Jidori。
地鶏。もちろん、日本語からの外来語だ。
和牛(wagyu)、シイタケ(shiitake)、枝豆(edamame)などと同じく、もはや英語のメニューに載っていてもなんにも珍しくない存在になってしまった。
Free range chicken という英語表記方法もあるにもかかわらず、Jidori が一般的になったのは、まあメニューに書くのに短くて好都合というのもあるかもしれないけど、日本語っぽい響きが、高級感、味がいいというイメージを産み出しているからに違いない。
中国語では土鶏(トーヂー)という。
中国の田舎道を車で走っていたとき、道路わきに「土鶏」という手書きの看板が立っていた。
地鶏を売っているわけだが、そのすぐ後に「現殺」と書いてある。
中国語では、揚げたばっかりの揚げパンは「現炸」、蒸したての餃子なら「現蒸」などと書くから、「現殺」とは「シメたばかりの鶏あります」、もしくは、「注文されてから(たぶん目の前で)鶏シメます」、というわけである。
けっこうコワイ。
田舎の農家で小規模に育てられている地鶏は、工場生産のブロイラーとはちがい、たしかにおいしい。
そのちがいは。ひとくち食べればすぐわかる。
まず、肉が少ない。
インドの田舎で食べたタンドリチキンは、骨ばっかりで、食べるところ、つまり肉がほとんどないのに驚いた覚えがある。
でもこれがうまかったんです。
栄養を人工的に与えて太らせるのではなく、ミミズなどを自由に食べさせてたくさん運動させたスリムな鶏だからこそ、うまいのだ。
それと、「肉離れ」が悪い。
骨から肉を外すのに抵抗感があり、これが快感だ。
やっと外して噛んでみると、弾力がおおきい。つまり歯ごたえがいい。
噛む回数が多くなる。
噛んでいるうちに、だんだんチキンらしい香りが口の中を満たす。
ブロイラーのパサパサとして水分のない、ボール紙の重ねたようなチキンとは、まるで別の食べものだ。
ずっと以前にも、このコラムでフランスの地鶏、ブレッスBresse 産のチキンについて書いたことがあるが、これはそういった肉離れ、弾力、香り、すべてにおいてすばらしかった。
チキンというのは、一般的にマーケットでは牛や羊にくらべると値段の安い食材だが、ブレッスのチキンはその洗練されたうまさと値段において、牛肉、鴨、ラム、どれにも負けずとも劣らないすばらしい高級食材だ。
イタリア料理でも地鶏のことはruspante といって、尊とばれる。
日本では名古屋コーチン。これも鶏として特別な種類というわけではなく、この地域で育てられた地鶏のことだが、食べてみると、皮下脂肪の味が軽く、ちょっと食べると淡泊な味だが、弾力があり、味の奥行が感じられた。
地鶏好きな僕としては、海南鶏飯で有名な中国は海南島の地鶏「文昌鶏」が食べたくて、そのために海南島に行きました。
やはり他の地鶏と共通の肉離れの悪さ、弾力と同時に、味に奥行があって、うまかった。行った甲斐がありました。
LAではココ!「予算」は2人分です
Oliverio At Avalon Hotel
最近できたビバリーヒルズのブティックホテル、プールに面するイタリアン・レストランとバーは、こぢんまりして落ち着いています。カバナ(半テントのあずま屋)もあります。料理は種類は多くありませんが、味のレベルが高く、地鶏の料理もあります。
予算:$70〜100
9400 W. Olympic Blvd., Beverly Hills
☎310-277-5221
www.avalonbeverlyhills.com/dining/oliverio.html
月〜金7:00am-11:00am・11:00am-3:00pm・6:30pm-10:30pm、土7:00am-11:00am・11:00am-4:00pm・6:30pm-10:30pm、日7:00am-11:00am・11:00am-4:00pm・6:00pm-10:00pm
Park Ave Steaks & Chops
こんなところにこんなに雰囲気がよくて料理がおいしいレストランがあるなんて、とだれでもびっくりする店です。ザガットの評価も最高点に近く、いつも混んでいます。敷地内にある畑で採れた新鮮な香草と野菜がうりものです。地鶏の料理もあります。
予算:$70〜100
11200 Beach Blvd., Stanton
☎714-901-4400 www.parkavedining.com
火〜金11:00am-、土日4:00pm- 月closed
(2014年4月16日掲載)
いろとりどりなぢどり
「ミスター世界の食文化紀行」のコンテンツ
- クジラはなぜ食べてはいけないのか?
- トロピカルフルーツ
- BFV(バックグラウンドビジュアルズ)
- これでトーストがうまくなる(かな?)
- これぞエキゾワイン
- チャイニーズ攻略法 その②
- チャイニーズ攻略法 その①
- 黒いって健康的
- チキンスープを飲みなさい
- ジャガイモだってあなどれない
- カズチャンのカボチャ
- シッポの味
- 音の味わい
- Simple is the Best
- 究極のジントニック
- ウクライナで食べたいな
- ハチャメチャじゃない、ハチャプリ
- 生クリームで広がる世界
- づくしの世界
- パンの食べかた
- 韓国のうどんたち
- トッピング
- なぜロゼ?
- えいさい教育
- 小さくてもビッグなキノア
- ホンモノイタリアンのみつけかた
- ナマのおさかな
- ワインの飛行
- LAレストラン・シーン
- つらくてうれしい300回
- 音楽は料理をおいしくする
- ニシンの子
- フワフワのカルチョッフォ
- ソターンの色
- ワインのいろもいろいろ?
- ちょっぴー(り)のイタリアン
- モロッコ料理はフランス料理
- ベルギーが一番
- レモンあちらこちら
- 温度の味
- ボケとオタンコのオーバージーン
- バフェーに目移り
- 誘惑のドーナツ
- コーシャーの真理
- エビみその旨味
- 忘れられないサーモンの味
- クレンザー食べたい
- アメリカ家庭料理の代表、ミートローフ
- バカにできないノンアルコール飲料
- ミルクったっていろいろ