昨年渡米して、現地校に通う小学校1年生と3年生の息子たちは、初めての夏休みを迎えます。長い夏休みをどう過ごさせようかと考えておりますが、サマースクールがあると聞きました。どのような種類があるのでしょうか?
A. アメリカの文化に触れるためにも目的に合わせて積極的に参加を
長い夏休みは新しい体験のチャンス
本当に長い夏休みです。3カ月近くあります。宿題もなく、本当に自由に過ごすことができます。この間に保護者は、学期中にはできないさまざまな体験を子供にさせようとします。その代表がサマースクールでの活動です。
夏休みの活動の形式や内容は千差万別で、サマースクール、サマーキャンプ、デーキャンプ(Day Camp)などの名前で呼ばれます。ここではそれらをまとめて「サマースクール」と呼びます。
さまざまな選択肢。事前に十分な情報収集を
◎形式
自宅から通うタイプ、泊まり込みで参加するタイプがあります。活動時間・期間は、数時間のものから夏休み中を通して実施されるものまであります。また、活動する場所も、自宅近くの小さな教室や学校から、シビックセンターやレクリエーションセンターなどのコミュニティーの施設、さらには活動により、キャンプ地は船上、大学のキャンパスなど、これもまちまちです。
◎内容
大きく分けると、アカデミックなものと、レクリエーションのタイプのものがあります。アカデミックなものでも、選抜された子供を対象に数学の英才教育を行う真剣なものから、理科の観察や実験を通して科学に興味を持たせるものまであります。教科は算数・数学・理科・作文・読書などがあります。
その一方、夏のスポーツなど自然の中でおもいっきり運動させようとするキャンプもあります。水泳など夏のスポーツ、野球などの球技、体操、ダンスなど盛り沢山です。
◎どこで情報を?
サマースクールの情報は、どこでも手に入ります。身近なところでは、電話帳、図書館、雑誌、パンフレットなどがあります。それとインターネットで「Summer School」で検索すれば、驚くほどの情報が入手できます。もちろん、ほとんどの情報は英語ですが、日本語で書かれた案内やパンフレットも多く見られます。
しかし、最初にすることは、近所の親や友人に聞いてみることです。その場合、紹介された活動が本当にご自分のお子さんに向いているのかどうかの判断が必要です。
日本人の子供にとってのサマースクールの重要性
次に、渡米間もない日本人の小学生にとってのサマースクールの大切さを考えてみます。
「前の学年で学習した内容を忘れている子供が多い。9月に新学期が始まった時に、復習をするのに2カ月ほどかかる」と、現地の小学校の先生が嘆いているのを聞いたことがあります。夏休み前に学年が修了するので、宿題もなく、勉強から遠ざかってしまうことが原因です。そのため、公立でも夏の休暇を1年間に分散した通年制の学校が人気を集めています。
このブランクは、渡米間もない子供にとっては英語力の保持に非常に重要です。学期中にせっかく覚えた英語を、長い夏休み中に失ってしまうのは、ただ残念では済まず、9月からの新学年の勉強にも大きく影響します。
会話力の低下を防ぐためにも、ネイティブの子供たちが参加し、団体やグループでするアクティビティーに参加させることを考えてください。理想的には、学校が提供する日ごろの学校生活に近いものがいいと思います。しかし、そのような機会がない場合は、アクティビティー中心のものでも、その目的に沿うのならばOKです。
ご相談のお子さんはまだ小学校低学年ですが、5年生以上くらいになると泊まり込みのサマーキャンプなどに参加できます。ただし、参加してみたら日本人の子供だけだったというようなことのないように、よく調べてください。
サマースクールは、英語力の総合的な向上のため、同年齢の子供たちと一緒の時間を過ごすため、身体を鍛えるためなどのさまざまな目的があります。しかし、最も重要なのは、サマースクールというアメリカの文化自体に触れるという体験です。帰国後も、子供たちのすばらしい思い出になります。
(2005年5月16日号掲載)
Q. 中学生向けで、特徴のある サマースクールはありませんか?
A. NYと日本で、私立校が提供するサマープログラムがあります
長ユニークなサマースクール
今回は、日本またはアメリカの学校が提供する、サマースクールを紹介します。世界中からの中学生を中心とした参加者が寮生活を共にして、言葉の学習やさまざまな体験ができるユニークなプログラムです。
慶應NY学院
ニューヨークの郊外にある慶應NY学院(高校)では、3年前から日英バイリンガルのサマースクールを実施しています。
「ハンズオン形式の映像制作ワークショップ」がこのプログラムの特徴で、映像のプロたちによる実践的な指導を通じ、短編作品を作ります。1グループに1人のインストラクターが付き、カメラの使い方、映像表現、基本的な編集テクニックを学びます。プログラム最終日には、各グループが作成した作品の試写会を行います。
その他、ESLと日本語クラスや、ダンス、文化交流イベント、ブロードウェイ・ミュージカル鑑賞などのフィールドトリップも含めてプログラムが構成されています。また、バイリンガル・バイカルチュラル教育の選択科目を受講することも可能です。
緑豊かなキャンパスにある寮で、日米各地から集まった仲間たちとの共同生活を体験し、国際的な交流を深めることができます。
明徳義塾
高知県土佐市の、太平洋を目の前にした明徳義塾中学・高校のキャンパスで開かれる、3年目のプログラムです。
午前中は習熟度別の日本語、国語の授業、午後はキャンパス外での見学やアクティビティーを通しての日本の文化、自然を体験、さらに、夜は自由時間や和太鼓体験と、朝7時半から夜10時半までの盛りだくさんの内容です。
明徳義塾では全生徒数の3割に当たる約350名の留学生が学んでいます。その留学生のための日本語、国語教育のプログラムがあるので、「日本語の会話も不自由」から「古典も読める」までの幅広いレベルの学習ができます。
アメリカ、アジア、ヨーロッパと世界中から、現地校、インター校、補習校、日本人学校で学ぶ生徒と、非常に多様な子供たちが参加してきます。家族揃っての日本への一時帰国の機会を利用する参加者も多くみられます。
参加者は学寮・食堂で共同生活をして交流を深めると同時に、夏休み期間中の集中授業やクラブ活動で寮生活を続けている明徳義塾の中・高生との交流も行われます。
◇ ◇ ◇ ◇
アメリカで生活する子供たちは、集団生活の機会に恵まれません。短い期間ですが、同年齢の子供たちと寝起きを共にし、共に学び、活動する場を与えてみませんか。
(2011年3月16日号掲載)