麺はゆで過ぎ、ミートボールがゴロゴロ…。「アメリカのパスタっておいしくないんじゃない?」なんて、いやいや、そんなことはありません。ロサンゼルスはいまやグルメ都市。ちょっと足を延ばしてでも食べに行きたくなる、おいしいパスタのお店を13軒ご紹介します。(2017年10月16日号ライトハウス・ロサンゼルス版掲載)
1. Cento Pasta Bar / セント・パスタ・バー
シェフの才能あふれるクリエイティブパスタ
ダウンタウンロサンゼルスのワインバーMignonの中で、ランチタイムにパスタだけを提供する小さなお店。切り盛りするシェフのアヴナーさんは、ロサンゼルスでイタリアンといえば名前が挙がるSottoとBestiaの両店で修行した経験の持ち主。メニューは多くないものの、旬の食材を用いた週替りのパスタはクリエイティブな発想にあふれています。
![]() 「Ricotta Gnocchi Lamb Ragu」($15)は、ニュージーランド産のジューシーなラム肉のラグーソース。シソのように見える緑は刻んだミントで、ほんのり爽やかな後味が印象的。
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![]() 「Ricotta Gnocchi Sausage」($15)は、ジャガイモと小麦粉をこね合わせたモチモチのニョッキに、粗挽きソーセージとキノコを合わせた秋の一品。リコッタチーズのソースの適度な酸味とクリーミーさが絶妙。
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2. Rossoblu / ロッソブル
![]() シェフのスティーブ・サムソンさん ©Wonho Frank Lee
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ロサンゼルスで出会う素朴なボローニャの味
Sottoで名声を獲得したシェフのスティーブ・サムソンさんが、今年5月に再開発の進むファッションディストリクトにオープンしたお店。スティーブさんの母方の故郷ボローニャのあるエミリア=ロマーニャ州のパスタは、素朴ながら素材の良さをしみじみと感じられます。
![]() 「Maltagliati」($22)。イタリア語で「Tagliare」には切るという意味があり、マルタリアーティとは「上手く切られていないパスタ」だとか。パスタの切れ端のような四角い麺に、タンポポの葉とキノコ、イタリア北部特産のグラナチーズを合わせ、さらにロマーニャ名物の葡萄シロップ「Saba」をほんのり効かせたグルメ垂涎の一皿。 ©Ed Anderson
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![]() エミリア=ロマーニャ州をはじめイリア北部でよく食べられる「Tortelliniin Brodo」($22)は、スティーブさにとってはイタリアのおばあちゃの味。スープに使われているだし(ロス)はイタリア料理ではブロード呼ばれ、チキンとビーフのエッセンが凝縮されています。 ©Ed Anderson
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![]() ©Ed Anderson
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3. Sotto / ソット
![]() キュイジーヌシェフのクレイグさん
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濃厚なラグーソースを穴あきパスタに絡ませて
2011年にスティーブ・サムソンさんとザック・ポラックさんが立ち上げたSottoは、ロサンゼルスのイタリアン風景を塗り替えたお店と言われています。伝統的なイタリア料理の手法をベースに、アメリカの食文化、そしてカリフォルニアの素材を生かした料理は今も他の追随を許さず、ロサンゼルスの食通たちを唸らせています。
![]() 「Rigatoni」($24)。リガトーニとは、直径1.5cmほどの穴の開いたチューブのようなショートパスタ。チキンレバーが溶け込んだ茶色のラグーソースには、ポルチーニ茸の風味が加わった濃厚なソースがよく絡み、一口食べるごとに幸せな気持ちに。
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![]() 店奥にはイタリアワインがズラリ。そのリストで「ロサンゼルスマガジン」の「One of the Best Places to Drink Italian Wine in LA」に選ばれています。
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4. Alimento / アリメント
![]() 実力派シェフ、ザック・ポラックさんはロサンゼルス生まれ。 ©DYLAN + JENI
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洗練された極上のショートパスタ
フィレンツェで修行後、ロサンゼルスの伝説的ニューアメリカンのお店Graceで経験を積んだシェフ、ザック・ポラックさんのお店。シンプルでユニークなTortelliniなど、洗練されかつ遊び心あるパスタメニューが特徴的で、さまざまな国の料理を食べ慣れたアンジェリーナたちの味覚をくすぐります。
![]() 伝統的なイタリア料理では、ブロードのスープに折りたたまれたトルテリーニが浸っているのが「Tortellini in Brodo」なのですが、同店のトルテリーニ($16)はその逆。なんと、トルテリーニを口にふくむとジュワーっとブロードがあふれ出す驚きの仕掛け。 ©DYLAN + JENI
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![]() 「Whole Wheat Bigoli」($15)のビゴーリとはイタリアのヴェネト州でよく食べられている極太パスタ。噛んだ時のモチッと感と、小麦をまるごとすりつぶした全粒粉ならではのザラッと感のある太麺を、トマトソースと松の実で味わうシンプルな一皿。 ©DYLAN + JENI
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![]() ©DYLAN + JENI
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5. Bestia / ベスティア
![]() 妻のジュネヴィエーヴさん(左)と、夫のオリ・メナーシュさん(右)。オリさんはロサンゼルスのカリスマ料理家ナンシー・シルバーストーンさんの店、Pizzeria Mozzaで修業した経験の持ち主。©Sierra Prescott
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お皿まで舐めたくなる魅惑のソース
近年常にロサンゼルスのベストレストランに推薦されるBestiaの名には、スペイン語で「獣のような」という意味があるとか。ロサンゼルスのイタリア料理店で働いていたジュネヴィエーヴさんとオリさんの出逢いから始まったお店は、正統派イタリアンとはひと味違う個性的なメニューで、前菜からピッツア、パスタ、デザートまで、食欲をそそられた人々が集まってきます。
![]() 「Agnolotti alla Vaccinara」($21)。アニョロッティとはラビオリのような袋状パスタ。サフランを練り込んだ生地の中には煮込んだオックステールがギュッと詰まっています。ラカントの果実味が溶け出したバターのソースと一緒にどうぞ。 ©Sierra Prescott
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![]() 「Cavatelli alla Norcina」($29)のカヴァテッリとはシチリア島でよく作られるパスタ。棒状に伸ばした生地を短くカットして成形した手作りパスタは、うどんのような食べ応え。生ソーセージに黒トリュフの香りが広がるリッチなソースで召し上がれ。 ©Sierra Prescott
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![]() ©Sierra Prescott
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6. Union Restaurant / ユニオン・レストラン
![]() トマトとニンニクと唐辛子の「Spaghetti Alla Chitarra」($19)。キターラは、木枠の間にギターのように張った弦を通してパスタを切るので麺の断面が四角いのが特徴です。コシが強く歯ごたえのあるパスタに、シンプルなトマトソースを合わせるのが北イタリアの食べ方。
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小麦粉にこだわった丁寧なハンドメイドパスタ
オールドパサデナの裏通り、Union St.沿いの小さなお店。シェフのブルース・カルマンさんのハンドメイドパスタへのこだわりは、まず小麦粉にあります。地元パサデナの小麦粉店、Grist & Tollで挽いた小麦粉を使い、約20種類以上のパスタを作り出します。
ニュージャージーのイタリアンレストランでシェフとしてのスキルを磨いたブルースさんによる、イタリア料理の技術とカリフォルニア食材のコラボレーションをお見逃しなく。
![]() イタリアのローストポーク、ポルケッタ。同店のシグネチャー「Porchetta」($36)は、一日数量限定。低温でじっくり焼いた豚肉のとろけるような脂を、ローズマリーなどのハーブを使った特製サルサでさっぱりさせた、大満足の一品。
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![]() オーナーのマリー・ペチュラさんとブルースさんは、ダウンタウンロサンゼルスの「Grand Central Market」で話題のパスタとサンドイッチのお店、Knead & Co. Pasta Barも手掛けています。
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7. Pasta e Pasta by Allegro / パスタ・エ・パスタ・バイ・アレグロ
![]() 18歳からレストランの厨房に立ってきたシェフの都築さん。
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日本のパスタが恋しくなったら
今年、リトルトーキョーのホンダプラザ内に日本から進出したイタリアンレストラン。日本と同じ味付けで提供するメニューには、和風パスタやペペロンチーノなど定番が揃います。しかも、日本人に馴染み深い細麺のスパゲッティーニがしっかりアルデンテで出てくるのはうれしい限りです。麺が一皿130gとボリュームたっぷりなところが、唯一日米で違う点だとか。混雑したランチタイムでもササッと出てくるスピード感は、さすがの日本クオリティーです。
![]() 「Mentai Japanese Cream」($16)は、マッシュルーム、シメジ、舞茸、エリンギの4種類のキノコを、プチプチの明太子クリームソースでまとめたザ・和風パスタ。ちょこっと加えた刻み海苔や青ネギもいい仕事をしています。
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![]() 「UNI(Sea Urchin)Pasta」($24)は、シェフの都築さんがロサンゼルスでいくつかのウニパスタを試したところ、納得できる味に出逢えなかったことから始めた自信作。鮮やかなオレンジのウニソースは濃厚で、粗挽きの胡椒がさらにその味を引き立てています。
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8. Bettolino Kitchen / ベットリーノ・キッチン
![]() 妹のアンドレアンナさんと、兄のヴィンスさん。
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モダンイタリアンの秋の味覚
オーナーのヴィンスさんとアンドレアンナさん兄妹は、祖父がサウスベイの老舗イタリアンGiuliano’s Deliを創業、両親がレストランGaetano’sを立ち上げたというイタリアンレストラン一家の生まれ。そんな誰よりも伝統のイタリアンを知る二人が、ミシュランの星を得たシェフと一緒に立ち上げた同店のコンセプトは「New Modern Italian」。カリフォルニアの旬の食材を新しい切り口で楽しませてくれます。
![]() この秋の新メニュー「Gnocchi alla Zucca」($19)は、バターナッツスクウォッシュを使った一皿。かぼちゃの控えめな甘みと、フェンネルを混ぜ込んだソーセージのしょっぱさが絶妙な組み合わせ。仕上げに絡めたセージの爽やかな香りもアクセントです。
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![]() 「Fazzoletti」($17)は、トマトやアスパラ、マッシュルームなどの野菜の旨味がモチモチの麺に馴染んだ、野菜たっぷりの一皿。ちなみにファッツォレッティとはイタリア語で「ハンカチ」を意味し、ハンカチを折りたたんだように正方形のパスタが重なっています。
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![]() 毎週水曜日はコルケージ無料。しかも、お店の隣はリカーショップのBevmoというワイン好きには絶好のロケーション。
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9. Mama Terano / ママ・テラーノ
![]() 祖母のミリー・テラーノさんと祖父のロバートさん。1960年撮影。
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イタリアマンマの味をシーフードパスタで堪能
パロスバーデスの丘の半ばにある、昔ながらのイタリアマンマの味を楽しめる落ち着いたお店。オーナーのロバートさんが「イタリアからの移民だった祖母がニューヨークで営んでいたイタリア料理店の味を伝えたい」とこの地にオープンしたのは2010年。以来、家族での食事や、ちょっとしたランチにいいお店、となると名前が挙がる人気店です。
![]() 平麺のリングイネをプリプリのエビと食べる「Linguine-Shrimp Scamp」($17)。オリーブオイルと白ワインに、ガーリックとエビの旨味が加わったソースは、パンに染み込ませて最後の一滴まで食べ尽くしたくなるおいしさ。
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![]() 麺が見えないくらいアサリがたっぷりの「Linguine-Manila Clams and Sausage」($19)は、さらにそこにイタリア料理でおなじみの塩漬け肉パンチェッタも加わった魚介と肉の豪華パスタ。サフランとクミンシードのエキゾチックな香りも食欲を刺激します。
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![]() 店内にはゆったりしたソファ席、庭にはテラス席もあります。
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10. Primo Italia / プリモ・イタリア
![]() シェフのミケランジェロさん。
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これこそ本当のイタリアン!自信あふれるボロネーゼ
数々の有名イタリア料理店で腕を振るってきたミケランジェロ・アリアガさんを迎え、今年オープンしたばかりの同店。伝統的な本物のイタリアンをアメリカで再現したいという思いで、1300年代のレシピや調理技法まで研究しているというから驚きです。ピチやテスタローニなどのユニークなパスタはどれもホームメイド。サウスベイで本気のイタリアンを食べるなら、絶対に外せないお店です。
![]() 自家製バジルソースの「Testaroli al Pesto」($15)は、イタリアで最古と言われているこねないパスタ、テスタローリを合わせます。熟成させたパルミジャンチーズのコクが相性抜群。 ©Anne Fishbein
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![]() 黒トリュフをふんだんに使った「Picci Toscani Tartufo Nero」(時価)は、同店のシグネチャーの一つ。ピチは手で転がして伸ばした太麺で、モッチリとした食感が日本人好み。 ©Anne Fishbein
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![]() 毎週金曜&土曜はライブ演奏あり。
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11. Pizzeria Ortica / ピッツェリア・オルティカ
ピッツァがおいしいとパスタもおいしい!?
サウスコーストプラザの東側にある同店は、2016年の「Golden Foodie Awards」のベストイタリアンに選ばれた実力店。Sottoのスティーブさんも関わる同店では、イタリアでパン酵母による発酵技術が確立する以前の、約300年前の発酵種「Biga」をピッツア生地に用いるこだわりよう。ピッツァはもちろんパスタもおいしいと評判です。
![]() パスタの中心に穴が開いた「Bucatini」($16)は、ローマ周辺の地方でよく食べられる直径5ミリほどの中太麺。しっかりとアルデンテに茹でられたブカティーニに、フェンネルの花粉が甘く香るスペアリブのラグーと、シャキシャキとした食感のサヤエンドウは最高の組み合わせ。
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![]() 「Margherita」($15)は、薄過ぎず厚過ぎない生地のしっとりした食感がなんともたまりません。生地の発酵に「Biga」を使うことにより、どこか香ばしい風味が感じられます。具材はシンプルにトマトとチーズとバジルだけで大満足。
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12. North Italia / ノース・イタリア
![]() Gigli(ジッリ)やRadiatori(ラディアトーリ)など、さまざまな種類の手作りパスタ。
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フリフリ ヒラヒラ 可愛いパスタ
2002年の創業以来、カリフォルニアやテキサスなどの各州で店舗を増やしている本格イタリアンレストラン。事業家サム・フォックス氏が率いる大型レストラングループでありながら、手作りのイタリア料理にこだわっているから、カジュアルな雰囲気でクオリティーの高いパスタを楽しむことができます。サラダやパンなどのサイドメニューも充実しており、アメリカのイタリアンの水準が上がっていることを実感します。
![]() 美しいグリーンが目を引く「Chicken Pesto」($17)に使われているのは、Gig(li ジッリ)というヒラヒラのショートパスタ。ガーリックの効いたバジルのペストがパスタの窪みによく絡みます。しっとりしたチキンとの取り合わせも絶妙です。
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![]() この「Spaghetti & Meatball」($17)を、いわゆるアメリカンイタリアンのミートボールパスタとひと味違うものにしているのは、何といってもハンドメイドの麺のアルデンテの食感。ミートボールをほぐせば、ジューシーなお肉たっぷりなボロネーゼの出来上がり!
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![]() サンタモニカ店、エルセグンド店もあり。
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13. CUCINA enoteca Irvine / クッチーナ・エノテカ・アーバイン
![]() トレーシーさんの手掛けるレストランはインテリアも評判で、店内のアイテムはオンラインで販売もしています。 ©Urban Kitchen Group
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モチモチ麺を濃厚なシチューとともに
サンディエゴで成功した女性料理家、トレーシーさん率いるUrban Kitchenグループ。その彼女が手掛ける本格イタリアンレストランは、大人から子どもまで楽しめるお店。クッションやソファを配置した居心地の良い広々空間に、パスタやワインのメニューも豊富。店内には巨大なワインショップが併設され、まさにクッチーナ(台所)とエノテカ(ワインショップ)と呼ぶにふさわしいレストランです。
![]() 同店の「Bucatini」($21)は、豚の頬肉を熟成させたグアンチャーレとトマトを、イタリアの中でも辛い物好きで知られるカラビアン地方の唐辛子でピリリと仕上げた一品。ふんわり散らしたペコリーノチーズの酸味がとろける卵の黄身と合わさってマイルドに。 ©Auda&Coudayre Photography
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![]() 一番人気の「Papperdelle」($16)。パッパルデッレとは、イタリアではトスカーナ地方でよく使われる幅広パスタ。ゆですぎないモチモチ食感の麺に、12時間煮込んでホロホロに柔らかくなったショートリブを崩しながら、野菜の旨味がぎゅっと詰まったソースを絡めると悶絶のおいしさ。
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![]() アーバインスペクトラムセンター内、映画館Edwards Cinemasの目の前。
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