味には、本来、四つの要素があるとされてきた。甘い、酸っぱい、からい(塩味)、苦い、である。
何年かまえに、それに、日本人がみつけた「旨味」が加わった。
つまり、味の素の原料として日本人が見つけたグルタミン酸やイノシン酸などが、食べものの味を決める五大要素のひとつとして国際的に認められたわけである。
umamiという日本語がそのまま使われている。
それ以外にも、味の要素としては、(ピリ)辛い、渋い、脂っぽいなどもあるのだが、僕に言わせると、六大要素としてぜひ加わってほしいものが、「温度」だ。
温かいのか冷たいのか、その中間のどこか。食べものや料理ひとつひとつには、いちばん適当な温度というものがあって、それによってうまいまずいが大きく左右される。これは皆さんご経験のとおりだ。
飛行機の食事。ビジネスクラスではアペタイザーが最初に出てくるが、えてしてそれが冷たすぎる。
どこそこのシェフが料理をコーディネートしましたとかメニューに書いてあって、一見とても洗練されているのに、機外に貯蔵してあったのかと思うほど冷たいオードブルやミニ寿司なんかが出てくると、とてもがっかりする。
メインディッシュをオーブンで温めてサーブするのはいいのだが、アペタイザーを室温に戻すというサービスは期待できないものなのだろうか。
温度という要素の、ほかの四つとちがうところは、冷たいとほかの味覚が鈍ってしまうところにある。
冷たいソーダを飲むと甘さの感覚が鈍るから、それを補填するために恐ろしい量の糖分が入れてあるのは皆さんご存じのとおり。室温で飲んでみると頭が痛くなるほど甘いですよね。
なんでも温かければいい、というわけではない。
たとえばコールドチキン。チキンをバーベキューして、食べ残したものを翌日食べるとすごくおいしいと思ったことありませんか。サンクスギビングの翌日のターキーもしかり。
材料は同じ、甘みも塩みも、他の要素はおなじなのに、温度が低いことで独特のうまさがうまれる。ちなみにこれを電子レンジなどでもういちど温めると、そのうまさは失われる。
寿司のシャリの温度、あれも温かすぎても、もちろん冷たくてもダメですね。
ひとつひとつの温度だけではない。
料理と料理の温度の変化やバランス、これもすごく重要な要素だ。
日本の会席料理がいい例で、おおむね先付け(前菜)が室温、次の椀物が温かく、向付け(刺身)で少し室温より下がり、鉢肴(焼き物)が温かく、強肴(煮物)がさらに温かく、止め肴(酢のもの)で室温に戻り、御飯、味噌汁でぐっと温まり、ちょっと冷たい水菓子(果物)でシメる。
これで味覚も常にリフレッシュされ、飽きのこないバランスで食事全体の流れを楽しむことができる。
フランス料理のMenu Degustation、つまりTastingMenuもまさにそこから影響されたコース料理で、温度のバランスを無視しては考えられない。
どうです、日本料理の世界に対する貢献度はたいしたものでしょう?
LAではココ!「予算」は2人分です
Fig & Olive
ウェストハリウッドに新しくできた地中海料理の店。その味のレベルは非常に高い。ここで食べたラムチョップは僕の経験ではアメリカ最高。ワインテイスティングのようにオリーブオイルのテイスティングなど、しゃれた演出もある。コースメニューもある。
予算:$100
8490 Melrose Pl., West Hollywood
☎310-360-9100 www.figandolive.com
Lunch: Mon‒Fri 12:00pm‒2:45pm
Dinner: Mon & Tue 6:00pm‒10:30pm 、Wed & Thu 6:00pm‒11:00pm
Fri & Sat 5:30pm‒11:30pm、Sun 6:00pm‒10:00pm
Brunch: Sat 12:00pm‒2:45pm、Sun 11:00am‒2:45pm
Shanghailander(上海灘)
ハシエンダハイツに最近できた上海料理店。洗練された上品な料理は、ただ上海出身の人が作っているというレベルではない。一流のシェフの味。鍋料理を含め、温かいものや冷たいもののバランスももちろんいい。
予算:$60
1695 S. Azusa Ave., Hacienda Heights
☎626-839-7777
Mon-Fri 11:00am-3:00pm、5:00pm-9:30pm
Sat & Sun 10:00am-10:00pm
(2013年2月1日掲載)
温度の味
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