(2021年10月16日号掲載)
フランスの大女優といえばこの人
今回は銀幕の女帝、カトリーヌ・ドヌーヴの登場である(大半のアメリカ人は「キャサリン」と発音するが)。今まで5回ほどインタビューしたが、その都度、彼女の美しさだけでなく威厳とカリスマ性に圧倒されてしまう。かなり以前のインタビューでの「最近のハリウッド女優について」という質問に、「あのスカーレット・ヨハンソンって、人気があるのかもしれないけれど、まだまだオシッコ臭いわね。私は40歳を過ぎたら追放されるハリウッドではなくヨーロッパで女優をしているから、50、60歳になっても老女でない役がくるし、ラッキーな身分だと思う」と、未成熟なハリウッドに対する強烈なコメントをくれた。目の下のたるみ、おぼつかないウエストライン、英語も細かいニュアンスなど気にせずしゃべる一種のがさつさなど、他人の目を気にしない自信が小気味良い。
「セクシーな人間は何をしたいかを把握しているのよ。もっとも今の私はセックスなどより、4人の孫たちを連れて公園に行って大声で歌うのが一番の楽しみ。シャワーの中でも歌うけれど、大声で歌うって解放感があってすっきりするから。家族は恥ずかしがるけれど、そんなこと気にしていたら腰が曲がってしまう。くよくよしない、嫌なことはすぐ忘れる。それが人生を楽しむ術よ」。
そう言ってカラカラと笑うのだが、しっかりと顎を上げて毅然とした表情を見せるのは長年の習慣だろうか。
1943年10月22日、パリ生まれ、今年78歳。これまでの出演作139本、現在進行中の企画2本と、バリバリの現役であるカトリーヌ。2年前に是枝裕和監督の『The Truth』に主演した時は、ちょうど「MeToo運動」が騒がしい真っ最中で、「男性にもっと自由を与えないと駄目。誰もがピューリタンみたいになったら、身も心も貧しくなってしまう。ルックスや体を褒めるのがどうして悪いの?」と、アメリカの騒動に茶々を入れて非難を浴びたのも彼女らしい。
実生活では未婚の母を2回、役の上では男を堕落させる魔性の女を演じたら右に出る女優なし、の勇敢な人生を送ってきた彼女。ちなみに、『The Truth』映画の題について触れると、「私は真実など絶対に語らないわよ。第一、面白くないもの」とおどけた表情で答えてくれた。
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