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数年ぶりに、ロンドンに行ってきた。
食べものがすごくおいしかった!
「なんだって? イギリスの食べものって、おいしくないんじゃないの?」と読者は不思議に思うかもしれない。
それはですね、こういうことです。
たしかにイギリス料理というものは、たとえばローストビーフのつけあわせに、ヨークシャープディングなる、シュークリームにクリームを入れ忘れちゃったみたいなものがでてきたり、ハギスという心臓や肺をミンチして腸詰にした、あまり洗練されているとはいえないものがメジャーなものだったり、いまひとつの感はぬぐえない。
しかし、ですね、イギリス人はうまいものを食べることにまったく無頓着かといえば、そんなことはないのである。
イギリス料理がうまくないからこそ、たとえばロンドンでは、「うまいものを食べたい!」と思っているロンドンっ子を満足させるために、世界のいろいろなうまい料理のレストランが、たーくさん生まれているのだ。
つまりこれって、LAやニューヨークにとてもよく似ている。
アメリカの料理も、バーベキューだのハンバーガーだの豆の煮たものだの、バラエティーが少ないがために、フランス料理やイタリア料理、そしてチャイニーズやさまざまなエスニックの店が広く受け入れられる土壌になっているわけだ。
日本のスシやが、カリフォルニアが震源地となって世界にひろまっていったことも、その証だと思う。
そして、もっと新しいスタイルの料理もここで生まれている。
ノブ松久さんの新感覚の料理が生まれたのもカリフォルニア、初めての海外進出店がロンドン、というのも、アメリカやイギリスの、右に書いたような土壌と無縁ではないのではないかと思う。
うらをかえせば、自分の国の料理がうまい国、たとえばフランスでは、ほかの国の料理がうまくない。たとえばパリのイタリアン。
フランスとイタリアは隣どうしだし、パリにはグルメがいっぱいいるわけだからイタリア料理だってきっとおいしいだろう、と思うのだが、ところがどっこい、僕は何度トライしても、一度もうまいと思ったことがない。
イタリアに行ったヒには、そもそもイタリア料理の店しかないのである(少数の例外あり)。
日本という国はちょっと例外で、日本料理も外国の料理も両方高いレベルだが、その外国の料理は、おおむね日本人の口にあうように修正してある。
そこへいくとアメリカやイギリスは、オーセンティック。もちろん、そこには移民が多い、という点も見逃せないわけだが、食べ手は移民だけではなく、土地っ子もそういった外国の料理をちゃんと楽しんでいるのだ。
ロンドンで今回食べたインド料理の崇高な洗練度には舌を巻いた。
フランス料理も、味といい、創造性といい、サービスといい、フランスの一流店のレベル。
以前に食べたチャイニーズやイタリアンも、本国以外では世界のトップレベルだった。
そういうわけで、マルティカルチュアルという観点からいえば、世界三大食べものがおいしい街は、ニューヨーク、LA、ロンドンだ、と僕は思うわけです。
(2009年10月16日号掲載)