ビーフのなかで、いちばんおいしい部位はどこだと思いますか?
以前(2008年11月1日号)に「タン(舌)がいちばん!」と書いたが、それに負けず劣らずの部位があるのを書き忘れてた。
それを昨日、あるレストランで食べていて思い出し、そうだ!これは読に伝えなきゃ、と思った次第でございます。
それはボーンマロウ、骨髄だ。
日本人にはあまりなじみのない食材だが、ほかの多くの国ではポピュラーな食べものだ。
昨日食べたイタリアン・レストランでもそうだが、イタリアやフランスでは牛の足の骨をカチ割ってオーブンでベイクし、その中の髄をプディングのようにスプーンですくって食べる。それ専用のスプーンというものが存在するくらいだ。
味つけは、岩塩をパラパラと振るだけ。これでじゅうぶんうまい。さらにベイクしたガーリックなどと一緒に食べると、こたえられない。
骨髄というのは、肉のウマミが凝縮している。
ウマミが凝縮しているわりには、体に悪い脂肪分が少ない(と信じたい)。
いや、少なくとも、ウマミが凝縮しているからこそ、骨髄を少し食べただけで満足感が大きく、霜降りのステーキをいっぱい食べるよりは脂肪を摂取せずにすむ、といってもいいかもしれない。
北イタリアに、オソブーコという有名な料理があるが、あれもまさに骨髄を食べる料理なのである(オーソブッコじゃないです)。
あれは牛足の骨つきの肉を、トマトやワインなどで煮込んでいるから、多くのひとは肉だけ食べて、はい終り!と思っている。
でもほんとは、オソブーコはその骨の髄を掘り出して食べなくてはもったいない。オソ(骨)ブーコ(穴)とは、そういうものなのだ。
日本人になじみがない、と書いたが、それは髄だけを単独で食べるということ。骨つまりガラを煮込むということは、鶏牛豚の違いはあっても、要するに髄をスープに溶かすということだ。
つまり多くのラーメンのスープは、髄の味なのだ。
日本人のラーメン好きは、じつはガラが原因なのかもしれない。
というのは、古代の人類は、ライオンなどが餌食の動物を食べ残したあとに、ばあいによっては腐ってから食べていたという説がある。
つまりハイエナとかハゲタカのようなものですね。
道具を使うことができたので、食べ残しの骨を砕くことができ、その中の髄をすすっていたと推定されているのだそうだ。
それによって栄養が摂取でき、脳が発達したのだそうだ。
だから、日本人を含め、人間のDNAの奥深いところには、じつは骨髄をウマイと思う、必然的な理由が潜んでいたのである!
蛇足ですが、ボーンマロウを食べていて、このすばらしい食感、舌触りはなにかに似ているなあと考えていて、はっと気がついた。
マシュマロだ。marrowとmallowとの違いはあるが、この偶然の一致をみよ!
マシュマロを火にあぶると、柔らかいマシュマロがさらにトロッとし、口のなかでとろけていく。ボーンマロウもまさにあの感じなのだ。
骨から必然と偶然を取りだして食べてみてください。
LA&OCではココ!
「味」は30点満点、「予算」は2人分です
Pizzeria Mozza
これが昨日骨髄を食べたレストラン。本格的イタリアンのOsteria Mozza に隣接したピザ主体の店。隣もそうだが、LAでもっとも予約の取りにく い店のひとつ。ピザはもちろんうまいが、Bone Marrow al Fornoはじめア ペタイザーがとてもうまい。
味:23 予算:$70
641 N. Highland Ave., Hollywood
☎323-297-0101 www.mozza-la.com
Daily 12:00pm-12:00am
Open 7 Days
Il Buco
LAにいくつものイタリアンレストランを展開しているDrago氏の店で、 その名もブーコ。どの店も味はホンモノ。この店はビバリーヒルズにあ るわりには値段もリーズナブル、メニューは豊富。オソブーコがうまい。
味:24 予算:$100
107 N. Robertson Blvd., Beverly Hills
☎310-657-1345 www.giacominodrago.com/buco.htm
Mon-Fri 11:30am-10:00pm
Sat & Sun 5:00pm-10:00pm
Open 7 Days
(2010年8月16日号掲載)
マロウの必然と偶然
「ミスター世界の食文化紀行」のコンテンツ
- クジラはなぜ食べてはいけないのか?
- トロピカルフルーツ
- BFV(バックグラウンドビジュアルズ)
- これでトーストがうまくなる(かな?)
- これぞエキゾワイン
- チャイニーズ攻略法 その②
- チャイニーズ攻略法 その①
- 黒いって健康的
- チキンスープを飲みなさい
- ジャガイモだってあなどれない
- カズチャンのカボチャ
- シッポの味
- 音の味わい
- Simple is the Best
- 究極のジントニック
- ウクライナで食べたいな
- ハチャメチャじゃない、ハチャプリ
- 生クリームで広がる世界
- づくしの世界
- パンの食べかた
- 韓国のうどんたち
- トッピング
- なぜロゼ?
- えいさい教育
- いろとりどりなぢどり
- 小さくてもビッグなキノア
- ホンモノイタリアンのみつけかた
- ナマのおさかな
- ワインの飛行
- LAレストラン・シーン
- つらくてうれしい300回
- 音楽は料理をおいしくする
- ニシンの子
- フワフワのカルチョッフォ
- ソターンの色
- ワインのいろもいろいろ?
- ちょっぴー(り)のイタリアン
- モロッコ料理はフランス料理
- ベルギーが一番
- レモンあちらこちら
- 温度の味
- ボケとオタンコのオーバージーン
- バフェーに目移り
- 誘惑のドーナツ
- コーシャーの真理
- エビみその旨味
- 忘れられないサーモンの味
- クレンザー食べたい
- アメリカ家庭料理の代表、ミートローフ
- バカにできないノンアルコール飲料