日本への本帰国・永久帰国「帰国前の準備と手続き」編

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アメリカから日本に帰国するために、事前に知っておかなければならない情報や日本での住まい探し、帰国後の行政手続きなどについてまとめました。可能であれば、早くから引っ越し会社、保険会社、会計士、弁護士などの必要な専門家を選定しておくとよいでしょう。
※本特集はあくまでも一般的な情報です。詳細は個々の事情によって異なるため、専門家にお問い合わせください。

※本コンテンツは「ライトハウス・ロサンゼルス版2021年2月1日号」に掲載されました。

日本の住まいを探す

普通の住宅を探すなら地域を絞り込む

住宅

老後を日本で過ごす場合、帰国前の準備の中でも重要な鍵となるのが住まい探しです。帰国後の住まいの選択には大きく分けて、実家/自宅などの普通の住宅と介護付き高齢者向け住宅の2種類があります。
 
日本の不動産を取り扱っているアライド・インベストメント株式会社代表の和田一之さんは、数年前からロサンゼルスで帰国者のための不動産セミナーやコンサルテーションを行っています。「日本でマンションや戸建てなど、普通の住宅を探す際のコツは、できるだけ地域を絞り込むこと。アメリカに住んでいる方は、コンサルテーションでお伺いすると、病院やスーパーマーケットが近くにある、緑が多い方がいい、といった漠然とした要望はあっても、どんな地域に住みたいかがはっきりしていないことが多いです」(和田さん)。もちろん、いきなり地域を限定することは難しいため、例えば実家の近くがいい、温暖なところに住みたい、海が見える場所がいいなど、条件に合った都道府県や市町村を選び、そこから利便性はどうか、病院やスーパーマーケットはあるか、マンションまたは戸建てか、予算内かなど、細かな条件と照らし合わせていくと、具体的な物件を選定しやすくなるそうです。帰国後の住まいについて明確な要望がない場合は、まずは住みたい地域の条件をリストアップし、インターネットで情報収集をスタートしましょう。

賃貸か購入か、マンションか戸建てか

気に入った物件を借りるか購入するかは悩ましいところ。それぞれに良し悪しがありますが、賃貸の場合は、実際に住み始めたものの、さまざまな理由から満足できないとなっても、容易に住まいを移ることができます。「何かしら不安がある場合は、まず賃貸物件に住み、そこを拠点として理想の住まいを探す方法もあります」(和田さん)。
 
一方、購入の場合は資産となるため、現金化したり、将来老人ホームなどに入居する際に売却して費用に充てたりすることも可能です。購入する際は、資産価値を維持できる物件を選ぶことも大事なポイント。「特にロサンゼルスでは、不動産は築年数にかかわらず資産価値が上がっていく傾向にありますが、日本では経年劣化などで資産価値は下がっていくケースが多いので、資産性を高く維持できる物件を探すことをお勧めします」(和田さん)。
 
また、マンションと戸建てを選ぶ基準は個々の事情で変わってくるものの、マンションの最大のメリットは、値段が下がりづらく査定が明確なこと。そして将来売却する際に売りやすいことです。デメリットは、たとえ購入しても月々の共益費がかかる点です。「戸建ては好きな間取りやバリアフリーに改装できるので、アメリカで戸建てに住んでいた方にはよいと思います。しかし、年齢を重ねると維持が困難になり、また改装した物件は売却しづらいといったデメリットもあります」(和田さん)。
 
そして、住まい探しの指南役となる不動産会社選びは、アメリカ在住者との取り引きに慣れているところを選ぶことも大切です。「時差を考慮したり、円建てで送金する際に為替市場を見据えてよいタイミングをお伝えしたり、アメリカに住んでいる方の状況を理解しサポートしてくれる会社を選ぶとよいでしょう」と和田さんはアドバイスします。

和田一之氏

【取材協力】
代表 和田一之さん
アライド・インベストメント株式会社
東京都中央区銀座1-20-1 オーキッド銀座2階
Tel:日本語(日本81)3-6228-7745 / 英語(日本81)80-7058-3050
E-mail:info@a-ivt.com
Webサイト:a-ivt.com

介護付き高齢者向け住宅、その種類と特徴

介護付き高齢者向け住宅

普通の住宅以外の住まいは、高齢者向け住宅です現在日本には、サ高住や有料老人ホームなど、さまざまな種類があり、サービス内容も多様化しています。
 
◎サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)
バリアフリー構造、安否確認など、一定の基準を満たしている高齢者向けのシニアマンション。比較的自宅に近い生活を送りながら、必要に応じて訪問介護などの福祉サービスを利用することができます。
 
◎有料老人ホーム(介護付き/住宅型)
民間が運営する施設。介護保険が利用でき、ホームのケアマネージャーが利用者に合わせて立てた介護計画に沿って介護を受けられます。介護付きは介護度に応じたパック料金制、住宅型は使った分だけ支払う積み上げ料金制です。
 
◎特別養護老人ホーム(特養)
地方自治体や社会福祉法人が運営する施設。入居対象者は歳以上で、要介護以上(例外あり)。費用は、1カ月で6~20万円程度で、所得に応じて食費・居住費の補助があります。
 
◎介護老人保健施設(老健)
医療法人、社会福祉法人、地方公共団体などが運営する施設。病院などからの退院後、自宅に戻るまでの療養・リハビリを兼ねて一時的に利用します。3カ月程度の利用限定です。
 
◎介護療養型医療施設
医療法人や地方自治体などが運営する施設。病状は比較的安定しているものの、長期療養が必要な高齢者が利用します。介護保険の改正に伴い、介護医療院が新設され順次移行しています。
 
◎軽費老人ホーム
社会福祉法人や地方自治体が運営。介護を必要とせず自立した生活を行うことができるものの、いろいろな事情で家庭生活が困難な人を低料金で受け入れています。施設には食事を提供する「A型」と提供しない「B型」があります。
 
◎グループホーム
認知症の人が利用できる施設です。認知症の進行を和らげることを目的にしていますが、医療ニーズが高くなると利用できなくなることがあります。
 
※「介護付き高齢者向け住宅 その種類と特徴」監修:東向勲さん(日本ライフパートナーズ協会代表)

東向 勲さん

【取材協力】
代表理事・行政書士
東向(ひがしむき) 勲さん
日本ライフパートナーズ協会
大阪府大阪市中央区備後町3-4-8-303
Tel:(日本81)6-6484-6814
Email:info@jlp-a.com
Webサイト:jlp-a.com

日本に合法的に住むために

市民のための在留資格申請 身元保証人と申請代理人選出

日本に合法的に住むために

永住権保持者は、国籍が日本なので問題ありません。しかし、市民権を所持している人が日本に中長期滞在する場合は、在留資格が必要です。在留資格の種類は「就労」「留学」「日本人の配偶者等」などさまざまですが、通常、申請準備から取得までは5カ月ほどかかります。「申請書を作る際に、所得、貯金、財産をはじめ、日本にいる家族の情報や入国回数など細かい情報が必要なのでなるべく早めに行いましょう。また、日本人からアメリカ市民になったという場合は、比較的早く日本での在留資格が許可されやすいのですが、それ以外(最初からアメリカ市民だった人など)は、時間がかかることが多いです」と説明するのは、海外在住日本人ための永久帰国支援サービスを行っている特定行政書士の河野澄男さんです。
 
在留資格を取得したら、アメリカでビザ申請の手続きを行い日本に帰国しま。また、観光などで日本に入国してから中長期の在留資格を申請し取得する方法もあります。いずれの場合も、日本に身元保証人が必要です。
 
身元保証人の役割は、申請者が日本で円滑に生活するために保証(生活費や日本の法令遵守など)すること。親族が好ましいですが、それ以外の日本人か永住者でもOKです。そして、もし申請者がアメリカにいる場合は、申請代理人を立てます。申請代理人は6親等以内の血族が務め、申請者の代わりに在留資格申請書に署名します。身元保証人は在留資格申請時に必須なので、早くから家族や友人などに依頼しておきましょう。また、申請代理人がいない場合は、本人が一時帰国して手続きをしなけばなりません。
 
河野さんによると、在留資格に申請すると、まず「在留資格認定証明書」が発行されるのですが、コロナ禍のためビザの発給には時間がかかっているそうです。「人道的かつ緊急性がある場合は、早めにビザが出ることもありますが、日本への帰国を決めたら、早期に申請手続きを行うことをお勧めします」。
 
また、日本人からアメリカ市民になっている場合は、日本の国籍喪失届を出しているかを確認しておくこと。「国籍喪失届は、アメリカ市民になってから3カ月以内に領事館に提出しておく必要があります。在留資格申請時には日本の戸籍も確認されるので、もし国籍喪失届が出ていないと申請が受理されません。なお、国籍喪失届を提出してから1~3カ月ほどで戸籍に反映されるので早めに行いましょう」(河野さん)。
 
ちなみに、在留資格を取得しても、有効期間は1~5年で更新が必要です。「永住」または日本国籍を取得する「帰化」を選ぶ場合は、以下のような条件があります。
 
◎永住
原則日本に10年以上居住(元日本人の場合は短縮されます)。
 
◎帰化
原則日本に5年以上居住(元日本人の場合は短縮されます)。
 
詳細は行政書士や弁護士などに相談しましょう。

河野 澄男さん

【取材協力】
特定行政書士
河野 澄男さん
アミティエ行政書士事務所
東京都杉並区松庵3-35-23
Tel:(日本81)3-6794-9462
E-mail:info@amitie-gyosei.com
Webサイト:amitie-gyosei.com

アメリカに戻る可能性がある永住者は「再入国許可書」申請を

住権保持者が永久帰国した後も、日本での生活に馴染めない、健康なうちは両国を自由に行き来したいなどという理由からアメリカに戻ることも考えられます。そのような可能性がある場合は、「再入国許可書」(Re-Entry Permit)の申請・取得をしておきましょう。
 
再入国許可書とは、アメリカ国外に長期滞在していてもアメリカに戻る意思があることを表すことによって、永住権を保持することができるもの。1回の申請で最長2年間までアメリカ国外に滞在することができます(発行日から2年間)。申請料は660ドル(2021年1月現在)で、申請から指紋採取までは、通常の場合4~6週間ですが、コロナ禍では2~3カ月ほどかかります。指紋採取後は出国できます。なお、指紋採取は、コロナ禍のため新規申請・更新問わず免除されている場合もあります。現在、許可書の申請から発行までは3~6カ月間ほどです。アメリカ国外での滞在が2年間以上になる場合は、2年以内にアメリカに戻り再度申請します。3度目以降の申請は1年のみの国外滞在が許可されます。
 
「再入国許可書」を発行後、実際に日本に住んでみてアメリカに戻る可能性がなければ、その時点で永住権を放棄する選択肢もあります。また、もし永住権を放棄しても、アメリカ市民権を持つ21歳以上の子どもをスポンサーにすれば、半年から1年ほどで永住権を再取得することも可能です。

瀧 恵之さん

【取材協力】
移民法弁護士
瀧 恵之さん
瀧法律事務所トーランスオフィス
21221 S. Western Ave., #215, Torrance
Tel:310-618-1818
E-mail:info@takilawoffice.com
Webサイト:www.takilawoffice.com
※ロサンゼルス、オレンジ・ カウンティ―にもオフィスあり

アメリカの税務・確定申告の確認

帰国後の日米確定申告、どうすればいい?

米国確定申告

市民権および永住権保持者が日本に帰国して暮らす場合、税金に関しても注意しておかなければなりません。米国公認会計士の石上洋さんは「市民権および永住権保持者は、税務上では居住者とみなされ、確定申告の内容は、アメリカや日本を含む全世界の所得が課税対象となります」と説明しています。
 
(例)2021年6月に帰国した場合
◉アメリカで、2021年1月1日~12月31日までの全世界の所得を申告する。
◉日本で、帰国した日から12月31日までの全世界の所得を申告する。
 
2022年以降も、市民権および永住権保持者は、アメリカと日本の両国で申告を行う必要があります。
 
もし、市民権または永住権を放棄した場合は、税務上もアメリカの非居住者となるため、日本での申告場合は、その年の1月1日から放棄した時点までアメリカで申告し、以降は日本で申告することになります。ただし、アメリカに不動産があり、家賃収入がある場合は、たとえ放棄していても、アメリカに申告義務があります。
 
また、ソーシャル・セキュリティーを受給している場合は、日本に帰国しても課税対象となります。放棄した後は、日本で課税され、アメリカでは非課税になります。
 
▶アメリカでのタックスリターン(確定申告)についてはこちら

資産がある人や長期米国滞在者も対象に。「出国税」とは

アメリカの税務・確定申告の確認

たとえ市民権または永住権を放棄しても、放棄した年に不動産などの資産(全世界で200万ドル以上)があると、含み益のある資産を売却していないのに、売却したとして出国税(Expatriation Tax)が課税されることがあります。「ほかにも、過去5年間の平均所得税額が17万1000ドル(2020年度)を超える人、過去15年間で8年以上アメリカに居住していた人も含まれるので注意してください」(石上さん)。

家を売却するタイミングで税金が変わる?

帰国を機に自宅を売る場合は、税金面を考慮し帰国前の売却がお勧めです。石上さんによると、日本にも自宅を売却した際の税優遇措置があるのですが、アメリカよりも課税額が大きいとのこと。また、アメリカでは、基本的に自宅として長年住んだ不動産を売却する場合、売却益に対して最大万ドル(夫婦合算)の控除がありますが、市民権または永住権を放棄してしまうと、この控除がなくなるため、放棄前に売却した方が良いようです。
 
「市民権または永住権放棄のタイミングによって、税金面で有利になることもあるので、帰国を決めたら、事前に税理士や会計士に確認し対策を立てておくことをお勧めします」と石上さんは助言します。

石上洋氏

【取材協力】
米国公認会計士
石上 洋さん
石上、石上&越智公認会計事務所
2377 Crenshaw Blvd. #315, Torrance
Tel:424-247-2014
E-mail: contact@iiocpa.com
Webサイト:www.iiocpa.com

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