誘惑のドーナツ

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Mr.世界(誘惑のドーナツ)

明治から昭和に生きた詩人・作家の佐藤春夫が、『詩文半世紀』という自伝に、こんな文を書き残している。
 
「慶応の勉強をほったらかしにして毎日パウリスタまで歩き、珈琲とドーナツで何時間もねばるのだが。毎日こんなことばかりして末はどうなつ事やら」
 
僕がこのコラムに書きそうなオヤジギャグを、あの佐藤春夫大先生が書いておられるのだから、僕も安心してオヤジギャクに精を出すことができます!
 
それはともかく、この50年も昔の光景。まさにいまのひとびとがStarbucksに行ってデーニシュ食べながら、コーヒーをくつろいで飲んでいる光景、そのものではないか。
 
むかしながらのいわゆるドーナツ屋さんに行くと、リタイアしたと思われるひとたちが楽しそうに話をしながら、ドーナツを食べてコーヒーを飲んでいるのをよくみかける。
じつは僕もドーナツが大好きで、以前は毎日のように食べていた。
出勤するときも、ドーナツ屋に行ってコーヒーとドーナツを買い、飲み食いしながら会社に運転していったものである。
 
しかし、これはいけませんね。
気がついたら生活習慣病の数値が上がってしまった。いまはそういう朝食はやめたが、たまーに自分へのご褒美と称してドーナツを食べることがある。これってなんともいえず幸せな気持ちになる。
 
さて、この「パンを油で揚げて甘い味をつける」という食べもの、おいしいと思うのは僕やアメリカ人だけではないのはもちろんだ。
中国語圏の「油條」(ヨウティアオ)。朝食、特に週末の朝食の定番である。
パンそのものは甘くないが、砂糖をふりかけたり、甘い豆乳(豆漿)やお汁粉などに浸したりして食べる。
 
東南アジアでも、よくおなじようなものを目にする。
スペイン語圏のチューロchurroは、星型をした長い揚げパン。スペイン、特にマドリッドではこれをホットチョコレートに浸して食べるのが非常にポピュラーな朝食である。
大晦日の12時を過ぎたらチューロを食べるのも習慣だそうである(※1)。つまり年越しソバですね。
 
アメリカでも映画館や野球スタジアムなどでよく売っているから日本人にもおなじみだろう。
 
ところで、なぜチューロって星型をしているのか、知ってますか。
そもそもそれは中国の油條がスペインに伝わったものだが、作りかたを外国人に教えることを中国の皇帝が厳禁していたためにきちんと伝わらず、星型にして表面積を大きくしないと揚げている途中に高熱でドウが爆発するのだそうである(※2)。
中国の油條がスペインに伝わったという部分は、中国の麺がイタリアに伝わってスパゲッティになったという説とよく似ていて、眉ツバだと僕は思う。
なんてったって小麦粉を練って揚げ、甘くして食べるというのは簡単な発想で、どこの国で自然発生しても不思議はないし、なんともうまくて病みつきになるものなので、ポピュラーになっても当然だ。
 
僕の身体がよく知ってます。
 
(※1) Wikipediaスペイン語版
(※2) Wikipedia日本語版
 
LAではココ!「予算」は2人分です
Luv n Donuts
はっきりいってドーナツというのは店によってそれほど味に差があるわけではない。しかし店員の感じがいいか悪いかは差がある。この店は感じがよいから、朝起きぬけのドーナツがとくにおいしく感じる。
予算:2ドル程度~
1421 W. MacArthur Blvd., Santa Ana
☎714-556-6392
Mon-Sat 4:00am-5:00pm
Sun 4:00am-3:00pm
Open 7 Days
 
Krispy Kreme Doughnuts
ドーナツについて語るとき、このチェーンを無視することはできないだろう。Burbank、Industry、Gardenaなど南カリフォルニアに数軒あり、大きな機械でドーナツがどんどんできてくる様はかなり圧巻。
予算:2ドル程度~
1199 W. Artesia Blvd., Gardena
☎310-532-5281 http://krispykreme.com
Mon-Sun 5:30am-10:00pm
Open 7 Days
 
(2012年12月16日掲載)

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