのか、「高校に編入した日」なのか。また、期間の終わりを「出願日」「入試日」「入学日」のどれにするのかなど、同じ大学であっても学部によって異なることがあります。募集要項や、あるいは大学に直接問い合わせて、確認してください。
[入試内容]
国内受験生と同じ内容で、高校編入生向けの試験を課す大学もありますが、海外の高校を卒業した受験生と同じ内容の選考をする大学がほとんどです。
例えば、SATやTOEFLの成績を要求された場合は、それらの受験勉強に加えて、日本の高校を卒業するための勉強が必要になり、受験生の負担が増します。
[高校編入]
基本的に日本の高校への編入は、「欠員補充」だと理解してください。在籍していた生徒が転出した場合に、定員の余裕を満たすための制度が編入です。帰国子女が海外から帰国・編入する場合の定員枠を設けている学校もありますが、ほとんどの学校は「欠員」があった場合にのみ編入試験を実施します。ですから、海外から帰国する場合には、随時編入や、合格後1年間はいつでも編入できる海外入試を実施している高校を選択することが現実的です。
アメリカでの高校卒業
日本の高校に編入した後に帰国子女大学入試を受ける場合、入学金の納付や制服の準備などの雑事、編入後の日本の教科(国語、特に古典や日本史)などの学習、卒業と受験勉強など、親子ともに大きな負担があります。
そういうこともあり、現地の高校を1年早く卒業する「繰り上げ卒業(早卒)」を視野に入れて、高校での履修科目を選択するケースが多く見られます。さらに、保護者が帰国した後も、高校生の子供がひとりでアメリカで就学できるように、学生ビザを発行する高校に転校させる例もあります。お子さんの大学進学を考える際には、このような選択肢があることも考慮してください。
(2006年12月1日号掲載)
Q. 日本の大学への進学を希望。現地校卒業と高校編入の違いは?
A. 帰国生入試以外のチャンスも増加中・高の新入学や編入が可能
帰国生大学入試
この試験は、海外の高校卒業生を対象とした特別入試です。日本の4年制大学の約6割に当たる約400大学で実施されています。
基本的な受験資格は、海外の高校を卒業していることですが、以下に説明するように現地校から日本の高校に編入した場合も、一部大学の帰国生入試を受験できます。そのほか、現地高校の在籍年数などさまざまな条件が出願資格として加わり、それらが出願する大学・学部により大きく異なりますので、受験時の募集要項で確認が必要です。
この試験は、帰国生が海外の高校で体験し、身に付けたさまざまな特性を、受け入れる大学が期待して実施するものです。日本の大学受験ということで、国内の受験生と同じような受験準備が必要と思っている受験生が多くいますが、現地の高校での学習が基本になるということをはっきり認識してください。現地校の受講科目の日々の学習が、帰国生入試合格への近道です。
英語で学べる大学
近年、「英語での講義や授業だけを受けて卒業できる」日本の大学が増えてきました。
その理由の1つ目は、「大学の国際化」です。社会全般の国際化・グローバル化に対応して、英語・国際関係の学部への国内受験生の人気には、相変わらず高いものがあります。この傾向がさらに進んで、日本語が必要なく、英語だけで学べる大学や学部の増加が続いています。それらの大学・学部では、レベルの高い英語での授業を確保するために帰国生や留学生の募集に積極的です。
2つ目の理由は、「留学生30万人計画」に代表される「留学生の確保」です。日本の少子化で、近い将来の国内労働力の不足を補うために海外からの留学生を増やし、卒業後に日本で働いてもらおうという日本政府の計画です。
一般的に、日本の大学への留学希望者には日本語での授業についていけるレベルの日本語力が要求されています。しかし、その日本語力が障害となって留学生が増加しないと考え、日本語が必要ない、英語だけの授業を受けて卒業資格が取得できるプログラムの開設が、国立大学を中心に広がっています。
このプログラムは、基本的に外国人のためのものですが、一部の大学は外国の高校を卒業した日本人(帰国生)の受験も認めています。7月には、東京大学が外国人・帰国子女・インターナショナルスクールで学んだ受験生対象の初めてのAO入試を2012年度から実施する、と発表しました。東大は、帰国生入試も実施していますので、帰国生にはさらなるチャンスとなります。
高校編入生の受験
●帰国生入試
現地校から日本の高校に途中編入した場合でも、一部の大学の帰国生大学入試が受験できます。
高校編入時期と受験できる大学の数は、
①高1・1学期以降:62大学
②高2・1学期以降:94大学
③高2・2学期以降:23大学
④高3・1学期以降:34大学
となっています。
ですから、高1で編入した場合は62大学しか受験できませんが、高3の1学期ではこれらの合計の213大学、帰国生入試を実施している大学の約半数が受験できることになります。
ただし、実際の出願にあたっては、それぞれの大学が「海外(高校)在籍期間」「国内高校の在籍期間」などの条件を別に定めています。さらに、これらの大学のどの学部が受験できるのかも、受験時の募集要項で確認が必要です。
●受験準備が大変
高校編入生は、日本の高校卒業のための勉強と帰国生入試の準備を両立する必要があります。日本の高校に編入後、その高校の卒業のために科目の受講に苦しむ生徒が多くいます。さらに、帰国生入試の受験を希望するならば、国内受験とは大きく異なる受験科目の勉強も必要となる場合があります。これを両立させるための努力が大変だと思ってください。
高校編入生は、帰国後の大学進学のために、多少の余分な努力が必要です。しかし、家庭の事情で高校編入を余儀なくされた帰国生の先輩の多くは、最終的に自分の希望する大学に入学し、素晴らしい大学生活を送っています。
(2011年10月1日号掲載)
Q. 日本の高校に編入予定。帰国子女で受験できる大学は?
A. 高1編入でも受験可能。受入大学の半数が編入でもOK!
高校生の学齢で日本に帰国、 特に高校に編入する場合の学校選択は大変です。
高校編入は、義務教育の小・中学校と違い、数少ない募集枠を目指して、実施時期もはっき りしない編入試験の受験が必 要です。また、帰国した後、目前に控えた大学進学も考えなければなりません。
今回は、日本の高校に編入した場合の大学進学について考えましょう。
編入生の帰国子女大学入試
帰国子女大学入試は、海外の高校の卒業生を対象として始められた特別入試です。そのため、「現地高校卒業」が基本的な受験資格の1つです。
しかし、主に帰国生の増加に より、その受験資格が緩和され、「外国の学校で学んだ後、日本の高校に編入・卒業した者(以下、編入生)」も、帰国子女入試を受験できるようになりました。
その編入生が、帰国子女大学入試を受験できる大学の情報を、下の表にまとめてみました。
編入時期は?
帰国子女大学入試の出願資格として、さまざまな条件が大学(学部)ごとに定められています。
その中で、「海外の学校(小・中・高)の在籍期間」「日本の高校での渡航前、あるいは帰国後の在籍期間」などが、編入生が出願する場合の条件として一般的に決められています。表には、「受験可能な編入時期」別に受験可能な大学数・大学例を示しました。
この表によると、「高校1年、1学期以降」に編入する場合は57の私立大学が受験できます。そして、「高校2年、1学期以降」の編入では57に加えて77、計134私立大学が、「高校3年1学期以降」編入では、175もの私立大学が受験可能です。
「その他」の条件の大学では、 編入時期ではなく、「小学校1年次以上において通算6年以上外国で教育を受けた者」(関西大学総合情報学部)などの海外での学校歴の条件が定められています。この例だと、現地校の小学校で6年間学んだ子供は、中学1年で日本に帰国しても帰国子女として大学受験ができることになります。
また、この表の合計を見ると、200を超える大学が編入生の受験を認めています。この数は、帰国子女大学入試を実施している400大学のほぼ半数にあたります。
その他の入試
編入生は、当然、日本の高校の卒業生として、国内の生徒と同じ大学入試も受験できます。
その中でも、自己推薦形式のAO入試で、入学審査にあたり帰国生の海外での学習・生活体験に特別な配慮をして入学審査をする大学があります。また、海外で習得した英語力を活かして、個人推薦または高校(学校)推薦で、大学進学を果たす帰国生も多くいます。
入試情報での注意
帰国子女大学入試の募集・入試内容は、毎年変更になる場合が多く、それぞれの大学の学部・学科で異なる、と理解して おいてください。
(2010年8月16日掲載)