個人と企業の可能性をグローバルに広げることが、私のミッション。
奈良県産の高品質な靴下を、北米を中心に世界各国で販売する「tabbisocks」。従業員は4人と小規模ながら、WalmartやUrban Outfittersをはじめ400社以上と取り引きをする同ブランドの代表、和田麻亞璃さんにお話を伺いました。
(2017年7月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版掲載)
―渡米のきっかけは?日本では何をされていたのでしょう?
和田麻亞璃さん(以下、和田麻亞璃):日本では貿易事務の仕事をしていました。渡米は当時の彼(現在の夫)がシリコンバレーに転勤となった際、遊びに来たことがきっかけ。居心地が良くて居座ってしまいました(笑)。
―渡米後、「tabbisocks」を始めるまではどんなことを?
和田麻亞璃:渡米して約5年は、アメリカの洋服を買い付けて「ヤフオク!」や「楽天市場」で売ったり、日本の問屋に卸したりしていました。最初はセレブが着る、まだ日本に入っていないようなブランドを扱っていたのですが、その後、日本にはない特大サイズの服を日本人向けにネット販売するように。SmallやMediumの服はどこでも手に入りますが、特大サイズの服はそうもいかないので、固定客を作りやすいと思ったのです。この目論見は当たり、月1000万円の売上を出すビジネスとなりました。
―「tabbisocks」を始めたきっかけは?アイデアはどのように生まれたのでしょう?
和田麻亞璃:私が今も恩人と慕う方に、ある時言われたんです。「あなたは洋服を仕入れて売る、仲介役に過ぎない。それではある程度成功しても、大きな富は築けない」と。続いて、アメリカで富を作る方法を伝授されたのですが、それは、①Dig(掘る)=温泉や石油、ダイヤモンドなどの地下資源、②Grow(育てる)=農業や畜産業、③Make(作る)=何か自分だけのオリジナルなものを作る、の3つでした。
①②は難しいので、③しかないな、と考える中、着目したのが靴下。アメリカの靴下ってすぐゴムがダメになったり、やぶけたりしてしまいますよね。デザインも良くないものが多いですし。日本で3本1000円で買った安い靴下を履いていても、「その靴下、いいね」とアメリカ人に褒められたり(笑)。ファッション分野が既に成熟しているアメリカでも、靴下ならまだ参入の余地があると思ったんです。そこで目をつけたのが靴下の生産量日本一の奈良県。ここで作った高品質な靴下をアメリカで展開すれば、うまくいくかもしれないと考えました。
―今では400社以上と取り引きする大きなビジネスになりました。その要因はなんでしょう?
和田麻亞璃:うちはとにかくデザインが生命線なのですが、「日本の靴下だから和柄の靴下で勝負!」みたいなことはしませんでした。なぜなら、和柄ではブームは起こってもそれを定着させるのは難しいから。あくまでも「破れにくい」「フィット感がいい」など品質は日本クオリティーながら、柄はアメリカ人向けに開発したのが良かったと思います。また、オシャレ過ぎても一部の人にしか受け入れられないので、多くのアメリカ人にウケるデザインを意識してきました。例えば、ハート柄などは日本ではちょっとダサいかもしれませんが、アメリカではよく売れるんです。
あと、ここ数年は通常の営業に加えてマーケティングにも力を入れていて、約50人のファッションブロガーと契約しています。彼らから靴下に関する意見をもらって商品開発に生かしているほか、うちの商品を履いて「Instagram」に投稿してもらうなどのPRも行っています。
―アメリカでビジネスをする魅力と、難しい点をそれぞれ教えてください。
和田麻亞璃:北米という大きなマーケットが魅力的なのはもちろん、一度英語でビジネスを始めると、カナダやイギリス、オーストラリアなどほかの英語圏の国にも手を広げやすいのが大きな魅力だと思います。逆に難しいのは、私がアメリカ人の価値観を持っていないことや、英語が完ぺきでないこと。ただそこは無理をせず、先ほどの話のようにブロガーに意見を求めたり、営業はアメリカ人の代理店にまかせるなどして補っています。大事なのは、自分個人の「できる、できない」でビジネスの可能性を制限しないこと。いいアイデアがあればとにかく自由に広げて、足りない部分をどうするかは後から考えればいいんです。
―今後の展望は?
和田麻亞璃:展望というか、最近始めたことがあって。靴下のデザインは外部デザイナーに依頼しているのですが、これまで、1つの柄に対していくら、というふうに報酬を支払っていたんです。でも、ヒット商品をデザインした人にはもっと報いたくて、「SockNation」というブランドを立ち上げました。同ブランドのデザインは世界中の誰もが参加でき、採用したら1足売れるごとに売上の15%をデザイナーに還元します。これに参加することで、多くの人に自分の可能性を広げてもらえたらと思っています。また、弊社が持つ400社以上の流通網をシェアすることによる個人と企業の販売サポート、海外進出コンサルティングなどにも力を入れていきたいです。
※このページは「2017年7月1日号ライトハウス・ロサンゼルス版」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。