国際バカロレアは英語で授業を受けられる?日本の学校の実情は?
A. 導入を目指す学校が増加中。立命館宇治中・高がDP認定校に
国際バカロレア(IB)
国際バカロレア機構(IBO: International Baccalaureate Organization)により開発された国際教育のためのプログラムで、世界約140ヵ国の2700以上の学校で約75万人の児童生徒が学んでいます。3つの異なったレベルのプログラムの簡単な内容を下の表にまとめました。
候補校と認定校
国際バカロレア・プログラムの実施を希望する学校はその希望を国際バカロレア機構に申し出て「候補校」となります。その後、カリキュラムを開発して国際バカロレア機構の審査を受け、その基準に合格した場合は「認定校」となり「IB World School」の1つとなります。
日本では、MYPとDPの候補校になっている学校が数校あり、増えつつあります。また、表に示した学校が既に認定校となっています。
日本の認定校
日本の正規の学校(中学・高校の卒業資格が取得可。インターナショナルスクールは含まない)で、IBに認定されている学校は次の3校です。
●加藤学園暁秀中学・高校
日本の学校として初めて2000年にMYP、その後02年にDPの認定を受けました。DPで学んで卒業資格(Diploma)を取得した生徒が、日本を含めた世界中の大学に進学しています。
●玉川学園
今年3月、MYPが認定されました。現在、7~9年生が7割程度の授業を英語、ほかを日本語で学んでいます。DP認定を目指してカリキュラムの開発に取り組んでいます。
●立命館宇治中学・高校
今年9月に日本で2校目のDP校として認定され、来年4月からDPの授業が始まります。MYPはありませんが、この学校のSELプログラムで主要科目を英語で学んだ生徒や帰国生が対象となります。
バイリンガル教育の一種
日本での国際バカロレア・プログラムは、英語だけではなく日本語での授業もある、レベルの高いバイリンガル教育の1つと考えることもできます。
国際バカロレアは、もともと世界中のインターナショナルスクールのカリキュラムとして開発されたので、すべての授業を英語で受講するものと思われています。しかし、PYPとMYPでは指導言語の指定はなく、DPでも主要な言語が決められているだけです(表参照)。世界各地域の教育方針や学校独自のカリキュラムを大切にするという国際バカロレア機構の考え方を示しています。具体的な例として加藤学園では、7~9年生で約50%、10~12年生で75%の授業を英語、残りは日本語で開講しています。
これらの状況は、現地校で学び帰国した子供にとって、単に英語力の維持・伸長ではなく、英語による主要教科の学習が継続できるという大きなメリットを持っています。さらに、国語などの授業を日本語で受けることも可能なので、バイリンガル教育ともみなせます。
世界の大学へ
国際バカロレアへの注目、特にDP候補校・認定校の増加傾向は、日本国内での「海外の大学進学」の動きを反映しています。
インターではなく、正規の学校でのDPを修了することにより、日本の大学も含めた世界の大学への進学のチャンスが大きく高まります。
IB World Schoolは、「バイリンガル教育の継続」と「世界の大学への進学」を目指す児童生徒・保護者のための、学校選びのチョイスになりますが、いかがですか?
(2009年10月16日号掲載)
Q. 日本の高校で国際バカロレアが受けられる?どんな内容で、いつから開始?
今後5年間に200高校で受講可能。日本語の国際バカロレアの実施も準備中
A. 導入を目指す学校が増加中。立命館宇治中・高がDP認定校に
国際バカロレア教育
国際バカロレア(IB: International Baccalaureate)とは、国際バカロレア機構(IBO: International Baccalaureate Organization、本部・スイス)が主催する、世界中のインターナショナルスクールでの「国際教育」を目指した独自のカリキュラムです。その教育理念や指導・評価の方法はユニークで、知識の習得だけでなく、討論を通じた問題解決力の育成を重視するのが特徴です。また、学習内容の理解を論文で示すことが、学習活動の中心として生徒に要求されます。アメリカの公立学校のカリキュラムや、日本の学習指導要領の内容とは大きく異なります。
国際バカロレアには、小・中・高校の3段階のプログラムがあります。その中の高校2、3年(11・12年)段階のディプロマ・プログラム(IBDP)では、認定校の所定の科目を受講した生徒は、英語・フランス語・スペイン語で実施される最終試験の成績に応じて、世界中のトップレベルの約2千の大学に出願できます。
200高校で国際バカロレア教育
「『国際バカロレア(IB)』の国内認定校の拡大を目指すことを決めた。今後5年間で、認定校と、新たに国際バカロレアに準じた教育を行う高校を計200校にする計画で、海外で学ぶ日本人学生を増やし、グローバル化に対応する人材を育成する狙いがある」(3月21日付・読売新聞)と文部科学省は発表しており、国際バカロレア教育は日本で今後拡大して行きそうです。日本の教育のグローバル化・国際化が、日本の教育力向上や今後の社会の成長に必要不可欠だという日本政府・文部科学省の危機感が見てとれます。
しかし、日本での国際バカロレア・ディプロマ・プログラム最終試験は英語での受験が一般的で、日本語では出題されません。そのため、ディプロマを取得するためには、高校の高いレベルの英語による学習が必要になります。国際バカロレアカリキュラムの特徴的な指導に加えて、日本の高校生が英語での最終試験に合格できるよう英語力を向上するには、革新的な英語教育法の導入が必要となるでしょう。
目標の200校は公立高校が中心となると思われますので、国際バカロレア・ディプロマ・プログラムの実施にあたっては、初期段階では相当数のネイティブ国際バカロレア教員の確保が欠かせません。また、指導要領からの除外などの制度上の取り扱い、そして多額の財政的援助なしには実施不可能です。一方、IBDPにチャレンジした高校3年生が海外の大学ではなく、日本の大学進学を望んだ場合は?日本の大学への受け入れは?など、5年で解決しなければならない問題が山積みしています。
国際バカロレアを日本語で
続いて、「国際バカロレア・ディプロマ・プログラムが、日本語でも習得できる見通しとなった」との文部科学省の発表が報道されました(2012年6月19日付・読売新聞)。この報道によると、国際バカロレア・ディプロマ・プログラムに向けての学習と最終試験が日本語で実施されることになるとのこと。これにより、
①日本の高校教育の内容が大きく変化
②世界の大学への進学が容易に
③日本の大学入試も大きく変化
などが今後考えられます。
海外の大学に進学するには国ごとに異なる統一試験などを受ける必要がありますが、国際バカロレア・ディプロマ・プログラムを取得すれば世界の大学の入学選考を受けられるようになります。日本語であっても国際バカロレア・ディプロマ・プログラムを取得し、英語などの外国語能力が高い生徒には、海外留学のチャンスが広がることになります。さらに、世界のトップレベルの大学の入学基準になっている国際バカロレア・ディプロマ・プログラムが、日本の大学の入学審査で活用されることも十分予想されます。知識だけではなくさまざまな学習スキルを身に付けて国際バカロレア・ディプロマ・プログラムを取得した受験生は、AO入試で大学が求める学生でもあり、人気の高い国立大学ですら国際バカロレア生の獲得に努力することになるでしょう。
文部科学省はこのプログラムの早期実施に向けて、すでに調査・研究を始めているところです。日本の高校での実施までには、少なくとも2、3年はかかります。その間に、国際バカロレア教材の日本語化、指導要領と国際バカロレア・カリキュラムの調整、実施高校の選定、指導教員の養成など、多くのハードルを飛び越えなければなりません。
(2012年12月1日号掲載)