デンマーク。このコーナーには初登場の国だ。
首都コペンハーゲンは、一国の首都としてはおどろくほど小ぢんまりしている。
だがさすがはヨーロッパ、旧市街をはじめ、しっとりと落ち着いた古い街だ。
僕は、この街の夏、それも夜が好きだ。
それはチボリ・ガーデンがあるからである。
この公園は、短い夏の夜を楽しむ市民で毎晩賑わう。木立に囲まれたメリーゴーラウンドやジェットコースターには、ハデハデなアメリカの遊園地とはちがって、素朴でなつかしい情緒がある。野外シアターやパントマイム劇場、レストランなどを散策して過ごすのは、涼しくてとても気持ちがいい。
さて、そろそろ、この国の食べもののはなしにしましょうか。
この国は、Wienerbrød、ウィーンパンがうまいのです!
そう、デンマークでウィーンパン。
アメリカでいうところの、Danish Pastryだ。
ジャム、フルーツコンポート、甘いクリームチーズなどを載せた、平たいパン。
Danishというからにはデンマークが発祥の地だろう、と思うのだが、じつはそうではないわけだ。
Wikipediaによると、1850年、デンマークでパン焼き職人組合のストライキがあったために、パン屋のオーナーたちは外国からパン焼き職人を呼びよせ、かわりにパンを焼かせることにした。
なかでもオーストリアは、クロワッサン発祥の地とされているだけあって、パンの技術に長けていた。
クロワッサンの技術を使ってオーストリアの職人が焼いた、パイのようにフワッとしたパンはたちまち評判となり、外国にも広まって、「デンマークのパン」、Danish Pastryと呼ばれるようになったとさ。
アメリカでは朝食に食べるもの、と決まっているのだが、デンマークではそうではない。
デンマーク人に聞いたのだが、朝食はふつうのパンや黒パンなどを食べ、10時ごろのブレークタイムにウィーンパンを食べるのが習慣だそうだ。アメリカでも10時ごろにドーナツを食べる人がいるが、あれと同じノリである。
でも、ホテルなどでは朝食から用意してあるから、僕は朝食に食べてしまいますけどね。
これがうまいのです。
アメリカで食べるほとんどのデーニシュと比べると、別モノといっていい。
アメリカでは、パンがベチョッとしているし、上に載っている砂糖の固まりやジャムが甘すぎるし、香りもあまりない。
そこへいくとデンマークものは、クロワッサンのように、中がフワッとしていて、表面がパリッとしている。
上に載っているジャムやコンポートも、決して甘すぎない。
もともと北欧は、世界の中でもベリーの類がもっともおいしいところなのである。だから、それから作ったジャムも、当然おいしいわけだ。
ケーキ類もそうだが、ヨーロッパは日本と同じで、アメリカとはちがい、甘さ控えめ。
ウィーンパンは、デンマーク以外でもスウェーデンやノルウェーを含む北欧全体でポピュラーだ。
北欧に行く楽しみのひとつでもある。
(2009年8月16日号掲載)
デンマークでウィーン
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