前回の「ワインの色」についての続きです。
ワインのなかで、いちばん色の美しいものはどれでしょう。
もちろん人によって意見が違うだろうけれど、僕にいわせると、ソターンだ(日本ではソーテルヌと呼ばれる)。
ボルドーの東にある、Sauternes地方のデザートワイン。
黄金がもし透明だったらこうなるだろうと思うほど、あざやかな、しかし深みのある美しい金色だ。
紫や緑のブドウから、どうしてこんな色のワインがうまれるのだろう?
このワインに使われるブドウそのものは、他のワインに使われるものとかわりないのだが、そこにはボツリティスというカビが作用している。
このカビがブドウの外皮を溶かし、なかの水分が蒸発してジュースが濃縮され、さらに菌の代謝によってその色がうまれるわけだ。いわゆる貴腐ブドウである。
その高貴さとは、色だけではない。
グラスに注いでちょっと香りをかいだだけで、甘い夢をみている気持ちになる。
ひとくち口に含めば、これがブドウというひとつの果物から作られた液体とはとても思えない、アプリコットやいちじくなど、さまざまな果汁を精妙にブレンドしたような、複雑な甘さだ。
そもそも、デザートワインとはなんだろう。
日本人にワイン好きは多いが、デザートワインの楽しみを知っているひとは少数ではないだろうか。
「ワインはドライなのが好き、甘いのはきらい」というひとがよくいるが、それは安いワインがえてして甘さだけで売ろうとしているからだ。
ソターンワインは、デザートワインといわれるだけあって、とても甘い。しかしただの甘さではない。高貴な甘さなのである。
価格も、貴という字がつくだけあって、とても高い。代表的なシャトー・ディケム(Château d’Yquem)は、ワインショップではビンテージによって百数十ドルから千ドル以上、だいたい数百ドルする。
レストランではその倍くらい。グラスで飲むことができる店はとても少ないが、ハーフボトルなら百ドルくらいで飲めるところもある。
このYquemワインをある日本人のパーティーでラッフルとして僕が提供したことがある。若い男性がそれにあたって、数人で居酒屋に行って一気に飲んでしまったという。
もったいない~!
楽しみかたは、まずよく冷やす。ふつうの白ワインよりも冷やす。
グラスは日本酒のオチョコくらいの、小さいワイングラス。これに注いで舌に転がすように、口の中全体に広がる香りをゆっくり味わってほしい。
決して大量に飲むワインではない。
できるだけ、おいしいデザートといっしょに飲んでほしい。
デザート以外では、フォアグラといっしょに飲むと最高とされていて、僕も何度もやったが、ほんとうである。それはフォアグラが甘いものとあうということもさることながら、あの強烈なうまさに太刀打ちできるワインは、ソターンしかないからだ。
そうそう、ソターンを飲むときは、グラスに注いだ色を愛めでることもわすれないでくださいね。
LAではココ 「予算」は2人分です
Cafe Stella
典型的なパリカフェ的な店。こぢんまりして雰囲気がいい。メニューもオーセンティックで味がいい。Yquemではないがグラスでソターンワインがたのめる。
予算:$100
3932 W. Sunset Blvd., Los Angeles
☎323-666-0265
www.cafestella.com
Mon-Sat 9:00am-3:00pm、6:00pm-11:00pm
Sun 9:00am-3:00pm、6:00pm-10:00pm
Open 7 Days
Marche Moderne
こちらも典型的なフレンチメニューだがCafe Stellaより大きくビストロ風。メニューもオーセンティックで種類が多く、味は申し分なし。ソターンのグラスがある。
予算:$120
South Coast Plaza, 3333-3001 Bristol St., Costa Mesa
☎714-434-7900
www.marchemoderne.net
Daily Lunch 11:30-2:30pm
Dinner 5:30pm-9:30pm(-8:00pm on Fri)
Open 7 Days
(2013年5月1日掲載)
ソターンの色
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