このシリーズで、まだ焼肉をとりあげたことがないのに気がついた。
こんなにだいじなテーマを忘れてました!
コリアタウンに行けばもちろんのこと、LA界隈にはコリアンバーベキューの店は星の数ほどある。
これが、僕がアメリカに来た70年代には、ただの一軒もなかったのです。
それ以前に韓国に旅行もして焼肉は大好きだったから、LAでも食べたくて食べたくて。
アメリカにはテーブルで火を使うという食習慣がなかったから、「なぜテーブルで料理するのだ?」「なぜキッチンで料理してはいけないのか?」というところがわかってもらえず、火災の危険もあるということで、なかなか認可がおりなかったらしい。
そして、各テーブルの上にスプリンクラーをめぐらせることによってやっと許可がおりて、初めてオープンしたのが、その当時ダウンタウンの南にあった日本の映画を上映する小さな映画館、そのすぐ目の前にできた店だ。
よくその映画館で寅さんを見ては、この焼肉を食べにいったものだ。
いまでも寅さんを見ると、焼肉が食べたくなる。
そのころから見れば、いまや夢のようだ。
僕のデータベースに入っているだけで軽く100軒以上ある。
韓国では、もちろんソウルにも無数にあるが、郊外のスーウォン(水原)という街、ここが焼肉のメッカだ。
大きな道路に面して、両側にいくつも焼肉の大型店が並んでいて壮観。脇道に入ればそこにもズラー。よくもこれだけ焼肉を食べに来るひとがいるもんだ。どれもお客で一杯である。
そんなに韓国人が焼肉が好きなワケは、朝鮮戦争の直後に、韓国人にもっと栄養をつけてもらわなくちゃ、ということでアメリカが音頭をとって牛肉を普及させたかららしい。
しかし、焼肉の発祥の地は日本だ、という説もある。それはたぶん韓国人は信じないだろうが、そのくらい焼肉は韓国人の食生活に密着しているが、日本人も好きなことはまちがいない。
だが、日本にある焼肉屋さんと、韓国のホンバの焼肉はちょっとおもむきがちがう。
まず、日本人も知っている「プルコギ」という名称、これは「焼いた肉」という意味だから、本来は焼肉の総称。でも、いま韓国の店に行くと、これは砂糖と醤油、ニンニクなどのタレにつけこんで甘く味つけをして焼いた薄い牛肉のことで、テーブルの上ではなく、キッチンでフライパンで焼いてくるのが正統とされている。
テーブルで焼くことのできる店もあるが、そのばあいもプルコギはすでに味がついているから、焼けたらそのまま食べる。
日本人は鍋料理やスキヤキの習慣から、ついタレとかタマゴとかに浸して食べたくなるが、プルコギのばあいはそれはしない。
「いや、このあいだコリアン・レストランでプルコギを食べたらタレがでてきたよ」という人がいるかもしれないが、それは日本人客と見て、タレをだしてきたのにちがいない。
かなり汁っぽくできていて、鍋の縁に汁がたまる。それをゴハンにかけて食べるとえらくうまいのだ。
大きなテーマで書ききれなかったので、続きは次号に。
LA&OCではココ!
「味」は30点満点、「予算」は2人分です
Soowon Galbi(水原カルビ)
本文に書いた水原の名をとった店。LAコリアタウンにも無数の焼肉屋さんがあるのに、こんなにはやっているのはすごい。肉の質がいい。
味:22 予算:$60
856 S. Vermont Ave., Los Angeles
☎ 213-365-9292 www.soowongalbi.net
Daily 11:00am-10:30pm
Open 7 Days
Pit Go Ul (Light Town House)
第2のコリアタウンともいえるガーデングローブにある人気焼肉店。炭火で焼く肉はやはり香りがいい。ここも肉質がいい。いつも混んでいる。
味:22 予算:$60
8902 Garden Grove Blvd., Garden Grove
☎ 714-638-5757
Daily 11:00am-10:00pm
Open 7 Days
(2010年12月16日掲載)
ホンバの焼肉①
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