Q. 文系だけでなく、理系も希望で、 英語で学べる日本の大学は?
A. 国立・早慶上智を含む13大学で、留学生募集。帰国生にもチャンス
留学生30万人計画
この計画は、「グローバル戦略」展開の一環として「2020年をめどに日本への留学生受け入れ30万人を目指す」ために、日本政府が08年に策定したものです。「日本留学への誘い」から「日本留学の円滑化」「大学のグローバル化」「留学、そして卒業後の受け入れ」という一連の推進計画です。そのねらいはズバリ、近い将来、少子化で不足する日本の労働力を、留学生で穴埋めしようとするものです。
グローバル30
「国際化拠点整備事業(グローバル30)」というのは、この「留学生30万人計画」の一環として主に文部科学省が進めている英語による大学の「国際化」です。計画当初は30大学を目指しましたが、09年から下の表に示した13大学(国立7校、私立6校)が選ばれました。選定された大学は、
①英語での受講で学位を取得できるコースを学部・大学院に設置する
②留学生の受け入れ態勢を整える
③大学全体の「国際化」をする
④留学生募集のための「海外拠点」を複数設ける
⑤留学生と外国人教員の数に数値目標を設ける
などを達成しなければなりません。この目標達成のために年2億から4億円の補助金が5年間、文部科学省から支給されます。
英語のみで学び、卒業
これらの大学では、達成目標の一つである、「英語のみでの授業で大学卒業資格や大学院の学位を取得できるプログラム」を昨年から今年にかけて新設し、募集を開始しています。一般的に「英語コース」と呼ばれるこれらのプログラムは、大学によって大きく異なり、文系・理系の学部・大学院のさまざまなコースが提供されています。特に、従来留学生向けに作られてきた「日本語・日本文化」を中心とする文系学部よりも、海外留学にとって魅力的な「本のレベルの高い科学技術」を学べる理科系の学部や研究分野のプログラムが多く開講されています。これらのプログラムが求めている学生は、基本的に外国の高校・大学で学んだ留学生(日本以外の国籍を持っている学生)です。しかし、日米の二重国籍を持つ学生や帰国子女(日本国籍のみ)の出願・入学を認めている大学もあります。出願のためには、高校の成績書や推薦書のほかに、英語力を証明するためにTOEFLなどの試験成績を要求する大学が一般的です。
北米での募集活動
グローバル30は、10年後に迫った日本の労働力不足に向けた日本の国や経済の浮沈をかけた政府の事業です。しかし、大きな補助金に対して、厳しい財政事情を反映した「事業仕分け」で厳しい評価を受けています。その大きな理由は、まだ始まったばかりですが、各大学のプログラムが、非常に限られた留学生しか確保できていない現状です。これまで、日本への留学生は大部分がアジアの国々出身でした。しかし、30万人を確保するためには、ヨーロッパやアメリカでの留学生募集も欠かせません。最近、西海岸の大都市の教育関係者から、「グローバル30 の大学が北米での学生募集活動を活発化させている」との話も伝わってきています。
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「日本語での勉強は無理」と日本の大学への進学を諦め、アメリカの大学進学だけを考えていた高校生(大学生)の皆さんへの、もうひとつのチョイスとして「英語コース」を紹介しました。
(2011年05月16日掲載)
Q. 英語で学び、日本の大学を卒業?現地校から進学可能でしょうか?
A. 大学が増加中で、進学が可能。学科も増えて、就職にも有利。
英語で学べる日本の大学
英語だけの授業を受けて卒業できる日本の大学が増えてきており、学部・専攻は文系・理系の幅広い分野に広がっています。
下に一部の大学のリストを示しました。ここで紹介した大学以外にも、文部科学省が推進する「グローバル30」プログラム(国・私立17大学)などでも英語による授業が開講されています。
国際化と留学生
大学が英語で授業を行うのは、「大学の国際化」と「留学生の確保」が大きな目的です。大学の国際化推進は、日本経済の国際化と、日本の大学の国際競争力の低下への危機感が、大きな原動力となっています。
留学生の確保は、少子化で厳しくなった経営を安定させるため、サバイバルを賭けた、大学の作戦です。また、近い将来訪れる日本の労働力不足を、留学生で補おうとする日本政府の政策もあります。これらを背景に、留学生を増やすため、大学・文部科学省は、英語だけでの特別プログラムを設置しているのです。
しかし、優秀な留学生の確保は多難です。昨年10月入学の東京大学PEAKプログラムは、全世界から238人が応募し、38人が合格。しかし、入学者は、11人減って27人にとどまりました。シンガポール・韓国・中国などからの入学が中心で、アメリカからは2人合格し、内1人は西海岸の有名大学に進学しました。世界の高等教育のリーダーを目指した東大PEAKでしたが、入学辞退者が約3割も出るなど、国際的な学生獲得競争にさらされています。
英語と教養
紹介した大学リストの半数以上が、「教養(リベラルアーツ)教育」を行う学部・専攻であることに注目です。
英語での教育は、「グローバル言語」としての英語の運用能力を高めるだけでなく、英語での学習内容を通して、学生に国際性も身に着けさせる目的があります。さらに教養教育では、急速に変化する社会を生き抜くために必要な、専門分野に偏らない、幅広い分野の知識なども含めた、高レベルのコミュニケーション・スキルなどを、学生に学ばせるものです。
就職に有利?
「大学での人材育成について」のアンケート調査が実施され、主要企業136社から回答がありました(日本経済新聞、2012年7月)。この調査で、「人材育成の取り組みで注目する大学」が「ある」と回答した60社の内、35社が国際教養大学を、13社が東京大学、10社が立命館アジア太平洋大学(APU)を挙げました。また、「大学教育に求めるもの」への回答で、「教養教育」(73社)、「コミュニケーションを高める教育」(67社)、「在学中の留学支援」(34社)などへの期待が高い結果となりました。
東大の3倍近い支持を集めた国際教養大学は、英語での授業、1年間の海外留学を学生に課しています。APUでは、外国人留学生が約半数を占め、講義の8割が日・英両語で行われています。
社会・企業のニーズを満たす、教養と国際性に注目した教育を提供する大学が高い評価を得て、大きな就職実績を上げています。
英語で学べる大学は、レベルの高い英語力・英語での学力を求めています。受験・進学を希望する高校生は、「現地校での学習が最も大切だ」と、よく認識してください。
英語で学べる日本の大学(一部)
大学名 | 学部・学科・コース・プログラム | 所在地 |
---|---|---|
国際教養大学 | 国際教養学部 | 秋田県秋田市 |
会津大学 | コンピュータ理工学部 | 福島県会津若松市 |
立教大学 | 国際経営学科「BBL] | 東京都豊島区 |
早稲田大学国 | 際教養学部 | 東京都新宿区 |
明治大学国 | 際日本学部 | 東京都杉並区 |
上智大学国 | 際教養学部国際教養学科 | 東京都千代田区 |
法政大学 | グローバル教養学部 | 東京都千代田区 |
東京大学 | 教養学部「PEAK」 | 東京都目黒区 |
国際基督教大学 | 教養学部アーツ・サイエンス学科 | 東京都三鷹市 |
中央大学 | 総合政策学部 | 東京都八王子市 |
多摩大学 | グローバルスタディーズ学部 | 神奈川県藤沢市 |
京都大学 | 工学部地球工学科国際コース | 京都府京都市 |
同志社大学国 | 際専修コース | 京都府京都市 |
立命館アジア太平洋大学 | アジア太平洋学部 | 大分県別府市 |
宮崎国際大学 | 国際教養学部比較文化学科 | 宮崎県宮崎市 |
注:上記掲載以外の大学もあることをご承知おきください。
それぞれの大学・学部へのリンクは、www.infoe.jpからどうぞ。
(2013年3月1日号掲載)