アメリカ人がジャパニーズ・フードだと信じて疑わないけど、じつは日本にはそんな食べものはありません、と教えてあげたくなるものがありますね。たとえば奇妙なスシロールのかずかず。
おなじように、みんながイタリア料理だと思っているけど、じつはアメリカ生まれ、つまりアメリカ料理なのだ、というものがいろいろある。
ガーリックブレッドやスパゲッティー・ミートボールがその代表格で、イタリアでは絶対にお目にかからない(純観光客用の店ならあるかもしれないが)。
そしてもうひとつが、アメリカのイタリアン・レストランでは定番メニューの、チョッピーノ(Cioppino)だ。
イカ、カニ、エビやホタテ、ムール貝などをトマトソースでからめたシチューのような料理だが、「ミートボール」という英語のネーミングにくらべても「チョッピーノ」とはいかにもイタリアンっぽいし、あなたもイタリア料理だと思ってませんでしたか?
ためしにイタリア人の友人に聞いてみたが、そんな料理名も単語も聞いたことがないそうだ。だが料理を説明したら、それなら北イタリアに似た料理があるけど、とのこと。
調べてみると、これはサンフランシスコで発明された料理で、イタリアから移民してきた漁師たちが、とれた魚や貝を漁船の上で食事にしたのがはじまりだそうだ。日本の漁師のアラ煮のようなものである(※)
ではこの料理、アメリカ料理だからおいしくないかといえば、そんなことはない。魚介類をいろいろまぜて煮込んで、おいしくないはずはない。
はずはないのだが、じっさいはアメリカのトマトはイタリアに比べるといまひとつで、さらにレストランによっては煮込み過ぎてトマトケチャップのようなキツイ味になっちゃて、魚介類の味を殺してしまっているところもかなり多い。
これに似た北イタリアの料理というのは、トスカーナ地方リボルノのカッチュウコ(Cacciucco)という料理だそうだ。そのものは僕は食べたことがないが、やはり北イタリア、スロベニアとの国境すぐ近く、アドリア海に面したトリエステで、そんな料理を食べたことがある。
スパゲッティー・ア・ラ・スコリエラ(Scogliera)、つまり岩礁のスパゲッティと呼ばれていたもので、さまざまな魚介類をトマトであえたシチューを、スパゲッティの上にかけた料理である。
これには参りました。
いやはやうまい。
涙がでるほどうまかった。
地中海の魚介類はすごくあじがよく、そしてイタリアのトマトは軽くて甘くて、魚や貝の味をよくひきたてる。
イタリアではアメリカや日本のようにパスタをメインコースとして食べる習慣はないのだが、この料理については例外で、メインコースとして出されたのにも驚いた。
もっとシンプルな、前菜としてのイカやエビのトマトソースパスタはイタリアでは一般的で、ペスカトーレ(Pescatore ※「漁師」の意)とかマリナラとよばれる。
そしてこのマリナラ(Marinara)が、Marine と同語源の「海産物」という意味なのに、アメリカではなぜかただのトマトソースの呼び名になってしまっている。
アメリカのイタリアンというのは、なかなかいろんな不思議があるものです。
※ Wikipedia
LAではココ!「予算」は2人分です
Antonello
イタリアンというよりは、アメリカン・イタリアン兼コンチネンタル料理のオレンジカウンティにおける元祖のような有名店。チョッピーノも有名。デコアやサービスの良さでも名高い。
予算:$150
South Coast Plaza Village, 3800 S. Plaza Dr., Santa Ana
☎714-751-7153 www.antonello.com
Lunch Mon-Fri 11:30am-2:00pm
Dinner Mon-Fri 5:30pm-9:30pm
Sat 5:00pm-10:00pm
Closed on Sundays
Vivoli Cafe
アメリカン・イタリアンというよりかなりホンモノのイタリアン。でもチョッピーノがある。大きな店ではないが、シーフードも肉料理もメニューが充実している。
予算:$100
7994 Sunset Blvd, Los Angeles
☎323-656-5050 www.vivolicafe.com
Mon Open for private party only
Tue-Sun Lunch 11:00am-3:00pm
Dinner 5:00pm-10:00pm
Open 7 Days
(2013年4月1日掲載)
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