財政難からの脱出が課題・心の故郷『カントリー・ロード』
故ジョン・デンバーの名曲『カントリー・ロード』で知られるウエストバージニア州。歌の中でも山岳地帯を連想させる歌詞があるが、同州のニックネームもずばり「Mountain State」だ。
ウェストバージニア(West Virginia、WV)州の基本情報 | |
人口(2023) | 1,770,071人 |
面積 | 24,034.8mile2 |
人口密度 (2020) | 74.6人/mile |
州都 | チャールストン(Charleston) |
州知事(2024) | Jim Justice(共和党) |
州のニックネーム | The Mountain State |
人種の割合 | 白人92.8% / 黒人3.7% / アジア系0.9% / ヒスパニック2.1% / ネイティブ・アメリカン0.3% |
1世帯当たりの平均収入 (2022) | $55,217 |
貧困家庭の割合 (2022) | 17.9% |
住宅平均価格 (2018-2022) | $145,800 |
平均家賃 (2018-2022) | $831 |
観光情報サイト | West Virginia Office of Tourism |
オフィシャルサイト | WV.gov |
(出典元:U.S. Census Bureau)
州競売のでたらめ話がまかり通る深刻な財政難
昨年1月、ネットオークションサイト「eBay」にこんな出品があった。「私はウエストバージニア州の皇帝で、この商品の世話人に任命されました。州を競り落としませんか。行政権、住民と住民の所有物は含まれませんが、皇帝の座はお譲りします」。サイト管理者は悪質なジョークとしてすぐに削除したが、わずかの間に入札が殺到した。
このようなでたらめ話を多くの人が信じたところに、ウエストバージニア州の悲哀がある。同州の2005年度の財政赤字は1億2000万ドルに達している。また、1983年から失業率が8.6%から18%に跳ね上がり、全米一になった。
それでも近年は、温暖な気候と風光明媚な山岳地帯、南北戦争史跡などをセールスポイントに観光に力を入れていることもあり、93年に11.1%だった失業率が2000年12月には5.6%まで好転。社会福祉の恩恵を受けている人の数は、実に74%も減少している。
保守的な土壌が垣間見える映画『オクトーバースカイ』
1861年、同州はバージニア州から分離し独立州となったが、分離の背景には人種構成が影を落としている。東部はイングランド系、西部はアイルランド系が多数を占めるが、州議会は東部中心に進められ、交通網や学校の整備などで西部は冷遇されていた。18世紀半ばから19世紀にかけて、石炭や天然ガス、石油が相次いで発見され、自立の見通しがついたところで南北戦争が勃発。東部が北部連邦から脱退すると、西部は残留を決め、分離が確定的になった。
1930年代、世界恐慌の影響をまともに受けた同州では、F・ルーズベルト大統領のニューディール政策が浸透し、保守的な土壌を育んだ。石炭産業の暗転と保守的な土地柄を如実に描いた映画に、『オクトーバースカイ』がある。これは炭鉱の町、コールウッドに生まれたホーマー・ヒックマンのベストセラー自伝『ロケットボーイズ』を映画化したものだ。